- まえがき
- 第1章 「習得・活用・探究」の社会科授業づくりと評価問題
- 1 はじめに
- 2 「習得・活用・探究」の背景
- 3 社会科の授業づくりと「習得・活用・探究」
- (1) 社会科の授業づくり
- @ 社会科の授業づくりの基盤/ A 分かる過程/ B 考える過程
- (2) 「探究」を中核とした社会科の授業づくり
- 4 「習得・活用・探究」の社会科授業づくりの理論(授業構成理論)
- (1) 探究Tの授業構成理論
- (2) 探究Uの授業構成理論
- 5 「習得・活用・探究」の社会科授業構成理論と評価問題
- (1) 探究Tの評価
- (2) 探究Uの評価
- (3) 実践編における「習得・活用・探究」の社会科授業構成理論と評価問題
- 第2章 3・4年「習得・活用・探究」の社会科授業&評価問題プラン
- @ 身近な地域や市について
- 観察・調査を通して習得した,都市の立地についての知識と概念の活用をはかる評価問題<身近な地域や市のようす>
- A ひとびとのしごととわたしたちのくらし(地域の生産や販売)
- 「値札」のなぜ?を中核として,習得したことを関連づける授業と評価問題<グリーンセンター「農産物直売所」のひみつ>
- B 習得した知識や技能を「活用」し,表現力の育成をはかる授業と知識を活用する評価問題<工場のしごと>
- C くらしをまもる(健康な生活や良好な生活環境の維持)
- 資料を活用して知識を習得する授業と評価問題<交通事故の死者数とシートベルト着用率>
- D 探究過程の深まりに沿った習得・活用の授業と評価問題<ゴミを追いかけて,廃物に命を与えよう>
- E 郷土をひらく(生活の変化や先人の働き)
- 身近な地域と他の地域を比べて具体的な事実を活用して先人の共通した願いの理解を目指す<用水を引く(小野田用水・鹿児島市)>
- F 47都道府県の名称と位置
- 基本的な地図の読み取り技能の活用を通して,47都道府県の名称と位置を習得する<私たちの茨城県と日本>
- 第3章 5年「習得・活用・探究」の社会科授業&評価問題プラン
- @ 世界の主な大陸と海洋,主な国の名称と位置,我が国の位置と領土
- 地球儀を活用し「位置」の理解を深める授業と「習得を確かなものにする活用」をはかる評価問題<日本はどこにあるのだろう>
- A わたしたちの国土と環境
- 事実分析したことを確認する評価問題<生水の郷を守るために>
- B 国民生活を支える食料生産
- 未来予測で「判断力」「表現力」を高める授業と言語活動を通して概念の活用をはかる評価問題<食料生産をささえる>
- C 食料生産に従事している人々の工夫や努力
- 「探究」の中で「習得」した説明的知識を「活用」する授業と評価問題<漁師の努力や工夫が国民生活を支えていること>
- D 多様な概念装置を作り上げることを目的とした授業と評価問題<豚肉生産に取り組む人々〜黒豚はなぜ復権したのか〜>
- E 国民生活を支える工業生産
- 時代の流れを俯瞰した「我が国のこれからの工業生産」<「電気自動車」から未来を考える>
- F 情報産業や情報化した社会の様子
- 獲得した説明的知識を基に,日常生活への適用をはかる授業と評価問題<情報と社会〜その情報は正しいのか?〜>
- 第4章 6年「習得・活用・探究」の社会科授業&評価問題プラン
- @ 弥生時代以前〜弥生時代
- 「探究U」で,身近な地域から深まった問いを発見し,探究する<狩りの生活から耕作の生活へ>
- A 奈良・平安時代
- 学習課題と仮説との関係を証明するために推理を働かせる授業と,習得した情報を整理し,因果関係を述べる評価問題<聖武天皇と都の文化>
- B 鎌倉時代
- 類似と対比で思考力を高める授業と「探究T」で習得された知識や概念の活用をはかる評価問題<武士のおこりと鎌倉時代>
- C 室町時代〜安土桃山(戦国)時代
- 前時に習得した知識の活用を行う仮説場面の設定と評価問題<太閤検地と刀狩り>
- D わたしたちの国土と環境
- 資料を活用して知識を習得する授業と評価問題<上方で花開く元禄文化>
- E 黒船来航〜明治維新
- 習得された知識や概念の活用を図り,比較討論を取り入れた探究型の学習活動<明治維新に必要だったのは西郷か大久保か>
- F 条約改正と日清・日露戦争
- 象徴事例をもとに習得したことを確かめ,活用する評価問題<一等国になりたかった日本>
- G 第二次世界大戦
- 体験的活動を通して,習得された知識や概念の活用をはかり,話し合いを取り入れた探究型の学習活動<日本はなぜアジア・太平洋戦争に突入してしまったのか>
- H 日本国憲法と権利・義務
- 習得した知識の活用場面を組み込んだ探究Uの授業モデルと評価問題<くらしの中の権利と義務>
- あとがき
まえがき:社会科の授業構成の中核は「探究」
教育用語に明確な規定がなされないために,教育現場が混迷を深めることがある。本書のテーマである「習得・活用・探究」もその一つである。改正された学校教育法で,「習得」と「活用」については,「基礎的・基本的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力その他の能力をはぐくみ…」という条項で規定された。しかし,「探究」については,具体的には触れられていない。その上,文部科学省が「習得・活用は教科で,探究は総合的な学習の時間で行う」と整理したので,社会科や理科で「探究学習」を行ってきた教育現場の教員が混乱を来している。その後,文部科学省は教科における「探究」の在り方も評価するようになった。しかし,そのメッセージが教室に届くのには,時間がかかりそうである。
本書では,「探究」を「習得・活用」の上位概念ととらえ,“社会科の授業構成の中核は『探究』である”ことを,展開される理論および授業モデルで示す。
理論編では,小・中学校の教育現場で,その有効性が高く評価されている「概念探究・価値分析型社会科」(岩田一彦)の授業構成理論を基盤に,「探究T・探究Uの社会科授業構成理論」を示す。
実践編では,この理論に基づき,新しい学習指導要領に対応する形で授業モデルと評価問題を提案する。「指導と評価の一体化」が叫ばれて久しい。この課題を克服するために授業構成理論と授業実践,評価問題が連続する提案をした。
教育現場の多忙な日常で,原稿を完成いただいた諸氏,出版事情が厳しい中ご尽力いただいた明治図書及川誠氏に感謝申し上げる。
編著者 /米田 豊
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- 明治図書
- 小学校社会科授業の構成を理解する上で必読の書籍かと存じます。ぜひ,復刊をお願い申し上げます。2024/8/16松浪軌道