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中学校「解説」数学編―数学的活動の指導をどうするか
kyoikujin
2008/7/26 掲載

 14日に文科省より公表された「中学校学習指導要領解説」。
 今回は、「数学」(ZIP)の内容について、特に、一層重視されることになった「数学的活動」に焦点を当てて見ていきたい。

目標における「数学的活動」の位置づけの変化

 「中学校学習指導要領 新旧対照表」(PDF)を見ると、「第3節 数学」の「第1 目標」において「数学的活動」の位置づけは、新旧の指導要領で下記のように変化した。

(現行指導要領)
数量、図形などに関する基礎的な概念や原理・法則の理解を深め(中略)数学的活動の楽しさ、数学的な見方や考え方のよさを知り、それらを進んで活用する態度を育てる。
(新指導要領)
数学的活動を通して、数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則にいての理解を深め(中略)数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し、それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。

 まず、後半に出てくる「数学的活動の楽しさ」については、“知る”から“実感する”と情意的な側面が強調され、活用や判断といったキーワードとの関連から文脈が整理されてはいるが、基本的な考え方は、現行指導要領の考え方を踏襲していると見ることができる。
 一方、新指導要領の冒頭で出てくる「数学的活動を通して」という文言は、現行指導要領にはないものであり、さまざまな数学の学習における根幹としての「数学的活動」の位置づけが明確になったと言える。

3つの活動をどう解釈し、指導計画、授業に位置づけていくかがカギ

 新指導要領では、先日の記事でお伝えした小学校算数の「算数的活動」同様、「数学的活動」の活動例が各学年の内容とともに併記された。
 しかし、「算数的活動」の活動例が、ある程度学習内容との関連が明らかな形で示されたのとは対照的に、「数学的活動」は、

  1. 既習の数学を基にして数や図形の性質などを見いだし発展させる活動
  2. 日常生活や社会で数学を利用する活動
  3. 数学的な表現を用いて根拠を明らかにし筋道立てて説明し伝え合う活動

といったように、3パターンの重視される学習活動の類型が示されたに過ぎない。
 「解説」においては、各学年で上掲1〜3の各類型に該当する活動事例が簡単に紹介されているが、先述のような目標における位置づけの変化を考えると、当然これだけやればすむというようなものではないだろう。
 ただし、今回の指導要領の改訂によって中学校数学科の配当時数は大幅に増えたものの、その分学習内容も増えており、指導自体にゆとりができるわけではないため、最終的には、各学校や教師が、「数学的活動」の趣旨を十分に理解、把握した上で、指導計画や授業の中にどのように位置付けていくかがカギになると言えるだろう。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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