- 著者インタビュー
- 学習指導要領・教育課程
私は、社会科を思考教科にするためには「探究としての学習」が不可欠だと考えていますが、それが今回の改訂の趣旨にも即していることを、理論と授業の両面で明らかにしました。第1章で新学習指導要領の基本的特質、第2章で「探究としての社会科」の原理、第3章で「見方・考え方」の捉え方を論じ、第4章〜第6章で地理・歴史・公民の授業づくりの方法を事例とともに示しています。
現実の社会参画で重要なのは、地域社会、日本、人類の直面する課題について関心をもって議論に参加し、自分と異なる意見にも耳を傾け、最後は公正な合意形成を図ることだと思います。それゆえ社会科においても、授業に主体的に参加し、友人や教師と対話的に学びながら、問題解決に取り組む経験がとても大切だと言えるでしょう。
「見方・考え方」を「視点と方法」とする新学習指導要領の捉え方は、理念的にはともかく実践的にはわかりにくい。その点で、見方を事実認識、考え方を関係認識と捉える従前の「地理的な見方・考え方」はわかりやすいだけでなく、授業改善にも資すると考え、それを歴史や現代社会の見方・考え方に応用する方法を示しました。
今回の改訂で重要なのは内容や教材ではなく、生徒の主体的・対話的で深い学びを促す授業のために、いかにして教師がカリキュラム・マネジメントをするかにあると思います。文科省は「内容は減らさない」と言っていますが、そんなことは不可能です。内容の精選を学力低下と批判されない授業づくりが最大のポイントです。
評価は難しく神経を使います。どうせ思考・表現や学習態度の客観的な評価などできないのですから、評価手法の多元化を図るしかありません。評価規準もあまり厳密なものではなく、単元毎のざっくりしたものでよいでしょう。定期考査以外に様々なパフォーマンス課題を課したり、ワークシートを活用したりすることで、生徒の学習を多面的に評価したいものです。
皆さんは、おそらく私と同じく社会科が好きで、この道に進んだのだろうと思います。はっきり言って、社会科の現状は「限界教科」です。ぜひ、皆さんの日々の授業改善によって、社会科の再生を図ってください。資質・能力の明確化や教科固有の学びが求められる今こそ、絶好の(最後の?)チャンスではないでしょうか。