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- 学級経営
子どもたちは、居心地のいい環境で力を伸ばします。気になる子は、その他の子よりも教室の居心地のよさに敏感です。気になる子にとって居心地のいい学級は、他の子にとっても居心地がいいはずです。
本書は気になる子という切り口を通して、一人残らず居心地のいい教室をつくるためにはどのような考えで、どのようにしたらいいかを多様な事例を通して示す、とても実用的な書に仕上がっています。
もし、仮に気になる子どもたちが、暴力的であったり、衝動的であったり、不登校傾向であったりしても、いつもそうしているわけではないし、ありのままの彼らに向き合ってみたら、気になる行動をしている時間はほんのわずかです。その行動が、他の子どもたちと比べて少し印象的だったり、頻度が高かったりするだけです。
つまり適切な行動もしています。しかし、それが注目されていないのです。気になる子どもたちの、気になる行動ばかりに注目するのではなく、それ以外の行動にも関心を向け、そこを強化していきます。
学級の荒れは、不適切な言動への教師の過剰な注目によって進行していきます。適切な行動で、居場所が見出しにくい子どもたちは、不適切な行動をして注意されたりして教師の関心を引くことで、居場所を見出そうとします。そうして教師が、そうした子どもたちに関心を向け続けることで、他の子どもたちの居心地が悪くなってきます。
最初は、不適切な行動をする子どもたちは、割合で言ったら少数です。しかし、不適切な行動に教師が過剰に注目することで、教師が他の子どもたちの信頼を失うことで学級は荒れるのです。
Q3で示したように、子ども同士の信頼関係の崩れの前提として、教師と子どもたちの信頼関係の崩れがあります。信頼されていない教師が、子ども同士の関係をつくろうといくらはたらきかけても、効果は出ません。だから、まず、教師が子どもたちと個人的信頼関係をしっかりと構築することから始めます。
「この子が変わらなきゃ」と思っている教師の指導はうまくいかないと思います。その子が適切な行動をしようとする勇気をもつのは居場所ができたときです。
まずはその子の居場所をつくることです。そのためには、まずその子を本気で信頼し尊敬することです。そして、そのためには、どれだけ教師や他の子どもたちを困らせても、その子の良さを見つけよう、見続けようと決意できるかです。
保護者と連携するには、普段から保護者と連絡し合うことが大事です。
授業参観、懇談会、連絡帳など様々な機会を捉えて一対一の信頼関係を築くようにします。問題が起こったときだけ保護者と連絡をとっていては、いつも話題がその子のネガティブなものになってしまいがちです。
普段からその子の良さを伝え、保護者には自分の息子、娘をあたたかく見ている教師であることを示しておきます。子どもたちの変化に「どうするか」ではなく、何があっても連携できる関係を構築しておくことが大事なのです。
気になる子が居場所を見いだせるような学級は、一人残らず居心地のいい学級になるはずです。一人一人と向き合い、一人残らず居心地のいい学級づくりを志向してきた教師たちの考え方と技術がぎっしり詰まった一冊です。
本書が、皆さんの一人残らず伸ばす学級づくりの一助となることを願ってやみません。