
- 著者インタビュー
- 音楽
中教審の答申を受けて、「第1 目標」と「第2 各学年の目標及び内容」の示し方が大きく変わりました。音楽科における「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力」の関係性を改めて問い直し、整理する必要があります。生徒の視点から授業を再構築することによって、新たな発想に基づく授業が生み出されていくことに期待を寄せています。
本書では、学習指導要領の解説にとどまらず、実践的な観点に基づく著者の考えを示しています。授業において「音や音楽から実感する」ことを重視している点を参考にしていただいた上で、学校や生徒の実態に対応し、先生方各自の個性や考え方を発揮する創意工夫に満ちた授業づくりにご活用いただければ幸いです。なお、必ずしも冒頭から読み進めていただく必要はありません。
その具現化に向けた授業づくりは勿論、常に心がけるべきですが、そのことに過度にとらわれてしまい、学習の本質を見失うことがないよう気をつけたいものです。大切なことは生徒の音楽的な育ち、音楽学力の獲得です。特に音楽科の場合、常に音や音楽に答えがあるわけですから、音楽に耳を傾けて曲想を感受し、表現を創意工夫したり、情景を思い浮かべて音楽を聴き味わうことが、挙げられている学びに近づく確実な一歩だと考えます。
鑑賞では、書籍などからの楽曲の情報ではなく、音と音楽そのものが何より大切です。教師自身がその音楽を十分に聴き、音や音楽から学習内容を見出すことが大切です。創作では、活動が軌道に乗るまでに時間を要するものですが、向上が感じられた際には創作ならではの充実感を味わうことができます。条件の提示を十分に吟味するとともに、助言の技術を磨いていけるよう、積極的に取り組むことが大切です。
音楽は経験による学びです。しかも人の感情に沁み入る音楽が学びの対象です。努力して覚えても忘れることの多い一般の学習に比して、感情に残る音楽学力は人の心に生涯息づく可能性があります。音楽を通じたコミュニケーションを深めつつ感動の共有が可能な音楽科の特性を生かした授業実践を広く発信して、教科としての存在感を明確にしていく大切なときだと考えます。