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理科の実験で学力向上? 広がる実験塾
kyoikujin
2010/2/26 掲載
理科の実験 安全マニュアル

 理科の実験といえば、学校で先生が白衣を着て、いつもの教室ではなく理科室で行う―。
 そんなイメージを持つ人が多いと思うが、最近は学校より盛んに実験を行う塾がある。主に小中学生を対象としているこれらの塾は、電車の中吊り広告でもみられるぐらい増えてきた。なぜ実験を扱う塾が増えてき、また受け入れられているのだろうか。

あくまでも成績のため

 いくつかの塾は、あくまでも実験を「受験を乗り越えるため」の手段として位置づけているらしい。
 たとえば中学受験を専門としたアルファ理科実験教室のHPには、次のようなことが書かれてある。

せっかくの学習機会ですから、座学だけで終わらせるのではなく自分の目で見て、手で触れ、考えながら学んでもらいたい。
さらには、実験を通じて学んだ経験を、得点に結びつけてもらいたい。

実験内容を得点力につなげるため、私たちが行う実験は、中学受験での出題頻度が高いものを選び、受験用テキストの内容に忠実に沿った形で進めていきます。

学習内容の論理展開はもちろのこと、設問ポイントや使用する実験器具一つ一つに至るまで、
「中学受験での得点につなげるには何が最善か」
という点を最優先に考え、こだわって作り上げています。

 たしかに中学・高校受験の理科では実験の内容を問う問題もあり、それらは暗記だけで終わらせてしまうには難しい。だからこそ実験をして実際にやったことを覚えさせる。なるほどとも思うが、「所詮やはり受験のためか」と思ってしまう。
 しかし、実験を行う塾が目指しているのはそれだけではないらしい。

考える力を養う

「実験をすることによって仮説を立てての操作や結果の検証などができるようになり、それが論理的思考につながる」
「『すごい!』『なぜ!?』という気持ちを育てて理科好きなこどもをつくる」
 こういった目標(効果?)を謳っている塾もある。
 たしかに実験はいつでも成功するとは限らない。失敗したときに、なぜ失敗したのかを考えたり、自分がたてた仮説を検証するためにはどのような手順を踏めばよいかを考えることは、考える力を養うことにもなるだろう。

実験を行う難しさ

 これらの発言には一理あるが、一方で理科の実験ならではの難しい問題もある。例えば実験に使う薬品の扱いなどについてだ。
 昨年の10月2日の産経新聞によると、実験で使った塩酸などの薬品をゴミ集積所に捨てた塾講師がいたらしい。実験に使う道具の中には、塩酸など扱いが難しい薬品もあり、保存や使った後の処理には注意が必要だ。
 もちろん「塾講師だから」というわけではなく、学校の教員だとしてもしっかりした知識がなければ起しかねない事件ではある。
 しかし今後実験を行う塾がさらに増えた場合、アルバイトの大学生などが実験を行う可能性はでてこないだろうか。(今現在みたところでは、塾で実験を行う講師は元教員や教員免許取得者がほとんどらしい。)
 その場合行われる実験は本当に安全で、教室やこどもの安全は保障されるのだろうか。

学校での実験は?

 2月5日の産経新聞には、小学校教員の理科嫌いが問題としてあげられていた。児童に教えるべき立場の教師が、理科に引け目を感じてしまっていると、児童たちにはなかなか理科の楽しさが伝わらないかもしれない。
 このような背景と実験を扱う塾が増えていることの間には、何か関係があるのかもしれない。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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