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主体的・対話的で深い学びにつながる情報活用能力の育成
学校司書として、子どもたちの学習に関わるなかで見えてきたことがあります。「無関心」では学びは深まらないということです。自分の身の周りでおこっていることや社会の動きに「私には関係ない」と思ってしまえば、何も知る必要はないし、学ぶ必要も感じません。「どうして?」「どうしたらいいのだろう?」と心が揺さぶられること、ぶつかっている問題が学ぶことで解決に向かうという手ごたえを感じることが、学びの必要性を子どもたちに感じさせます。
学校図書館の活動としても、「子どもたちの知的好奇心を揺さぶる活動」、「情報とのつきあい方(メディアリテラシー)を身につける活動」を工夫する必要を感じています。以下に、この2点を意識しておこなった実践を紹介します。
事例1:津山市の「年代別の人口移動」のグラフから、町づくりを考える
中学3年生の公民「地方の政治と自治」の授業に、学校司書として参加しました。中学生が自分の問題として町づくりを考えるには、どんな教材があればよいでしょう。市役所に行ったり、市の公式サイトを見たり、市立図書館の郷土資料を探したりして、『津山市人口等将来推計(2015年から2065年)〜50年先を見据えて〜』(津山市総合企画部政策調整室 平成27年1月発行)と、『未来の花咲く津山学 津山市まちづくり副読本』(津山市 2016年発行)を選びました。
社会科の教諭が『未来の花咲く津山学 津山市まちづくり副読本』を使って、少子高齢化や雇用を生みだす仕事の問題をおさえました。学校司書は、「グラフを読み取る」分野を担当しました。『津山市人口等将来推計(2015年から2065年)〜50年先を見据えて〜』の「年代別の人口移動」のグラフから、津山市の何が見えてくるかを生徒とともに考えました。
グラフは、横軸が5歳から90歳までの5歳刻みの年代別に、縦軸がマイナス700人から0人までの移動人数になっています。グラフの移動人数の軸の最大値が「0」になっていることの意味を考え、すべての年代において人口が減少していることがわかりました。特に減少している年代に注目すると、進学・就職の時期に男女とも多数が津山市から出ていき、結婚による女性の流出も多いことが見えてきました。人生の節目に、津山市に人が入ってくるということが起きていないのです。
授業では現状をおさえながら、将来津山市を元気な町にするにはどんな政策が考えられるかを、グループで話し合いました。夢物語でお茶を濁しては、学びになりません。そこで、「コミュニティーデザイナー」の山崎亮の著書『ふるさとを元気にする仕事』(筑摩書房 2015年発行)を紹介し、ふるさとの魅力を発見することと、「私たちがやりたいこと」「私たちができること」「地域が求めていること」の3つの条件を満たすことをおさえながら考えました。大学に建築科をつくり、これから増えていく空き家をリフォームする人材を育てる。そのおしゃれな空き家を若い夫婦に安い家賃で提供する。豊かな自然の中で子どもが安全に遊べる環境を整える等々。大学や就職など自分たちの近い将来を描いて、熱心に話し合っていたのが印象的でした。
事例2:テレビニュースのつくられ方を、図書館オリエンテーションで考える
自分で考えて、自分で決めて、自分で動くためには、その拠り所となる情報が必要です。私たちは本や新聞やインターネット、テレビから情報を探し、本当のことを知り、自分の世界観をつくっていきます。情報の探し方を身につけることはもちろん大切ですが、メディアが間違うこともあるということを意識したり、メディアの仕組みを知ったりすることが、主体的に生きるためにはとても重要です。
中学2年生の図書館オリエンテーションで、テレビニュースのつくられ方を考えました。ニュースでどの映像を使うか、順番をどう組み立てるか、インタビューのどの声を拾うかで、視聴者が受ける事件の印象はずいぶん変わることを実感しました。ニュースをわかりやすく伝えるために、テレビニュースは情報を簡略化するのです。私たちの世界観はメディアによってつくられるといっても過言でありませんから、メディアのことを知り、主体的に受け取ることができるようになることがどうしても必要です。
【参考文献】
森達也(2006)『世界を信じるためのメソッド ぼくらの時代のメディア・リテラシー』(理論社)
NHK「メディアのめ」制作班、池上彰(2013)『池上彰と学ぶ メディアのめ』(NHK出版)
菅谷明子(2000)『メディア・リテラシー 世界の現場から』(岩波書店)