きょういくじん会議
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ガイドラインの効果はこれから? 学童保育数調査結果
kyoikujin
2008/7/20 掲載
きもちのいい家

 「ただいま!」「おかえりなさい。」
 学童保育の夕方は、こんな挨拶から始まります。留守家庭の子どもたちにとって、学童保育は放課後の家庭に代わる大切な場所。もうすぐ始まる夏休みには一日の大半を過ごす子どもたちもいることでしょう。大型化などの問題解消のため、昨年初のガイドラインが策定されたのは以前の記事でお伝えした通りですが、その実態に変化はあるのでしょうか。

増えてはいるもののまだまだ足りず…

 毎年全国の学童保育について調査を行っている全国学童保育連絡協議会の調査結果によると、2008年5月1日現在の学童保育施設数は1万7495か所、利用児童数は78万6883人とのこと。昨年比で827か所、4万2000人の増加となっています。この10年で、施設数は7800か所増(1.8倍)、利用児童数は45万人増(2.4倍)となりました。
 しかしながら、小学校数に対する設置率はまだ7割強に止まっています。また、ガイドラインに示された適正規模を超えた71人以上の施設は全体の14.1%と昨年の割合から変わっていません。まだまだ施設は足りていないといえます。

利用児童の増加数が昨年より少ない理由

 今後、ガイドラインや2月に政府が発表した「新待機児童ゼロ作戦」の効果が現れることが期待されますが、調査報告にはちょっと気になる指摘も…。
 実は、今年の利用児童の増加数は昨年と比べてが少なくなっているのですが、この理由について全国学童保育連絡協議会は次のように指摘しているのです。

  •  国が「71人以上は2010年度から補助金を打ち切る」という方針を出したことにより、自治体では財政難等を理由に、適正規模に分割・新設しないで入所基準を厳しくするなど、入所を抑制する動きがあること。
  •  学童保育を拡充せず、「全児童対策事業」で留守家庭児童対策を行う市町村があること。
  •  大規模化により、保護者が入所をためらったり、途中で退所するケースも増えていること。

全児童対策事業での置き換えで行き場のなくなる児童も

 指摘にあった「全児童対策事業」で留守家庭児童の対策を行う自治体の例としては、川崎市があります。
 川崎市では、2003年4月より小学校施設を活用した、全児童対策事業「わくわくプラザ」が開始されており、それに伴い、公営の学童保育は廃止されました。(※)
 この「わくわくプラザ」は、市内在住または在学の1年生から6年生までを対象としており、施設も小学校を使用するため、通いやすい、待機児童が出ないという利点はあります。とは言うものの、大規模集団で職員の目が行き届くのか気になるところです。また、目指すものは「安全な遊びの場」であり、学童保育のように安全で安心感のある「生活の場」を目指すものではありません。このような理由からか、全国的に学童保育の必要性が高まっているのにもかかわらず、2005年度に「わくわくプラザ」を定期的に利用した児童は、廃止前の2002年の学童保育利用児童数に比べて半減しているといいます。

 安全な遊びの場を提供する全児童対策事業も必要ですが、留守家庭の子どもたちにとっては、家庭のようにほっとして過ごせる場も必要なはず。運営費など様々な問題はありますが、留守家庭の子どもたちが毎日安心して「ただいま!」と帰れる場所の整備が望まれます。

※政令指定都市の学童保育の平均設置率は80.7%。川崎市は、12.3%と最下位となっている。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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