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いよいよ今年も待ちに待った水泳のシーズンが始まります。しかし子ども達は、全員が水泳シーズンの開幕に対してワクワクしているでしょうか? 泳げる子ども、得意な子ども達はワクワクしていることでしょうが、泳げない子ども達にとってはまた今年も地獄の日々が始まると思っているかもしれません。
私はこれまでの水泳指導の経験から、「歩く」「走る」と「泳ぐ」は同列であると思っています。これは「歩く」ことができ「走る」ことができる子どもならば、必ず「泳ぐ」こともできるという意味です。
今から6年前の夏、プールに入ることが嫌い。顔をつけるだけで精一杯。潜ることすらできないという中学女子と出会いました。彼女は1シーズンで25mを立派に泳ぐことができるようになりました。また5mしか泳げなかった子どもが1000m以上の距離を泳ぐ姿をいくつも見てきました。
どのような子ども達も、指導する側の関わり方次第で100%泳ぐことができます。以下に、私が行ってきた指導法の一端をご紹介します。
1 練習前の意識改革!ガイダンスのポイント
最初にやらねばならないことは、子ども達の意識改革です。水泳で泳げるか泳げないかは「才能」や「能力」の差ではなく、「経験」の差であるという認識を徹底させます。まずはプールでの実際の水泳指導の前に、ガイダンスとして次のような話をします。
「人はなぜ歩けるのでしょうか? 考えてみて下さい」
様々な答えが返ってくるでしょう。それを受けて、次のように説明します。
「正解は人の移動手段が『歩く』だからです。皆さんは今日、学校にどこを通ってどうやって来ましたか?」
子どもは「道路を通って歩いてきました」と答えるでしょう。次に、このように問いかけます。
「もし、道路が用水路で泳がないと学校に行けない。もしくはどこに行くにも泳がないと移動できないとなれば、皆さんは泳げるようになりますか?」
すると、子ども達は「泳げるようになると思います」と元気いっぱいに答えてくれます。そこですかさず、
「人が“泳げる”“泳げない”における差は、能力や才能の差ではなく、経験の差でしかないのです」
ということを強調してください。これから始まる水泳学習で誰でも必ず泳げるようになるのだということを信じることができる雰囲気をつくりましょう。
2 達成感を味わわせる!絶対泳げるクロール指導のポイント
(1)浮いているついでに泳ぐ
よく「リラックスして泳げ」という人がいますが、「リラックス」という言葉をそのまま使ってはいけません。個人によってリラックスの幅が広すぎるため、子ども達にとってはわかりづらいからです。ですから私は、「浮いているついでに泳ぐ」という言葉を使っています。「浮く」ことをイメージしながらゆっくり、ゆっくり泳ぐことを徹底させることで、子ども達は水の中で、体の力を上手く抜くことができるようになります。
(2)毎回息継ぎをする
右でも左でも構いません。息継ぎの方向を決め、毎回息継ぎをさせて下さい。苦しくなって息継ぎをするのではなく、苦しくない状態の時から、少しずつ空気を取り込む習慣を身につけるために「毎回息継ぎ」は必要です。
(3)バタ足ではなくパタ足
人の筋肉の中で最も大きい筋肉が大腿部についています。その筋肉を一生懸命に動かす「バタ足」を一生懸命に行うと、心拍数が上昇し呼吸が荒れます。すると体は酸素を欲するようになり、ただでさえ息継ぎ等がうまくいかない子どもは自己矛盾に陥り、より泳げなくなってしまいます。そこで、「足をバタバタさせてはいけない、かるーくパタパタくらいで丁度いいんだよ。なんならしなくてもいいくらいだよ」と言って、まずは心拍数の上昇を抑えてください。
上記の三点を徹底させるだけで劇的に泳げるようになりますので、ぜひ、実践してみてください。
3 やる気を阻害する?水泳指導のNG事例
(1)つい「頑張れ!」と言ってしまう
クロールで長距離を泳げるように指導する場合、「頑張れ!」と言いすぎてしまうことはNGです。子ども達に励ましの意味で「頑張れ!」と言ってしまう気持ちはよくわかりますが、「頑張って」泳ごうとすると心拍数が上昇し、呼吸が荒れ、泳げなくなってしまいます。特にクロールで長距離を泳げるようにさせるためには、「頑張らせない」ことが大切です。
(2)ビート板でのバタ足練習をしすぎる
クロールの練習過程にビート板でのバタ足を熱心に取り組まれている学校があります。競技として水泳を行っているのならば価値があると思いますが、泳ぎが苦手な子ども達にとっては、マイナスとなることがあります。先に述べたように、バタ足を頑張りすぎることは、心拍数の上昇、呼吸の荒れにつながります。水泳が苦手な子どもは息継ぎが上手にできないことが多いため、ビート板練習を熱心に行うことにより、結果的に息苦しくなり泳げなくなるという状況を引き起こすことがあるので注意しましょう。
(3)まだ泳げない段階で、タイムを計測する
泳ぎが苦手な子ども達に、25m等短距離のタイムを計測させるのは、むしろ意欲減につながりナンセンスだと思います。短距離のタイム計測は、ある程度(300m〜500mくらい)泳げるようになってから行う方が効果的です。