- 著者インタビュー
- 算数・数学
算数授業の中で、子どもたちは数理的な事象について取り組んでいます。そのことは、同時的に、算数で学習する数学的な表現、言葉や数、式、図、表、グラフ、そして具体物などの表現を用いた活動でもあります。そのような数理的な事象に関わって、様々な表現を用いて見出したことや考えたことを表現したり読み取ったりすることが算数授業での表現力であり、それを他者との交流活動の場で進めていく力が算数授業でのコミュニケーション能力です。
まずは、算数授業で表現力やコミュニケーション能力を育てることが算数授業が実現を目指す教育的価値の一つであるということです。そして、このことを豊かに実現していくためには、学び合い活動が欠かせません。また、学び合い高め合う学習集団の形成が欠かせません。その意味で、算数授業での表現力やコミュニケーション能力の育成への取り組みは、他者との交流活動を促し、学び合う学級づくりを促すものとなります。
まず、本書を基にして低・中・高学年で「身につけたい表現力」を発達的にとらえ、指導内容に即してそれらを明確にし、授業実践へと進むとよいでしょう。そして、授業の展開場面で表現活動を促し、そのことを確かなものとして進めていくためにも、板書の工夫とノート指導の充実は欠かせません。本書で示した授業例を参考にするとよいでしょう。特に4年の概数指導に関する授業例は全国学力・学習状況調査との関連が強いものです。
新しい評価規準は、思考・判断し表現する力の評価を重視しています。そのことについて1年から6年までで実現していくことの見通しがもてるように、典型となる授業を取り上げました。特に、計算の仕方を考え説明する活動や、判断の理由や根拠となる考えを表現したり、言葉や図、式などの表現を用いて考えたり読み取ったり深めたりする活動など、新しい評価規準が期待する活動の典型を4領域から取り上げて紹介しています。
表現力・コミュニケーション能力を育てるためには、表現することやコミュニケーションすることが楽しいという経験が大切です。算数の授業で、考えや思いを共有し共感することを楽しみたいものです。さらには、いっしょに創っていくことの喜びです。数理的な事象に関わって様々なかたちでの知的なコミュニケーションを大切にし、そのことを子どもたちといっしょに楽しみながら算数授業を展開していくといいですね。