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1 依存型の研修から自立型の研修に
働き方改革が呼びかけられるなか、学校は業務改善を進めていかなくてはなりません。どこの学校も工夫しながら努力はしていると思うのですが、私たちの職種の特異性と業務量が減らないなか、超えていくハードルは高いものがあります。
本校は先生方一人一人のライフスタイルにあった仕事ができるようにするということを経営目標の一つにあげています。これを具現化させていく取組として、新しいスタイルで研修を進めてきました。
具体的には、これまで毎週一回、放課後90分、全職員が参加して行っていた校内研修を止め、そのかわりに研修を自己管理にし、メンタリングで各自都合のよい時間を設定して進めています。このことで、これまで校内研修で使っていた時間は、教材研究、ノート指導、通信の作成、メンタリングの打ち合わせやリフレクション、子どもの指導、年休等、先生方の個人の時間として必要なことに使っています。
2 久原小学校のメンタリングの特徴
メンタリングは、1対1の指導助言活動で、スキル経験が豊富な人間(指導者 メンター)と、スキル経験が少ない人間(被指導者 メンティ)とをペアにして、双方が合意のうえで、スキルの少ない人間の成長と具体的能力の獲得を目指すものです。
本校のメンタリングは、メンターとメンティが、基本、相思相愛であるというのが原則です。メンターに管理職を指名するということはなしにしています。管理職がメンターに加わると、せっかくの人材育成の場が奪われるからです。よって、メンタリングは教諭どうしで行います。メンタリングは、「私の授業を観て指導してもらえませんか」や「先生の授業を観せてもらえませんか」といったメンティの声から研修がスタートします。業務が忙しい時に、メンタリングの授業研究をする先生はいません。どの先生も、月行事や年間の行事計画を見ながら、遅くまで残って授業準備することがないような日程でメンタリングの授業研究を行っています。授業前の協議も授業後の反省会も2人で打ち合わせ、都合のよい時間で、それぞれ20分〜30分くらいで進めています。
本校のメンタリング研修では指導案は書きません。(指導案に代わるものとして、本校で独自作成した課題選択シートを活用しメンタリングシート(A4で1枚)を作成します。)「○日までに指導案を書かなくてはいけない」という負担からは少し解放され、メンタリングの授業研究には、これまでよりも気を楽にしてのぞめています。メンタリングは、本校ではコーチングを基本とし、コミュニケーションのなかでのメンティの気づきを大事に学んでいきます。授業公開する回数、他の先生方の授業参観をする回数は、これまでの研修よりも多くなっています。
メンタリングは、フリーメンタリング、学年内メンタリング、リバースメンタリング(メンターとメンティの経験年数や年齢が逆転している)、グループOJT(例えば若手教師が3、4人のグループを作って一緒に研修する)など様々なスタイルがあり、全員が参加し校内研修として成立するよう工夫しています。
3 メンタリングによる業務改善
このスタイルでの取組は、少しでも超過勤務を減らしていくことを目的に行っていたのですが、研修が進むにつれて、やってみないとわからないメンタリング研修のよさをたくさん感じるようになってきました。
授業研究は、授業に関する自身の課題を改善、向上させるために行うようになり、自分の授業力を高めていく即効性のある内容に変わりました。また研究教科が限定されていないので、全教科、領域で幅広く授業公開が行われるようになり、これまでの校内研修ではあまり観ることがなかった音楽や図画工作、学活などの授業研究も多く公開され、関心のある先生は自由に参観し学べるようになっています。またメンタリング研修を進めての1番の発見は、メンティが学ぶことは勿論ですが、メンターがメンティに指導する場面が与えられることで、メンティの課題を自ら勉強し、授業を観る力、分析する力、創りあげる力を高めていることです。メンティよりもメンターに力がつきます。できる先生ばかりにメンターをお願いしていては学校は成長しません。若い先生の力を信じ、人を指導する場面を早く与えることは大事です。学校のなかに指導力のあるエースをたくさんつくることが学校経営を楽にします。メンタリング研修には、人から教えてもらって育てる、人に指導する場面を与えて育てるという二つの人材育成の姿があります。
業務改善というのは、管理職として、超過勤務の時間を減らしていくということは当然意識しておかなくてはならないと思いますが、研修の在り方の改善ということも大きな業務改善の内容であると感じています。