- 「特別の教科 道徳」の授業づくり
- 道徳
B先生
学習指導要領解説も出ましたね。いよいよ「特別の教科」として動き出し始めた気がします。教科になるということは、教科書ができるということですよね。次の3点について教えてください。
@これまでの資料は使えなくなるのでしょうか。
A資料を選ぶ時は、どのような観点から選べばよいでしょうか。
B教科書はどのように使えばよいのでしょうか。
加藤先生からのアドバイス
確かに教科書を使うようになりますね。
ですが、教科書教材のみを使わなければならないということではありません。さらに言えば「教科書に書いてあることを読んで学ぶ」という学習から「教科書に書いてあることをきっかけにしてより深く考える」という学習へと言った方が適切でしょう。
解説
解説には、次のように書かれています。
道徳科においても,主たる教材として教科用図書を使用しなければならないことは言うまでもないが、道徳教育の特性に鑑みれば、各地域に根ざした地域教材など、多様な教材を併せて活用することが重要となる。(中略)これらのほかにも、例えば、古典、随想、民話、詩歌などの読み物、映像ソフト、映像メディアなどの情報通信ネットワークを利用した教材、実話、写真、劇、漫画、紙芝居などの多彩な形式の教材など、多様なものが考えられる。
@これまでの資料も使える
「資料」という言葉はなくなりました。教科化に伴い、資料ではなく「教材」になったのです。けれど、だからといって今まで使ってきた資料が使えなくなったわけではありません。他教科を考えてみれば分かりやすいでしょう。例えば国語の教科書に載っている教材を使って授業をしますが、別の教科書には違う教材が載っています。どれを使っても構わないわけです。また、補助資料として教科書に載っていないものを使う場合もあります。
道徳も同様に、これまで副読本や補助資料集として使われていたものを使って構いません。ただ、平成30年度完全実施までに、それらの資料を集めたものが検定を通って教科書となってくるわけですから、それらのうちのどれをメインにして道徳科の授業カリキュラムを組んでいくかという検討はしなければならないでしょう。
A深く考える工夫がされているかで選ぶ
資料を選ぶというのは、教科書を選ぶという意味と、本時で使用する教材を選ぶという意味があります。教科書選定に関しましては、私がこの場でとやかく言う性質のものではありませんが、「深く考えるきっかけとなる工夫がきちんとなされているか」ということは大切なポイントだと思います。教科書(児童書)と共に指導書にもそのような展開例がきちんとかかれているかどうかも要チェックですね。
B子どもと共に本質を明らかにする使い方を
何よりも大切なのは、それらの教科書をどのように使うかです。従来通りの使い方では心もとないです。「分かりきったことを言わせて終わらない」という趣旨のことを中教審も答申の中で述べていますが、その通りです。
教材のもつ道徳的なよさをきちんと見極め、子どもたちと共に本質を明らかにしていくことが肝要です。例えばこのような変容を子どもたちに引き起こすことです。
困っている人に親切にしなければいけないことは、分かっていました。はじめは、この話の中のAさんも、困っているおばあさんに対してすべきことをしただけだと思っていました。けれど、みんなで話し合っていくうちに、このAさんはおばあさんの立場になって、しなくてもよいことまで進んでしている、親切で温かい人だということが分かりました。私もそういう人になりたいです。
分かっているつもりだった道徳的価値のよさに、話し合いを通して改めて気づき、「分かった!」という本当の意味での理解につながる。すると、「素敵だなあ」と心が動き、自ずと「こういう人になりたい、こういうことをしてみたい」と実践に向けて自らの生き方を主体的に考え始める。これぞ、まさにアクティブラーニングですね!
「教科書に書いてあることを読んで学ぶ」という学習から
「教科書に書いてあることをきっかけにしてより深く考える」という学習へ