- はじめに
- 第1章 障がいのある子どもの実態把握
- 1 特別支援教育と支援を必要とする子どもの実態把握の必要性
- (1) 特別支援教育の推進と一人ひとりの教育的ニーズの把握
- (2) 子どもの実態把握の意義と留意点
- (3) 子どもの実態把握の基本とその視点
- (4) 実態把握を行う際の情報について
- (5) 実態把握と個人情報保護の観点
- (6) 個別の指導計画作成に活かされる実態把握
- (7) 実態把握を進める上での関係機関との連携
- (8) 実態把握のための情報の内容項目とその方法
- (9) 実態把握のための様式の検討
- 2 子どもの実態把握としての行動観察の
- (1) 行動観察のいくつかの方法
- (2) 行動観察の手法の一事例「行動の機能分析」
- 3 子どもの実態把握としての面接方法
- (1) 面接やアンケートなどにおける実態把握の方法
- (2) 調査的面接法
- (3) 臨床的面接法
- (4) 面接者の基本的態度について
- (5) 面接法が使われる分野
- 4 心理・発達検査の方法
- (1) 心理・発達検査の活用
- (2) 心理・発達検査法の活用と課題について
- (3) 「テストバッテリー」の組み合わせ
- (4) 個人情報の保護と守秘義務
- (5) 全般的な知能の特性を知る主な検査の紹介
- (6) 行動・社会性に関する主な検査の紹介
- (7) 発達に関する主な検査の紹介
- (8) 言語発達に関する検査の紹介
- 第2章 行動観察によるアセスメント
- 1 行動観察法について
- (1) 行動観察の意義と目的
- (2) 行動観察の目的とその観点
- 2 行動観察の方法(視点)と記録方法
- (1) 行動観察の方法
- (2) 記録方法
- 3 巡回相談における行動観察の視点−授業場面・自由場面等−
- (1) 教室の状況について
- (2) 幼児児童生徒の様子について
- (3) 授業場面の観察について
- (4) 掲示物等の観察について
- (5) 授業参観の視点について
- (6) 授業以外の場面について
- 4 検査場面における行動観察の視点
- (1) 言語性課題における行動観察の視点
- (2) 動作性課題における行動観察の視点
- 第3章 情報収集法とその指導事例
- 1 情報収集法の活用について
- 2 情報収集法の具体的手続き
- (1) 主訴の確認
- (2) 支援に必要な基本情報
- (3) 現在の子どもの様子を知る
- (4) 子どもの生育歴に関する情報を知る
- (5) 療育歴・相談歴・通院歴の情報
- 3 情報収集を行う際の留意事項
- 4 情報収集法とカウンセリングの応用
- 5 情報収集法の実際
- (1) 紙上練習法
- (2) 聴取練習法
- (3) 即答練習法
- (4) ロールプレイ
- 6 ICF関連図を使った情報の整理
- 7 情報収集法を活用した事例
- (1) 事例の概要
- (2) 主訴
- (3) 基本情報
- (4) 現在の子どもの様子
- (5) 生育歴
- (6) 相談歴・通院歴
- 第4章 心理検査とアセスメントの指導事例
- 1 WISC−Vとその分析による指導事例
- (1) 対象
- (2) 教育相談の内容
- (3) 教育相談の全体の流れ
- (4) 第1回教育相談
- (5) 第2回教育相談
- (6) 第3回教育相談
- (7) 第4回教育相談(フォローアップ:第3回目の3ヶ月後)
- (8) 考察とまとめ102
- 2 WISC−V及びK−ABC検査結果を参考に個別の指導計画を作成した事例
- 3 行動の背景要因を分析するアセスメント尺度の活用による指導事例
- (1) 機能分析の方法について
- (2) 分析結果の整理と機能(背景要因)に応じた指導・支援の方法について
- (3) 機能分析の結果に基づいた指導・支援の実際(事例)について
- 4 K−ABCとその分析による指導事例
- (1) K−ABCとは
- (2) K−ABCの特徴
- (3) K−ABCを使った解釈
- (4) 指導事例
