板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(21)
はさみうち!円の周りの長さはどれくらいでショー!?
5年「正多角形と円」(7/10時間)
新潟県新潟市立上所小学校二瓶 亮
2022/2/10 掲載

本時のねらい

 円に内接する正多角形や円に外接する正方形の周りの長さを用いて円の周りの長さについて考え、円の周りの長さは直径の3倍から4倍の間になることに気付く。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • 前時でも用いた正多角形の図を横に並べて提示し、周りの長さを比較しやすくした。また、円の周りの長さとしてふさわしいのはどのあたりか?という話題の際にも、横並びになっていることが生かされる。

授業の流れ

1前時までの確認と正十二角形の周りの長さを求める(10分)

図2

前時(上の板書写真)では、コロコロレースと題した図形の周りの長さ比べを行っている。角の数が増えると周りの長さも増えるのではないか?という予想をもった子どもたち。12等分された円のため、その最大は正十二角形である。子どもは正十二角形ならどうなるのかが気になり始めていた。正十二角形の周りの長さは30pよりも長くなるかどうかを投げ掛けたところで授業を終えていた。

前回はコロコロレースで正多角形の周りの長さ比べをしていましたね。それぞれ周りの長さはどれくらいだったかな?

正三角形が25.8pで、正方形が…

25〜30pくらいだったね。

直径の3倍くらいだね。

そうでしたね。今日は前回話題になった正十二角形(外接円の直径10p)を描いて、周りの長さを計算で求めてみましょう。

*ここでは作図がメインではないので、前時同様、円周を12等分した直径10pの円を配付し、点と点を結ぶだけにしてある。

1辺の長さがだいたい2.65pかな。だから2.65×12=31.8pくらい。

私は1辺の長さが2.6pだから2.6×12=31.2pになったよ。

どうやら約31.2pという人が多いみたいだね。

やっぱりだんだん周りの長さが長くなっているみたいだね。

もっと角の数が増えたらさらに長くなりそうだよね。

図3

2円の周りの長さについて考える(25分)

では、これ(円)ならどう?

円!?円だとこれまでみたいに辺がないから長さを計算できないよ…。

正十二角形よりも長くなるような気がするけど、どうやって求めればいいんだろう…。

計算じゃない方法なら長さを調べることができるかも…。

*子どもたちがざわざわとし始めた。困った様子が伝わってくる。

少なくともこれよりは大きいとか、これよりは小さいと言える図形はあるかな?

大正方(円に外接する正方形のことを自学級ではそうネームングした)よりは小さくなると思う。

○○さんの言いたいことは分かる?

分かるよ。だって円は正方形の中に入っているでしょ?だから円の方が周りの長さは短くなるよ。

先生、それならたぶんこれより大きいという方も分かるよ!

僕もたぶん分かった!

なるほど。それでは、円を横にスライドさせていくから、円の周りの長さとしてふさわしいと思ったところで手を挙げてね。

図4

*正十二角形のところで挙げたのが2人。この2人は正十二角形とほぼ同じと捉えていたようだ。そして、正十二角形と大正方(円に外接する正方形)の間で手を挙げたのが23人。ほとんどの子が感覚的に大きさを理解していたようである。

どうしてその部分に手を挙げたのか、隣の人とお話ししてみよう。

*感覚的な捉えを言語化させるようとペアトークを行った。

上手く言葉にできないなあ…。

説明できるよ。正十二角形の1辺とその周りの円の部分を比べてみると、こうなりますよね?(下の写真の赤丸部分)だから直線よりも曲線の方が長くなるはずです。

図5

そうか!確かに!!(正十二角形と同じと考えた子も納得した)

そうそう!図にすると分かりやすいね。

ここまで分かったことを一旦整理してみましょう。円の周りの長さは、正十二角形よりも長くて、大正方よりも短い。長さで言うと…

31.2〜31.8pよりも長くて、40pよりも短いってことだね。

何か鬼ごっこの「はさみうち」みたい!

本当だね!正十二角形と大正方で円をはさんでいるみたいだね。

でも、やっぱり本当の長さが知りたいなあ。

そうだよね。間が8〜9pもあってよく分からないし。

3円の周りの長さを調べる方法を考える(10分)

そういえば、さっき「計算じゃない方法なら長さを調べることができるかも」と言っていた人がいましたね。どういうアイデアなのかな?

僕はね…円の周りに絵の具を付けて紙の上を転がしてみたらいいんじゃないかなって思ったんだよね。

えっ!?どういうこと?

(下の写真のように図をかき始め)
円があるでしょ?円の1か所に色を付けて、紙の上を転がしていって、1回目に付いたところから2回目に付いたところまでが周りの長さになると思う(足りない部分は私が加筆しながら説明させた)。

図6

あー!なるほど!確かにそれなら絵の具が付いた部分で長さを測れるのか。

それならこんなこともできるかも!円の周りにひもを巻いて…

分かった!そのひもの長さを測ればいいんだね!!

おもしろいアイデアがたくさん出てきましたね。次回はみんなのアイデアを試してみましょう!

図7

授業のとっておきポイント

 単元名の通り、複数の正多角形と円を関連させながら円の周りの長さに迫っていく展開にした。時計のように円周を12等分した図形を用いることで、登場する正多角形の数を制御できる上、少しずつ円に近付いていくという状況を生み出しやすくなると考えた。
 円の周りの長さとしてふさわしいと思うところで手を挙げさせるというようなことはよく用いる手法である。自分の立場(考え)を表明させる機会は大切にしている。そして、そのときに必ずと言っていいほどセットで行うのが、その考えや理由を言語化させることである。今回は感覚的に理解していることを言語化させることで、自分の中ではっきりしていることやモヤモヤしていることが明確になると考えてペアトークを行った。モヤモヤしている内容やモヤモヤした気持ちを話題にして、全員で解明していく方向付けをしていくといいのだと考えている。

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立上所小学校教諭。教員10年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
コメントの受付は終了しました。