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1 子どもたちを取り巻く社会
現代社会は、情報がありふれている。主体的な読み手が育たないと、情報を鵜呑みにしてしまい、適切な情報を得ることができない。だからこそ、多様な情報の中から自分で取捨選択し、吟味することが必要になる。
さらに、子どもたちを取り巻く環境も、ビジュアルなメディアがありふれている。そのような中で、読書のあり方も変化しているのではないだろうか。当然、本を手に取って読む読書もあるが、メディアの変遷とともに、電子書籍なども身近なものになっている。
2 読書の価値と子どもたちの読書の実態
読書は、登場人物に感情移入し共感したり、疑問をもち理由を考えたり、他者の視点に立って世界を見たりすることを通して、知識や情報を得ることはもちろん、想像力を養う、思考力を高めるといった人間的な発達を促す大切なものであると考えている。
しかし、実際には、子どもたちの読書内容に偏りがある、教科書教材と子どもたちの読書の質とに差があるという実態がみられる。
そこで、幅広く読書を行うことを目的とした多読を取り入れた授業を行うことで、子どもたちの読書の質を高めたいと考えた。
3 多読を取り入れた授業づくり
多読とは、学級全員が、作者や主題など共通のテーマをもとに、選定された本を一定の期間読み広げる活動のことをいう。
多読は、計画的、系統的、継続的に行っていくことが大切である。例えば、学年が上がるにつれて多読を増やしていったり、一年間の中でみて3月に向かうにつれて多読を増やしていったりすることである。
また、単元や学年ごとに終わらせるのではなく、次の図のように、1年生で「日本の昔話」をテーマした多読を行い、2年生や3年生で「世界の民話」をテーマにした多読を行うなどテーマ性をもたせたり、「レオ=レオニシリーズ」や「斎藤隆介シリーズ」、「宮沢賢治シリーズ」など一人の作者をテーマにしたりするなど、6年間を系統的にみてつながりをもたせることで、より発展的な読書活動を行うことができると考える。
さらに、単元構成の工夫も考えられる。次の図のように、主教材で読む力を身に付け、それを活用しながら多読を行うものや、主教材で読む力を身に付けるとともに、その力をより明確なものとするために並行して多読を行うなど、計画的に行うことができると考える。
4 第3学年「モチモチの木」の実践
ここで、第3学年「モチモチの木」の実践を少し紹介することとする。
今回の実践では、次の図のように、主教材「モチモチの木」で人物設定・出来事・人物の気持ちの変化という読みの観点を習得し、それを活用しながら斎藤隆介の作品を多読することで、同じ作者の作品のテーマ性を理解するとともに、一人の作者の作品を読み広げるという単元構成を設定した。
その際、学年や子どもたちの実態を踏まえて、「モチモチの木」と「火」を比べ読みしてから読み広げることとした。
さらに、次の図のような一覧表を配付して、主教材で身に付けた読みの観点を活用して選書できるようにした。
すると、選書の際、次のような子どもの発言があった。
ぼくは、「八郎」を選んで、あらすじに注目したんだけど、「大男の八郎は、大波に田が流されてしまうと泣いている百姓の子どもを見て、荒れた海に向かっていく」と書いてあって、多分、これは一人で向かっていくんだろうなと思って、表紙が、こんな絵なんだけど、顔が優しそうで、登場人物も題名も「八郎」だから、「火」と同じような感じで死んでしまうんじゃないかな、と思って選びました。
さらに、この学習を通して、子どもたちは、次のような感想をもった。
斎藤隆介さんの本をたくさん読んで、ほとんどの作品が、主人公が人のために役立つことをするお話だと思いました。きっと、斎藤隆介さんは、だれかのために何かしてみたら、かならず悪い結果に終わるわけではないということを言いたかったんだと思います。だから、他の人を大事に思うやさしさをもちたいと思います。
斎藤隆介さんの本を読んだことがなかったので、たくさん読んでおもしろかったです。もっといろいろな作者の本を読んでみたいです。
このように、多読を取り入れた活動を仕組むことは、子どもたちが幅広く読書を楽しむ態度を養うことができるとともに、読みの観点を使って読み広げることで、読書力を身に付けるうえでも効果的なのではないかと考える。
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- 2016/10/11 3:33:16
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- 2016/10/11 3:42:10