- 「特別の教科 道徳」の授業づくり
- 道徳
B先生
道徳の教科化まであと2年。私は昨年度1年生、今年度は2年生と、低学年を担任しているのですが、低学年でも道徳科として授業はできるものでしょうか。また、どこに留意すればよいのでしょうか。
加藤先生からのアドバイス
もちろん、低学年でも道徳科の授業はできますし、しなければなりません。
でも、たしかに1時間座らせているだけでも大変な「年頃」ですから、道徳の授業は図工や体育に比べて分が悪いようです。だからといって、安易にゲームやエクササイズ、テレビに頼ることなく、きちんと授業を学習として成り立たせたいものです。そのためには、まずは発達段階に配慮する必要があります。
低学年の発達段階的な特徴には次のようなものがあります。
・何でも調子に乗ってやりたがる
・全てが新鮮で興味津々
・「自分が!自分が!」自己中心的
・見た目に左右される
・そのときの気分に大きく影響される
それらを「逆手」に取って、自分たちのペースで調子よくやっているつもりにさせておいて、気づいたらねらいに迫った話し合いや気づきができていたというようにもって行くことができればベストですね。
解説
道徳科としての低学年の授業ポイント
@「わかった!」「気づいた!」「見つけた!」体験を通してよい意味で調子に乗らせ、ねらいに迫る
例えば、導入で「友だちのよさ」について考えさせます。子どもたちは、
・一緒に楽しく遊べる
・やさしくしてくれる
・笑顔になれる
などと、いろいろなことを言うでしょう。その一つ一つに、「へえ〜、なるほど、たしかにそうだ」と相づちを打ちながら板書していきます。
次に、「では、教科書を読んで、話の中から友だちのよさを見つけましょう」と投げかけて、教材を読みます。子どもたちは自分たちの予想が合っていたか、またはそれ以外のものが見つかるか、という観点をもちながら、前向きな気持ちで教材を読みます。
読み終わると、早い子はすぐに「見つけた!」と、手を挙げます。それを聞きながら、「よく見つけたねえ」「これはどういう意味かな」「わあ、はじめは3つしか見つからなかったのに、倍になっちゃったね。友だちと考えるとすごく広がるね」などと返しながらまとめていきます。
A見えるものから見えないものを見せる(教科書に書いていないものを見つけさせる)
「あれもそうだ」「これもある」と調子よく言い合っているうちに、「きっとこのときはこんなこともあったと思う」「たぶん、このあとこの人はこんなことをしたと思う」というように、教材に書かれていない世界のことを想像し、言及するようになってきます。
そうなったらしめたもの。「よく気づいたねえ! それは先生も気づかなかったよ」とほめちぎってやります。
Bよい世界を見せて終わる(理想を語らせる)
最終的に子どもたちが見つけたものを黒板に書いていき、それを見て意味づけをしてやります。
・まずは数をほめます。「最初はこれだけしか見つけられなかったけれど、こんなに増えたね」
・次に変容をほめます。「最初と比べて中身が変わったね」
・最後に質的な変容をほめます。「最初はうまく説明できなかったけれど、最後はちゃんと自分の言葉で言えたね」
最後にだめ押しで、「そういうすごいことを見つけられたみなさんなら、きっとその力を使って、もっとよい友だち(クラス、世界)をつくることができると思いますよ」と、これからの自分たちの生活を前向き、肯定的に捉えさせて終わります。子どもたちは、自ずと、よりよく生きようという意欲・視点をもちます。
1年生のYさんが道徳ノートに書いた感想です。
きょう、5ページも書いてしまいました。たのしかったです。
どうとくをしたなかで、いちばんいっぱいのーとをいっぱいいっぱいつかいました。
すっごくたのしかったです。
これからは、これよりもたのしくやりたいです。
学んだことに対する充実感・満足感・意欲的な高揚が感じられます。
- よい意味での調子に乗らせる
- 「わかった!」「気づいた!」「見つけた!」体験を通してねらいに迫る
- 「自分が!と思う他者」意識
- 見えるものから見えないものを見せる
- よい世界を見せて終わる