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文部科学省は、3月31日、「平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方に関する検討のまとめ」を公表した。
移り変わる全国学力調査
学力低下の批判が高まる中、平成19年度に復活した全国学力調査。基本的に日本全国のすべての小中学校が参加する悉皆調査としてスタートしたが、数年でその形を少しずつ変えてきた。平成22年度から抽出調査に変更になったのが、特に大きな変更と言えるだろう。
また、当初4月19日に実施が予定されていた平成23年度の調査は、東日本大震災の影響で延期となっており、実施されるとしても9月以降になる見通しだ。
そのような中、3月31日に文部科学省は「平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方に関する検討のまとめ」を公表し、今後の学力調査の方針を打ち出した。
24年度の目玉は理科の追加?
平成23年度以降の大きな目玉の一つが、学力調査への理科の追加だ。今まで、学力調査は国語・算数の2教科で実施されてきたが、社会・理科・英語の各教科の追加が検討されてきた。その結果、平成24年度から理科の追加が具体的に検討されることとなったようだ。
今回の「検討のまとめ」では、理科の追加を具体的な検討事項とする背景について、次のように述べている。
- 「知識基盤社会」において、次代を担う科学技術人材の育成がますます重要な課題となっており、新学習指導要領においては、国際的な通用性、内容の系統性の観点から理数教育の授業時数及び教育内容の充実が図られたところであること
- さらに、「理科」については新学習指導要領において、科学的な見方や考え方の育成、科学的な思考力、表現力の育成、科学を学ぶ意義や有用性を実感させ科学への関心を高めることなどの観点から充実が図られており、その方向に沿った学習指導の充実が求められていること
- 児童・生徒の「理科離れ現象」が指摘されていることを踏まえ、学力や関心・意欲・態度など学習状況を把握・分析し、実態の把握や課題の改善に向けた取組につなげていくことが必要であること
- 政府の新成長戦略において「国際的な学習到達度調査において日本がトップレベルの順位となることを目指す」とされ、具体的な目標も示されていることから、その実現のため、TIMSSの「理科」、PISAの「科学的リテラシー」と関係が深い「理科」を対象教科とすることは有意義であることなどが挙げられる。
今年4月から小学校で全面実施された新学習指導要領。多くの教科で授業時数増・内容増となった。理科においても、小学校では「風やゴムのはたらき」が追加されるなど、内容の充実が図られている。今回の学力調査への追加もこの流れの中にあり、学力調査が一つのきっかけとなり、楽しく知的な理科授業が増え、学力が高まることはもちろん、理科好きの子どもが増えることが望まれる。
理科の追加にかかわる課題
学力調査への理科の追加には課題もある。例えば、理科は教科の特性上、観察・実験が大変重要になる。しかし、調査に当たって観察・実験を実際に行うことは難しく、行うとすれば、異なる方式で調査を行うことも求められる。また普段の授業の中で、観察・実験を一層充実させる必要もあるだろう。
観察・実験の充実に関しては、4月に文部科学省より公表された「小学校理科の観察、実験の手引き詳細」も参考にしたい。
3章構成のこの手引きの2章では、新内容はもちろん、各単元における観察、実験の手順や器具の扱い方が詳しく示されている。新卒の教師や理科に苦手意識のある教師には、うれしい資料と言えるだろう。
「検討のまとめ」では、学力調査に理科が追加されたとしても、実施頻度を3年に一度程度にすることなどが示されており、現場の負担なども考慮しながら進められることになりそうだ。新たな学力調査の動向に注目したい。