- 監修の言葉
- 文部科学省教科調査官 /水戸部 修治
- はじめに
- 岡山大学准教授 /浮田 真弓
- T 国語授業で「言葉の力」を育てよう!
- 1 なぜ,今,「領域組み合わせ」か
- 2 言語活動の考え方―共時的アプローチと通時的アプローチ
- 3 授業づくりのポイント
- (1)言語活動の見本を作成してみよう/ (2)説明文…目的に応じた「読むこと」の目標を明示しよう/ (3)物語文…興味を喚起して読書量を増やす工夫をしよう/ (4)「書くこと」の言語活動を振り返ろう/ (5)「話すこと・聞くこと」は日常的に取り組もう/ (6)言語活動は教科をこえて広げよう/ (7)評価の改善をはかろう
- 4 学校全体の取り組み―掲示とすぐれた「同僚性」
- 国語教育と特別活動・総合的な学習の時間―風船交流について― /大橋 均
- U 「領域組み合わせ」の言語活動ベストモデル
- 低学年
- 「話すこと・聞くこと」×「読むこと」
- 1 「おおきなかぶ」のげきをしよう
- 「おはなしをたのしもう」「おおきなかぶ」(1年)
- 2 わくわくボックスをつくって,大すきな本をしょうかいしよう
- 「ずうっと,ずっと,大すきだよ」(1年)
- 3 どうぶつの赤ちゃんをくらべてひみつクイズをつくろう
- 「どうぶつの赤ちゃん」(1年)
- 「書くこと」×「読むこと」
- 4 おはなしプレゼントをつくって,お気に入りの本をしょうかいしよう
- 「ずうっと,ずっと,大すきだよ」 「おすすめの本をしょうかいします」(1年)
- 5 お気に入りのところをかみしばいにしてしょうかいしよう
- 「たぬきの糸車」(1年)
- 6 レオ=レオニのお話を読んで,かんそうを書こう
- 「スイミー」(2年)
- 7 せいつめいのしかたを考えて,作り方をつたえよう
- 「しかけカードの作り方」「おもちゃの作り方」(2年)
- 8 自分のせい長を書いてつたえよう
- 「わたしはおねえさん」(2年)
- 中学年
- 「話すこと・聞くこと」×「読むこと」
- 9 みん話や物語の組み立てを考えよう
- 「三年とうげ」(3年)
- 10 物語を読んで,しょうかいしよう
- 「モチモチの木」(3年)
- 「書くこと」×「読むこと」
- 11 「ふしぎ・なるほど」科学の読み物を読んで感想を書こう
- 「イルカのねむり方」「ありの行列」(3年)
- 12 食べ物(秘)ファイルで食べ物のひみつをせつ明しよう
- 「すがたをかえる大豆」「食べ物のひみつを教えます」(3年)
- 13 工夫して説明書を作ろう
- 「大きな力を出す」「動いて,考えて,また動く」(4年)
- 14 しょうかいカードを作って本をしょうかいしよう
- 「ごんぎつね」(4年)
- 15 リーフレットを作って本をしょうかいしよう
- 「ウナギのなぞを追って」(4年)
- 「話すこと・聞くこと」×「書くこと」×「読むこと」
- 16 本のしょうかいスピーチ大会をして科学読み物をしょうかいしよう
- 「ウナギのなぞを追って」(4年)
- 「話すこと・聞くこと」×「読むこと」×「伝統的な言語文化」
- 17 句会をして秋の深まりの感じ方をくらべよう
- 「秋深し」(4年)
- 高学年
- 「話すこと・聞くこと」×「読むこと」
- 18 作品のおもしろさをしょうかいし合おう
- 「大造じいさんとガン」(5年)
- 19 伝記を読んで考えたことを話し合い,生き方を考えよう
- 「百年後のふるさとを守る」(5年)
- 「書くこと」×「読むこと」
- 20 「伝記の館」を作って,自分の生き方を考えよう
- 「百年後のふるさとを守る」(5年)
- 21 説明の仕方を考えよう
- 「天気を予想する」(5年)
- 22 自分の考えを意見文で表現しよう
- 「感情」「生き物はつながりの中に」(6年)
- 23 場面の様子を実況中継しよう
- 「『鳥獣戯画』を読む」「この絵,わたしはこう見る」(6年)
- 24 登場人物の関係図で主人公の生き方をまとめ,自分の生き方について考えよう
- 「海の命」(6年)
- 「話すこと・聞くこと」×「読むこと」×「伝統的な言語文化」
- 25 昔の人のものの見方や感じ方をしょうかいし合おう
- 「論語」(5年)
- 「書くこと」×「読むこと」×「伝統的な言語文化」
- 26 作品のよさをリーフレットにまとめたり,音読したりしてしょうかいしよう
- 「伝えられてきたもの」「柿山伏」「柿山伏について」(6年)
- おわりに
- 浜松市立積志小学校長 /河合 洋子
監修の言葉
