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「土曜学習」の充実に向けて―現状と課題
教育zine編集部齋藤
2014/3/31 掲載

 文部科学省(以下、文科省)は、今月19日に、中央教育審議会生涯学習分科会にて、「土曜日の豊かな教育環境の実現に向けて」(PDF)を取りまとめ、それを中間報告しました。
 この中間報告は、昨年11月から、中央教育審議会生涯学習分科会の下に「今後の放課後等の教育支援の在り方に関するワーキンググループ」を設置し、7回にわたって、審議を行ってきた内容を取りまとめたものになっています。

「土曜学習」とは?

 「土曜学習」とは、教育委員会など学校以外のものが主体となり、希望者に対して、学習等の機会を行うもの、と文科省の中間とりまとめでは定義されています。
 「土曜学習」を検討する動きが生まれてきた背景としては、少子高齢化やグローバル化が進む社会の動向や、核家族化、ひとり親世帯、共働き世帯の増加、地域のつながりの希薄化など、子どもたちの教育環境をめぐる現状を受けて、その多様で変化の激しい社会を生き抜くための力を育てる、ということが挙げられます。
 また、学校が週5日制になって10年以上たちますが、休日を活用して、子どもたちに社会体験や自然体験等の活動をさせ、その中で「生きる力」を育むことが当初の狙いでした。しかし、休日に様々な経験を積み、自らを高めている子どもたちがいる一方で、休日を有意義に過ごせていない子も多くいるという指摘もあり、文科省では昨年3月から「土曜授業に関する検討チーム」を設置し、見直しを進めています。

土曜日などの教育で期待されていること

 では、土曜学習などではどのようなことが期待されているのでしょうか。
 キーワードとしては、「土曜日ならでは」のプログラムと、子どもたちが「生きる力」を育むという2点があります。
 1点目の「土曜日ならでは」のプログラムというのは、土曜日であれば平日は参加が難しい現役社会人を含め、地域人材や保護者、企業、NPO、大学生、民間教育事業者等、多様な人材の参加が可能ですから、このような人材を活用した活動が望ましいと考えられます。「土曜学習」においては地域の多様な人材などが参画することが重要であると考えられます。
 中間報告では、目指すプログラムとして、

1.実社会につながるプログラム
2.企業のリソームをいかしたプログラム
3.学習意欲・習慣形成につながるプログラム
4.「地域ならでは」のプログラム

の4点が挙げられています。
 2点目の「生きる力」を育むということは、現行の学習指導要領にも理念として記載されており、そこでは確かな学力、豊かな心、健やかな体の知・徳・体をバランスよく育てることが重要であると述べられています。「土曜学習」において望まれているのは、普段の学校教育とは異なった活動を通して、知・徳・体をバランスよく育てられる活動だと思われます。
 これら2つのポイントをおさえた活動としては、例えば、企業がCSR活動の一環として行っている環境教育やキャリア教育などの出張授業や、地域の外国人や在外経験者からの協力を得て行う国際理解のプログラム等が挙げられています。このように、中間報告でも、学校教育との連動を意識しながらも、実社会とのつながりを体験・探究的に学習できるよう、創意工夫に富んだ教育活動の実現が必要と言われています。

現状と実際の事例―名古屋市

 「土曜学習」に取り組んでいる学校や自治体の多くでは、学力の定着として学校の授業と連動した活動を行っている場合が多く、大学生や地域のボランティアが学習指導を行う取り組みが広がっているようです。このような活動は、教員以外の人材は関わっているものの、授業との結びつきが強く、狙いであるバランスの良い「生きる力」を育むことにつながっているといえるかは疑問です。
 そんな中で、昨年末、名古屋市では、体験を重視した土曜日の学習プログラムを市内小学校3校で実施すると決めました。それは伝統芸能鑑賞や工芸体験、科学教室などを年10回程度行うもので、地域住民や民間企業から講師を招き、プログラムの補助・支援として大学生も参加する取り組みになるようです。
 こちらの取り組みは「土曜日ならでは」のプログラムであるといえ、また授業とは異なった体験型の学習を通して、子どもたちの主体性や豊かな心を育む機会になるかと考えられます。
 この取り組みが成功すれば、「土曜学習」のモデルケースとなりうるかもしれません。

今後の発展にあたって

 「土曜学習」については、各学校や自治体で推進されている動きもみられるものの、文科省の目指す「生きる力」を育む取り組みとなっていない点も見受けられることが課題であるといえます。授業で学ぶ教育ももちろん重要ではありますが、授業以外で得た体験から学ぶことも大いにあると考えられます。
 「土曜学習」が、未来を担う子どもたちにとって有意義な体験を受けるものへと発展していくには、大人が子どもたちの「生きる力」を育むためには、という視点を持って積極的に参加し、そのような場を作っていく必要があるのではないでしょうか。

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