著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「読む」の理解が、対話的に学び合う授業を生み出す
福岡県教育センター指導主事立石 泰之
2017/6/27 掲載

立石 泰之たていし やすゆき

1972年、福岡県春日市に生まれる。東京学芸大学卒業。福岡県公立小学校教諭、広島大学附属小学校教諭を経て、現在、福岡県教育センター指導主事。全国大学国語教育学会、日本国語教育学会会員。全国国語授業研究会理事。
著書に、『たしかな教材研究で読み手を育てる「ごんぎつね」の授業』他、同シリーズ(明治図書)。分担執筆では、『読解力を育てる 言語活動の充実をどう図るか』(東洋館出版社)、『教科書教材の言葉を「深読みドリル」辞典〜この一語で広がる教材の見方〜』(明治図書)、『「新たな学び」を支える国語の授業 思考力・判断力・表現力の育成を目ざして』(三省堂)、『読解と表現をつなぐ文学・説明文の授業』(学事出版)などがあり、雑誌原稿として『教育科学国語教育』(明治図書)『学校教育』(広島大学附属小学校学校教育研究会)への掲載多数。

―本書では、文学的文章(物語)を教材にした読むことの授業づくりを取り上げています。「文学的文章」を「読む」ことに焦点を当てたのはどうしてでしょうか。

 文学的文章を教材にした授業では、子どもたちから様々な解釈が出されます。それらを授業で取り扱い、それぞれの考えを深まらせていくには、「読む」についての理解が不可欠です。「読む」を理解すると、対話的な学びを生み出す授業へと変えられます。

―本書は、段階に応じて授業づくりを10のステップで紹介しています。各ステップの概要を教えてください。

 ステップ1と2では、目指す授業や教師の授業力のイメージについて述べるとともに、「読む」について理解を深めていきます。
 ステップ3から5では、教材研究について考えます。その中で、発問の組み立てのポイントについても述べています。
 ステップ6から10では、1単位時間における「導入」「展開」「終末」「授業後」の場面で、子どもたちの対話を組織して学びを深まらせるとともに、次の学びへの意欲を高める指導のポイントについて述べています。

―「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けての授業改善が求められていますが、国語科の読むことの授業は、どのように改善していけるでしょうか。本書のねらいとともに教えてください。

 教師が教えたいことを一方的に子どもたちに押し付けるような授業ではなく、子どもたちが読みの課題意識をもって、見方や考え方を活用し、互いに調べたり話し合ったりすることで、自分の考えを確かめ、見直すことを通して、読むことに対する新たな見方や考え方を獲得していくような授業に改善することが考えられます。
 本書は文学的文章(物語)を教材にした読むことの授業づくりについて述べたものですが、子どもたちの対話を誘発して学びを深まらせる点については、他教科に通じる部分も多くあるかと思います。

―ステップ10では、実物資料として「学級通信」が載っています。学級通信によるフィードバックの重要性について簡単に教えてください。

 子どもたちの学びをより深いものにしていくためには、自己の学びを振り返ることのよさを実感させるためのさらなる「振り返り(フィードバック)」が重要です。学級通信によるフィードバックには、学びの共有化、モデル化、意欲化など多くの効用があります。

―最後に、全国の先生方へ一言お願いいたします。

 授業力は、一朝一夕に身に付くものではありません。誰もが失敗を繰り返して成長します。どのような状況でも自覚的に自分を高めようとチャレンジし続けられるかが大切です。その際に、本書が少しでも勇気を与えられる存在になればと願っています。

(構成:木山)
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