- きょういくじん会議

5月12日の読売新聞の記事によると、今、学校給食の奇妙な献立を紹介した本『変な給食』が反響を呼んでいるといいます。全国の小中学校で実際に給食として出された献立を再現した本なのですが、ドーナツとラーメンのように単純に食べあわせが悪そうな「超ミスマッチ給食」、焼き鳥と焼きそばといった「居酒屋風給食」など、子どもたちの栄養は大丈夫? と心配になってしまうものばかり。皆さんのお子さんの給食は、大丈夫ですか?
なぜこのような献立になったのか?
これらの「変な給食」に共通しているのは、油や糖分が多いこと。給食費を上げられず、限られた品数の中でとにかくエネルギーを摂取できるように組み合わせた結果であり、さらに子どもたちの食べ残しを考慮して、子どもに好まれるファーストフードのようなメニューになってしまったという面もあるようです。
栄養は基準量を満たしているのか、という問いにも、ひょっとしたらYESとは言いがたいかもしれません。もともと文科省から提示されるのは、栄養素の所要量の基準のみ。実際の献立はそれぞれの学校や地域の栄養士が考えるのですが、10回分や1か月単位でみて何とかクリアしているという学校も少なくないようで、学校による差、地域による差ができてしまっているのが現状のようです。
安心して食べられる給食を目指して
一方で、以前のきょういくじん会議でもお知らせしたように、最近では郷土食を生かした給食や、地産地消に取り組む学校なども確かに増えているようです。
5月12日の毎日新聞の記事によると、佐賀県では地産地消に県をあげて取り組んでおり、行政が中心となってシステム構築を進めた結果、学校給食における地産地消率が77.7%にもなったとのこと。学校や給食センターにとっては輸送にかかるコストの削減やパックなどのゴミの削減にもつながり、地元の農家にとっても包装の手間が省けて規格外の野菜も利用してもらえ、さらに子どもたちにも安全でおいしい給食を提供できる…といいことづくめの地産地消給食。今後は、需要と供給のバランスが取りにくい大都市圏での対応のしかたを模索することが課題だと言えそうですね。
自分で「食」が選べる大人に
「変な給食」の問題点は、栄養面はもちろんですが、味覚の形成にも関わってくるというところにもあるようです。小学校の6年間、油と糖分過多の給食に慣れた子どもが大人になったとき、自分の健康状態を考えた食生活を送ることができるようになるでしょうか? 近年、国が推進している食育の意義の一つでもありますが、給食も「正しく食を選択する力」を身につけるための教育の一環と言えるのではないでしょうか。直接学校給食に携わる人だけではなく、大人一人ひとりがしっかりと給食の意義を見直し、考えていかなければならない問題なのかもしれませんね。
- 今なぜ食育?(内閣府 共生社会政策統括官)
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/about/why/index.html