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少年法改正で被害者の傍聴可能に―「育成」への影響は?
kyoikujin
2008/12/22 掲載
少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から

 今年6月に参議院本会議で可決された、改正少年法が15日から施行された。この改正では、原則非公開とされていた少年審判を、被害者や遺族が傍聴できるようになる。被害者等にとっては大きな一歩となる制度だが、「少年の健全な育成」を目的とする少年法の性質にそぐわないという意見もある。

 今回の改正のポイントは法務省の発表した資料(PDF)に詳しいが、被害者等の傍聴が可能になったことが最大の改正点となる。これは、殺人事件等の重大事件の被害者や遺族から申し出があり、少年の年齢や心身の状態等を考慮して、少年の健全な育成を妨げないと家庭裁判所が判断した場合、少年審判の傍聴ができるようになる制度である。
 今改正は、平成16年に成立した「犯罪被害者等基本法」を受けたもので、犯罪被害者等の権利利益に対して一層の保護が図られたことになる。これまでは、審判での意見陳述と、審判記録の一部の閲覧・謄写まで認められていたが、審判の全容を知ることはできなかった。被害者側からすれば、自分たちからは見えない密室で、知らないうちに結果が決まっているというもどかしさがあり、当然の改正と感じられるかもしれない。

少年審判の「教育的側面」への影響は?

 ただし、少年法は非行少年の更生を第一義としているため、少年審判は少年の反省を促し「教育」を行う性質をもっている。非行少年は犯罪者ではなく、裁判官や調査官は彼らを更正させようと、厳しさと優しさをもって指導をする。家庭裁判所を見学した際に感じたことだが、裁判官も調査官もどことなく学校関係者に近い雰囲気の方が多かった。教室の半分ほどの審判廷で、裁判官は普段と同様のスーツを着て、少年と同じ高さの椅子に座るなど、できるだけ少年が自分の心情を述べやすいよう、緊張感を与えない配慮もなされる。

 そのため、今回の改正に対し、審判廷に被害者や遺族が入ることで、少年たちが萎縮してしまい、心情が述べにくくなったり、プライバシーにかかわる事項を取り上げづらくなるのではないか、という懸念があがっている。
 また、被害者等が入ることで、裁判官も少年に理解を示しながらの説諭や指導がしづらくなり、教育的側面が薄まってしまうのではないか、という意見もあり、被害者の心情と、少年の更正の両方に配慮をしなければならない家裁の負担は今から心配されているようだ。
 被害者、加害者の両者の心情を考えると、なかなか結論の出せない難しい問題ではあるが、皆さんはどのように考えるだろうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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