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学級経営におけるアウトプットには何があるでしょうか。私は「学級通信」がそれに当たると思います。学級通信の効果は改めて述べるまでもないですが、自分の知っている子どもの関係づくりのうまい先生たちは、通信をとても大切にしています。
今回は、学級通信を活用した「アウトプット型学級経営」についてご紹介します。
アウトプットをシンプルに考える
アウトプットというと、少し難しいものに感じる方もいるかもしれません。
もう少し噛み砕いて考えます。自分の中にあるものを外に出すこと。シンプルに考えてみると、
- 吸った息を外に出すこと
- 汗をかくこと
- 食べたものを外に出すこと
- 悩んでいることを人に話すこと
などなど、人が生きていく上で当たり前の営みがそこには隠れているのではないでしょうか。こう考えるとアウトプット自体はそんなに難しくないことのように感じませんか?
学級経営におけるアウトプット
皆さんは、「学級通信」をどれくらい出しているでしょうか。中には毎日出すとか、年間300号出すとかいう強者教師もいますが、まずは週に一度を目指して通信を書いてみることをお勧めします。週に一度ゆるく、楽しく通信を出してみましょう。
通信を出すのに一番のネックになるのが、何を書いていいのかわからないというものです。そんな方にお勧めなのが、写真をたくさん使うことです。デジカメを常にポケットの中に入れておき、子どもが素敵な表情をしている時、みんなのために動いている時、ノートに面白い意見を書いている時、図工の作品が素晴らしかった時などなど、事あるごとに写真を撮っておきます。
通信に使えるかどうかわかりませんが、撮っておけば後から色々な場面で使えます。たとえ通信に使えなくても、学期ごとの振り返りムービーに使えることもあります。まずは、毎日10枚程度撮ることを目標に、デジカメを使っていきましょう。
素敵な一枚が撮れたら、そこに意味づけを加えます。その子がどんな思いで活動していたのか、先生はなんでその場面を撮りたくなったのかを加えれば、立派な通信が出来上がります。1週間あれば、3つか4つのスペシャルな場面と遭遇します。それをまとめて、一枚に仕上げるのです。
事実(写真)+意味づけ(子どもと先生の思い)
Iメッセージで思いを伝える
なぜ、こんなことをするのか。それは成長を伝えるためです。家の方は、子どもが学校でどんなことをしているのか知りません。知りたいと思って子どもに尋ねても、細かい所までは子どもも伝えません。特に高学年になると、家の人と話すのが恥ずかしいという子も増えていきます。だからこそ、写真というデータを元に、その子のがんばりや成長している姿を、伝えることが大切です。また同時に、他の子にもこういう姿が素晴らしいというメッセージを伝えることになります。
この時に気を付けたいのが、どんな言葉を添えるのかということです。先生の思いを、Iメッセージで伝えるようにします。
- ○○君が一生懸命掃除をしていて、先生は嬉しかったです。
- ○○さんが、困っている子に優しく接していて、先生も優しい気持ちになりました。
など、それを見た先生がどんな気持ちになったのかを伝えます。そうすることで、自然とみんながいい方向に動き出すクラスができていきます。これがまさに「アウトプット型学級経営」です。この形がはまりだすと、素敵な出来事がどんどん教室で起こるようになります。みんなが問題を起こすよりも、いいことをした方が気持ち良くなることを学ぶのです。「通信に書くことが多すぎる!」という嬉しい悲鳴が出てきます。こんな通信を保護者と一緒に眺めて、個別懇談などで一緒に喜ぶのです。もちろん特定の子ばかり出ないように、名簿に名前のチェックをしておくと良いでしょう。出来上がった通信は配るだけでなく、必ず読み上げるようにします。読み上げる瞬間、取り上げた子がヒーローになるのです。みんなで拍手をしても良いでしょう。たったそれだけのことですが、効果はまるで違います。思いを込めて作った通信だからこそ、みんなの心に響くようにします。
みんなで作る学級通信に挑戦!
一年の後半は、通信を先生一人で作るのではなく、子どもや保護者と一緒に作っていきます。方法はたくさんありますが、4コマ漫画を描いてもらったり、似顔絵コーナーをもうけたり、お勧め本の紹介コーナーや、係活動紹介なども面白いでしょう。デジカメを一日ある子に渡して、写真を撮ってきてもらっても普段とは違う写真が撮れて面白いです。その写真に、撮った子から一言書いてもらうのもいいでしょう。
学級通信係を作って、月に一度発行してもらうのも良いです。書く力もつきますし、何より人を見る力もレベルアップします。係にしなくても、書きたい子が書く。一人でもいいし、グループで書いてもいいし、なんのためにやるのかを担任の先生がしっかりもってさえいれば、どんな形でもいいんです。私の場合は、「みんなの幸せと成長のために書くね!」と伝えます。その目標に向かってさえいればOKとします。
保護者から声を集める時もあります。運動会や学芸会など大きな行事が終わった時には、通信の下を切り取れるようにしておいて、返信をもらうようにします。あらかじめ通信に公表して良いかどうか選択肢を設けておいて、よいものはどんどん通信を通じてみんなに公表します。
自分たちのがんばりをこうやって感じてくれている人がいるという事実は、何よりも子どもたちの励みになります。反対にいくら頑張っていても、好意的にフィードバックのない所では、子どもたちのエネルギーも枯れてしまいがちです。ポジティブなフィードバックで、心のコップを満タンにしておき、次へ向かう力を蓄えておけるといいです。そのために学級通信は、手軽で非常に効果が高い最高のツールです。
今月のポイント
- まずは週に一度から、「学級通信」を始めよう!
- 学級通信のアウトプットは「事実+意味付け」
- ポジティブなフィードバックは次へのエネルギー
〈参考文献〉
金大竜著『学級経営サポートBOOKS 言葉で紡ぐ12か月の学級づくり 「学級通信」にのせたい 子どもの心を揺さぶるメッセージ』明治図書、2020年