- 著者インタビュー
- 教師力・仕事術
一日の中で教師が書いたり、文書を作成したりする時間は多いです。たとえば、出勤して教室に入ると子どもたちが連絡帳を次々と出します。返信が必要なものに、すぐに書き始める教師もいることでしょう。
授業になれば、お話の通り学習内容を板書します。それだけではなく、子どもたちの様子を教師のノートに記録します。ノートに丸をつけるだけではなく、「すばらしい!」とコメントを書く場合もあります。
子どもたちが帰ったあとは、学級通信や提案文書、報告書といった何らかの文書を毎日のように作成します。
時期によっては、帰宅後に転勤挨拶状が届いている場合があります。夏休みには担任している子から、暑中見舞いが送られてくることもあります。当然、返信が必要となります。
このように考えたら、教師には「書く仕事」が欠かせませんね。
実は私自身、字が下手なので、連絡帳に直接文字を書くことが初任の頃は恥ずかしいということがありました。特に字が上手な保護者の方の返信ではそうでした。「検印だけで……」と思いたくなる気持ちもわかります。
でも、連絡帳に保護者が我が子に事務的な連絡を書いたときに、字が上手ではなくても、一言でも返信があるとないのでは、受ける印象が違ってきます。その一言に、子どもへの愛情がある表現が書かれていると、「担任は温かみのある先生だ」と感じることでしょう。これは学級経営上、大きなプラスになります。
パソコンの印刷物を連絡帳に貼ることに抵抗がある先生もいるかもしれません。
しかし、数名の子に同じ文章を数行書くような場合には、パソコンによる印刷物の方が便利なことは間違いありません。担任であれば、連絡帳に書く時間がなかなかとることができない日もありますから。そういうときには「印刷物による連絡で失礼します」と冒頭に書けば、保護者も理解すると思います。
担任の業務の中心は授業と学級経営なのですが、以前に比べ保護者対応の重要さが高まってきました。文章上のマナーで、「若い先生はこんなことも知らないのか」と保護者に思われることは、学級経営上マイナスです。また、担任している子に関係する苦情が連絡帳に書かれる場合があります。その返信の仕方によっては、信頼を失う場合もあります。
このような「文章上のマナー」や「保護者の苦情に対する返信のしかた」というものは、研修カリキュラムにはあまりありません。ベテランの先生でも自ら学ばなければ身につけることができないでしょう。
私自身は大学卒業後に教員採用試験を落ちて、民間会社に1年間勤めていました。そのときに文章や電話の基本的なビジネスマナーを学びました。先輩方から何度も注意されたことも今となっては有難い思い出です。
そのため、初任の頃から、ビジネスルールが書かれている本を教室に置いて、困ったときや疑問に思ったときには参考にしていました。これは学級通信や連絡帳にお願いの文章を書くときなどに役立ちましたね。本書も「読む」だけではなく、教室や職員室に置いて「引いて」くだされば有難いです。
今の先生方にとっては、授業力、学級経営力の他に「仕事力」も重要です。本書はその仕事力の中でも、「書く」という分野に特化したものです。これまでの自分の経験が、「どうやって書いたらいいんだろう」と迷う先生方の役に立てばいいと思い執筆しました。「保護者向けの連絡帳・手紙の書き方」、「学級通信や連絡文の書き方」、「実務文書の書き方」、「一社会人としての文章マナー」等、それぞれ具体例をあげながら示しました。
教師であれば、誰しも毎日何かしらの文章を書き、誰しも「上達したい」と思っているはずです。今の時代、学ぼうと思えばどのような形でも学ぶことができます。ただし、話を聞いたり、文章を読んだりするだけでは、力はつきません。それらを参考にしながら、実際に書く。そして、意図的に振り返って反省を生かしてまた書く。その積み重ねが力をつけることにつながると考えます。本書がその一助になれば幸いです。