- 特集 多様な子どもたちに多様な学びの支援を
- 特集について
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- 提言
- 発達障害の理解と支援のために―新たに出発―
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- 事例 多様な学びを求めて,その支援法を探る
- 1【幼稚園】幼児期にしておくべきこと・できること
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- 2【保育所】ユニバーサルデザインの保育を目指して―生活と遊びと就学をつなげる保育の工夫―
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- 3【小学校・通級指導教室】子どもの学びのペースに応じた「練習の場」を―子どもの適応力と支援者の対応力の向上を目指して―
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- 4【中学校】特別支援教室構想 スタディルームで一人一人の「困り感」に応じた支援を
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- 5【高等学校】チャレンジスクールにおける学習・生活支援―多様な生徒を抱えて―
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- 6【高等特別支援学校】学び・生活の支援〜組織的な取り組み〜
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- 7【大学】授業のタイプ別にみた支援のあり方
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- 8【卒業後】卒業後の子どもたちへの支援の必要性
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- 「LD&ADHD」改題にあたって
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- 子どものページ
- 「えんぶり」
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- 【特別寄稿】高校や大学の受験における合理的配慮の日米格差 (第4回)
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- 親の会ニュース (第41回)
- 日本発達障害ネットワーク(JDDネット)の活動と意義
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- 医療との連携 (第41回)
- オプトメトリストの視点から
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- 〜見る力が弱い子どもへの具体的支援 教育でできるアセスメント〜
- 実践の小箱/臨床学校現場から (第39回)
- 教師が当事者意識を持つために
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- 〜研修会や事例から学ぶ〜
- 情報最前線/行政や海外の動向は (第41回)
- 平成24年度 特別支援教育予算額の概要
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- 選べる! ユニバーサルデザインな授業づくり (第1回)
- 「学び方を学ぶ」授業のススメ
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- 〜学び方は一人ひとり違っている!〜
- LDのための英語教育 (第1回)
- LDはなぜ英語でつまずきやすいか
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- 誤り分析から子どもの算数を支援する! (第1回)
- 算数の誤り分析とは
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- 発達障害の子どもを持って (第5回)
- 各ステージで支えられて
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- 一度は手にしたい本
- 『大震災 自閉っこ家族のサバイバル』(高橋みかわ編著)/『ずっと「普通」になりたかった』(グニラ・ガーランド著)
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- 編集後記
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特集について
明治学院大学教授/松村 茂治
本書の前身「LD&ADHD」が創刊されたのは,2002年の春のことでした。この10年の間に特別支援教育への「転換」を推進するための施策が次々に発表され,この分野に急激な変化がもたらされました。そうした新しい時代の流れをキャッチし,苦戦する子どもたちへの教育支援を目標に,「LD&ADHD」を刊行し続けてきました。
特別支援教育が,通常の学級を主たる実践フィールドにしていることから,「LD&ADHD」では,通常の学級と通級指導教室での教育実践を数多く取り上げ,紹介してきました。そうした企画・編集を繰り返す中で,編集委員が共通に感じてきたことは,この分野に,確実に変化が生じているということでした。LD,ADHD,自閉症スペクトラム障害などの用語は,すっかり「普通名詞」になってきた感があります。また,特別支援教育コーディネーターや校内委員会も当たり前の存在になってきました。「転換」から10年,生まれてきた変化を,この分野だけにとどめるのか,教育全体への変化につなげていけるのか,今,重要な時期にさしかかっているのではないでしょうか。
従来,通常の学級では,一人の教師による子どもたちの集団(あえて言えば,等質の子どもたちの集団)を対象にした働きかけ,つまり,黒板と教科書を用いた一斉指導が常態とされてきました。おそらく,教師の指導力も子どもたちの理解力も,そうした状況(制限)の中で評価されてきたものと思われます。
特別支援教育の推進は,通常の学級での伝統的なやり方に一石を投じることになりました。対象となる子ども一人ひとりがユニークな特徴をもっていて,各自が,それぞれのニーズに応じた対応を求めているわけですが,よく考えてみれば,対象児だけがユニークなのではなく,他の子どもたちもまた,一人ひとりがユニークな存在なのです。特別支援教育の推進は,子どもたちの多様性ということに気づかせた点で重要な意味がありました。
子どもたちのニーズが多様なら,彼らへの対応も多様であるべきですが,これには等質を前提にした従来の教育とは相容れない部分のあることも事実です。少なくとも,一人の教師による一斉指導という形式には限界があります。ユニバーサルデザインの授業,通級指導教室での指導,チームによる支援……さまざまな支援策が生まれてきましたが,まだまだ十分ではありません。子どもたちの多様なニーズに対応する方策をより豊かにし,それを教育全体に広げていくために,一緒に考えていこうではありませんか!
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