- 第5章 チェックリストを活用した実態把握と指導の実際
- 1 特別支援教育におけるアセスメント
- (1) 障がい児のための行動チェックリスト
- (2) アセスメントにおける行動チェックリストの活用
- 2 知的障がい児のための行動チェックリストの活用と授業・指導の実際
- (1) 知的障がい教育における授業づくり
- (2) 授業づくりにおける行動チェックリストの活用
- (3) まとめ
- 3 自閉症児のための行動チェックリストの活用と授業・指導の実際
- (1) 知的障がい教育における自立活動
- (2) 授業づくりにおける行動チェックリストの活用
- (3) まとめ
- 4 知的障がい児のための行動チェックリストの活用と進路指導
- (1) 知的障がい教育における進路指導
- (2) 進路指導における行動チェックリストの活用
- (3) まとめ
- おわりに
はじめに
特別支援教育が本格実施され,従来の特別支援学校や特別支援学級に在籍する障がいのある子どもと共に,LD等の発達障がいのある子どもへの支援に関しても,全ての教師はその支援の方策が求められることとなった。障がいのある子ども一人ひとりに対する支援のための方策としては,子どもの実態把握をしっかりと行い,個別の指導計画に役立てる効果的なアセスメントが重要となってくる。
目の前にいる支援を必要とする子どもに対しては,まずその子どもの実態や障がいの状況を知ることであろう。支援を必要とする子どもに対して,効果的で改善が期待できる指導・支援とは何か,適切な教材・教具はどうしたらいいか,様々に思いをめぐらせるところである。実態把握については,どのような方法をとることによって子どもを科学的に知り,効果的な指導・支援が展開できるのかという命題がある。確かに子どもの行動や社会性,学力,障がいの状況などを適切に分析してアセスメントを行うことは誰しも必要としていることである。しかし,その実態把握のアセスメント技法についてはまだまだ教員の中には定着していないのが現状かもしれない。子どもの実態を科学的に分析し,共有し,指導に役立て,個別の指導計画等に結びつけることができれば,教育実践上その教育的効果を生み出すことになることはいうまでもない。
一般的に活用される実態把握の方法としては,情報収集,行動観察,心理検査等があるが,教師にとってともすればアセスメント,イコール心理検査との誤解を生じやすく,学校現場では特定の人の分野のように思いがちである。そこで,今回『基礎からわかる特別支援教育とアセスメント―行動観察,情報収集,心理検査,チェックリストの事例付き解説―』として本書を上梓することとなった。特別支援教育に関わる多くの人たちに対して簡便に分かりやすく役立つ内容を網羅したつもりである。全ての教師が教育におけるアセスメントを行う上で最低限知っておいたらよい内容と事項を紹介し,指導事例を取り入れながら,活用できるように工夫したつもりである。情報収集法については,カウンセリングの技法等を踏まえて,必要な情報をどのように整理して集約するのかなどを留意して解説し,観察法については,応用行動分析の観点を取り入れて,子どもの行動の把握とその分析の仕方について解説した。心理検査法については,WISC−VやK−ABCなどを紹介し,その各種検査法の在り方と事例に基づく分析の仕方や指導方法についても言及し,はじめて関わる人にもわかりやすく解説した。また,チェックリストについても,知的障がいや自閉症の子どもの事例からチェックリストを用いた事例を紹介し,そこから観察される子どもの実態把握の方法を紹介した。
障がいのある子どもを全般的に知るためには,表出する行動面や心理的な内的な側面などを総合的に知ることによって,子どもへの適切なアプローチが生み出されるものと確信する。くりかえすが教師は,子どもと向き合い子どもに寄り添って指導の効果を検証しなくてはならない。そのためには,科学的な視点を磨くことが重要なのだと思う。
2009年8月 編著者
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- 明治図書