平成23年3月11日に起きた東日本大震災は,我が国の社会に,そして子どもたちの心と体,生活全体にも大きな影響を及ぼしている。こうした災害に象徴されるように,子どもたちがこれから生きていく社会では,今までに経験してこなかった状況や,特定の知識や技能だけでは対応しきれない事態に直面することがこれまで以上に多くなるであろう。私たちは,そうしたときにこそ発揮できる力を,子どもたちにつけていく必要があるのではないだろうか。それは例えば,誰も正解を持ち合わせていない課題に対して,関連付けられるこれまでの経験を振り返り,想像力をはたらかせながら対策を練る力や,他との交流を通して,異なる観点からの発想をつきあわせて新たな考えを生み出したり,合意を形成しながら実行したりしていく力などである。とりわけそうした力の基盤となる言葉の力は,たとえ困難な状況下にあっても,その克服に向けて思考し,判断するために必要であり,ときに自分自身を支え,ときに他者との交流によって一層豊かな学びを可能にする,まさに生きる力そのものでもある。
平成20年3月に告示された小学校学習指導要領・国語の改善の基本方針として,中央教育審議会答申(平成20年1月)には次のように示されている。
「……実生活で生きてはたらき,各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること,我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てることに重点を置いて内容の改善を図る。……」
このことはすなわち,国語科の授業は国語科に閉じるのではなく,子どもたちの日常生活に生きるものとなっているだろうか,各教科等の学習にも機能するものとなっているだろうか,という問いかけでもある。国語科の授業は,子どもの意識とは無関係に,与えられた文章の与えられた場面や段落を読み取れればよい,無目的に作文を長く書ければよいとするのではなく,例えば上述のような状況下においても,自らの課題の解決に向かって歩んでいくために機能する言葉の力をつけるものでなくてはならない。
本書における,「『領域組み合わせ』で言葉の力を育てる」という提案は,浮田真弓氏と浜松市立積志小学校の優れた共同研究の成果であり,また,上述のような言葉の力を育むための小学校国語科の授業改善の重要な手立てを示すものである。国語科の「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域を適切に組み合わせて単元を構成することによって,子ども自身にとっての課題解決の過程を柔軟に構築することが可能となるからである。
「領域組み合わせ」による,いわゆる複合単元を構想することは,単独領域の単元構想よりも技術的には難しくなる。単に複数領域の活動を単元に並べるだけではなく,それぞれの領域のねらい・指導・学習活動・評価が一貫したものとして位置づけられているか,組み合わせることによって,双方の領域の指導事項が一層効果的に指導できるものとなっているかなどに配慮する必要が出てくる。
しかし,そうした手作りの授業構築の過程こそ,目の前の子どもたちにつけたい力を見極めて,それに応じた単元を構想していくための大切な道筋なのである。本書で提案している事例を整理すると,学年の発達の段階に即して,例えば次のようなことが「領域組み合わせ」による典型的な効果としてあげられる。
《低学年》
「読んだ本を紹介する」といった言語活動を行う場合,高学年以降であれば前単元までの「話すこと」の学習を生かして紹介できるため,当該の単元は「読むこと」の学習指導だけに重点化していくことも可能であるが,低学年の子どもたちにとっては,その場で繰り返し「話すこと(紹介すること)」の学習指導を位置づけることが効果的である。こうした子どもの実際の課題意識が高まる機会をとらえて,適切に繰り返しの指導を確保できる。
《中学年》
目的に応じて中心となる語や文をとらえたり,目的や必要に応じて引用したり要約したりすることが必要となる学年である。この場合の「目的や必要」が,領域を組み合わせることによってより子ども自身のものとなる。例えば自分の調べたことを調査報告文に書くといった学習活動が組み合わされているからこそ,自分にとっての目的を明確にして本や文章を読み,必要な情報を適切に引用したり要約したりできるようになる。
《高学年》
子どもの課題意識が一層広がり,読むだけ,書くだけにとどまらないことも多くなる。そうした意識に対応できる課題解決の過程を構築する上で,領域を組み合わせることがより効果的になる。
本書が,こうした効果的な指導の事例を具体的に提示した意義は極めて大きい。改めて,浮田真弓氏と浜松市立積志小学校のたゆまぬご努力に敬意を表するとともに,全国の国語科授業改善を目指す多くの読者の参考となるよう願うものである。
平成24年9月 文部科学省 教科調査官 /水戸部 修治
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- 明治図書
- 今、やってみたい内容ばかりだったので、是非、よく読んで実践してみたいです。2015/5/3040代 おーちゃん