- まえがき
- 本書の特徴・使い方
- T 理科における言語活用能力の育成
- 1.世界比較から見た日本の中学生の問題点
- (1)理科に関する意識―理科の勉強に対する意識―
- (2)学校外での時間の過ごし方
- (3)TIMSS-R2007調査結果(中学校および小学校の調査結果)から
- 2.言語力(言語活用能力)を育成する方策
- (1)「観察・実験ワークシート」による「言語力(言語活用能力)を育成する方策」
- (2)「レポート」による「言語力(言語活用能力)を育成する方策」
- (3)ワークシート・レポートの活用の仕方・評価の仕方
- U ワークシート&レポートの書かせ方
- ワークシート&レポート1―光と音 反射・屈折
- ワークシート&レポート2―光と音 音
- ワークシート&レポート3―力と圧力 力
- ワークシート&レポート4―力と圧力 圧力
- ワークシート&レポート5―身のまわりの物質 いろいろな物質
- ワークシート&レポート6―身のまわりの物質 二酸化炭素
- ワークシート&レポート7―身のまわりの物質 水とエタノール
- ワークシート&レポート8―電流 並列回路の電流・電圧
- ワークシート&レポート9―電流 オームの法則
- ワークシート&レポート10―電流と磁界 電流と磁界
- ワークシート&レポート11―電流と磁界 電磁誘導
- ワークシート&レポート12―化学変化と原子・分子 酸化銅
- ワークシート&レポート13―化学変化と原子・分子 銅と酸素
- ワークシート&レポート14―化学変化と原子・分子 水の電気分解
- ワークシート&レポート15―化学変化と原子・分子 質量
- ワークシート&レポート16―運動とエネルギー 運動1
- ワークシート&レポート17―運動とエネルギー 運動2
- ワークシート&レポート18―運動とエネルギー エネルギー
- ワークシート&レポート19―水溶液とイオン 水溶液は電流を流すか
- ワークシート&レポート20―水溶液とイオン 塩化銅水溶液
- ワークシート&レポート21―水溶液とイオン 電池をつくる
- ワークシート&レポート22―水溶液とイオン 中和
- ワークシート&レポート23―科学技術と人間 新素材とは何か
- ワークシート&レポート24―科学技術と人間 エネルギー資源とは何か
- ワークシート&レポート25―植物の観察と種類 身のまわりの植物の観察
- ワークシート&レポート26―植物の観察と種類 花のつくり
- ワークシート&レポート27―植物の観察と種類 葉の表面や断面
- ワークシート&レポート28―火山と地震 地震のゆれの伝わり方1
- ワークシート&レポート29―火山と地震 火成岩
- ワークシート&レポート30―火山と地震 地震のゆれの伝わり方2
- ワークシート&レポート31―地層の重なりと過去の様子 地層
- ワークシート&レポート32―動物の生活と生物の変遷 生物の観察
- ワークシート&レポート33―動物の生活と生物の変遷 生物と細胞
- ワークシート&レポート34―動物の生活と生物の変遷 動物の体のつくりとはたらき1
- ワークシート&レポート35―動物の生活と生物の変遷 動物の体のつくりとはたらき2
- ワークシート&レポート36―動物の生活と生物の変遷 動物の仲間
- ワークシート&リポート37―気象とその変化 湿度の測定
- ワークシート&レポート38―気象とその変化 等圧線と風向1
- ワークシート&レポート39―気象とその変化 等圧線と風向2
- ワークシート&レポート40―生命の連続性 遺伝の規則性
- ワークシート・レポート41―生命の連続性 遺伝子
- ワークシート&レポート42―地球と宇宙 太陽の動き
- ワークシート&レポート43―地球と宇宙 星の動き
- ワークシート&レポート44―地球と宇宙 季節の変化
- ワークシート&リポート45―地球と宇宙 月・金星の動き
- ワークシート&レポート46―自然と人間 自然界のつながり
- ワークシート&レポート47―科学技術と人間 人間と環境
まえがき
日本における初等・中等教育の最大の課題は「創造的な発想」や「独創性」といった能力をどのようにして開発することができるのか,であった。このことは,世界に先駆けた先見性が問われる「ノーベル賞受賞者」の少なさに端的に表れているとされてきた。
これは,従来より指摘されてきた「知識・理解」の獲得に重点化した「学び」からいかに脱却し,「科学的な思考」を啓発するにはどのような学びのプロセスが用意されなければならないか,ということに繋がっている。これは,理科教育に限定したものではないのは勿論であるが,ことさら世界標準となる理科教育においてもこのことは全く同じ事態にあると言える。
「与えられた選択肢の中から正解を見出していく」といった学力ではなく,「自然界に起こる事象や現象の中から,そこに潜む規則性や法則性を見出していく」学力こそが求められているのである。日本では,高校受験や大学受験においてはある意味で獲得した「知識の量」が成功の鍵を握っているのであろうが,こうした「学力」は受験終了とともに時間の関数として忘却していくものである。このような,いわば「消費型の学力」ではなく,将来にわたっての「学び」を継続させていくことができるような「学びの面白さの自覚」を原点にした「学びの方法」の内在化を確立するという「持続可能(サステイナブル)な学力」の育成が問われているとも言えよう。その意味で,PISAやTIMSS調査によって明らかにされた日本の子どもたちの「弱点」となっている「科学的な読解力」をどのようにして高めることができるのかが,これからの理科教育では模索されなくてはならないと言えるだろう。
その意味で,理科の学習プロセスの中で中心となる「観察・実験」を通した「観察・実験ワークーシート」をどのようにして「思考のスムーズな流れ」の中で完成させていくかが極めて有効な方法の1つとなる。また,「調べ学習」や「自由研究」に伴う「レポート」の書かせ方の指導も重要なキーとなってくる。
現在の理科教育の評価の観点の1つである「科学的思考」の育成に帰属する,こうした学力をどのように培っていくかが問われているとも言えよう。
本書は,こうしたことを発想の根拠にして執筆されたものである。現場における実際の指導の場面で使って頂くことを主眼としており,まさに実践的な指導書になっているものと考えている。内容的には学年進行で,第1分野,第2分野別に「ワークシート」例が記載されているので極めて使い勝手が良くなっていると思う。どうか有効に使用して頂ければ幸いである。
/角田 陸男
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- 明治図書