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今月4日、「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議 最終まとめ」(PDF)が公表されました。
ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術のことで、学校現場においては電子黒板や実物投影機、教育用コンピューターなどの機器や、無線LANなどの情報通信ネットワークがそれにあたります。
新学習指導要領では、小学校・中学校ともに情報活用能力について、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」とあわせ、情報通信機器の扱い方についても指導するよう、明記されました。このことから、これからさらにICT機器が各学校で整備されていくようになると思われます。
それを踏まえこの会議では、新学習指導要領が実施される平成32年度に向け、学校でのICT環境のあり方が話し合われました。会議では、実際の学習活動を想定し、どのような機器を学校に配備すればよいかが検討され、これからの学習活動を支えるICT機器について、以下のようなものが挙げられました。
・大型提示装置
・実物投影装置
・学習者用コンピュータ(児童・生徒用)
・指導者用コンピュータ(教員用)
・ネットワーク(無線LAN、有線LAN)
・学習用ツール
既に活用されている学校もあるでしょうが、これらの普及率(※1)は政府が目標として掲げている数値(※2)に達しておらず、これからまだ増えていくでしょう。
- (※1「平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要) 」より
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1376689.htm)
- (※2「第二期教育振興基本計画」(PDF)より
http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/06/14/13...)
なお、ICT機器が整備されても、具体的にどのように活用していくのかは、各教育委員会、学校、教員に任されているようです。
今回の最終まとめと同時に公開された「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議 別紙(次期学習指導要領で求められる資質・能力等とICTの活用について)」(PDF)には、実際の活動例が活動例が紹介されています。
ここには日本の制度や授業に合わせた活動例が紹介されていますが、ICT先進国ではどのようにICT機器を活用してきたのか、三か国の例を紹介したいと思います。
教科「コンピューティング」―イギリス
イギリスはプログラミング教育を1995年にスタートさせていますが、2014年より教科「コンピューティング」と名前を変え、内容も改めました。この授業はプログラミングなどの技術を単に学ぶだけではなく、コンピュータを始めとしたテクノロジーの仕組みも学べる内容となっています。例えば私たちにもなじみの深い「GPS(全地球測位システム)」については小学3年生で学習するのですが、GPSがどんなシステムなのかだけでなく、なぜそれが必要なのか、なぜ自分たちの位置が分かるのかなど、システムについて複合的に学習するそうです。
ICT機器を使いこなすにあたり、その仕組みを理解することは必須ではないかと思います。しかし、イギリスでも専門知識を持った教員が不足しているそうですが、教える教員側が知識をつけるのが大変そうです。
調べながら解くテスト―デンマーク
デンマークでは、2009年から、高校でテスト中のインターネット利用が始まりました。デンマークのテストは日本のテストのように正解があるものではなく、大学のレポートや論文などのように、自分の考えを書くテストが多いそうです。
正解を出すテストでは、テスト中にインターネット利用を許してしまうと、テストの意味がなくなってしまうでしょうが、課題に対して情報を検索し、取捨選択して答えを出す力というのは、これから必要になる力と言えるでしょう。
タブレットPCのみで授業!―韓国
この事例は2014年にNHKの番組でも紹介されましたが、韓国では2010年より教育へのICT機器活用に力を入れ、2200億円もの国家予算を投じました。実験校では生徒一人につき一台タブレット端末を持ち、ほぼ全ての教科でタブレット端末を使った授業を行っていたそうです。
しかし、タブレット端末のみで授業を行ったことによって、問題解決能力が落ちる、読書量が低下するなどの問題点が挙がり、さらに目立って学力があがっていないことから、この政策は2013年に見直しされました。
「ICTは興味関心を引くが、それだけでは学力の定着につながらない」「書くことが少なくなる」「調べる手間が少ないためにすぐに答えがわかってしまう」といったことが現場の教員から声として挙がったようです。
韓国は日本と授業のスタイルも似ています。従来のスタイルをすべて捨て、ICT機器のみを使う危険性を、この事例から感じ取りました。
紹介した三か国以外にも、アメリカ、シンガポール、フィンランドなど、ICTを教育に取り入れている国があるので、興味がありましたらぜひ調べてみてください。
政府の目標値には達していないとはいえ、ICT機器は急速に学校現場で数を増やしてきています。環境や制度が整備されることで、日本の教育の形はどのように変わっていくのでしょうか。今後も引き続き、注視していきたいです。
- 文部科学省「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」(PDF)
http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/programming_syogaikoku_houkokusyo.pdf
- NHK「クローズアップ現代」2014年9月8日放送「学びを変える? 〜デジタル授業革命〜」
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3547/1.html