- はじめに
- 本書の特色と使い方
- T 観点別評価――指導と評価の一体化のために
- 1 これからの学習評価の基本的な考え方
- 2 評価活動を進める方策
- 3 学校現場における授業改善の取組について
- U 歴史学習「観点別評価」単元別ワークシート
- 1 世界の古代文明のおこり(古代文明の特色と宗教との関連)
- 2 日本列島における農耕のはじまりと生活の変化
- 3 大和政権の統一と東アジアとのかかわり
- 4 聖徳太子の政治と大化の改新(天皇中心の古代国家の成立)
- 5 奈良時代の農民の生活(律令体制の動揺)
- 6 平安京と摂関政治(系図から見る貴族政治の特色)
- 7 古代の特色(古代の政治と文化はどのように移り変わったか)
- 8 武士の登場(武士が活躍した理由を考えてみよう)
- 9 鎌倉幕府の成立(源頼朝が鎌倉に武家政権を樹立したのはなぜ)
- 10 蒙古襲来と幕府の衰退(元寇失敗の原因を考えよう)
- 11 南北朝の内乱と室町幕府(足利氏が幕府を開けた理由は)
- 12 琉球王国の地理的位置と交易(東アジア世界の交流)
- 13 禅宗のおよぼした影響(室町文化の特色は何だろう)
- 14 産業の発達と一揆
- 15 応仁の乱と戦国大名
- 16 中世の特色(中世の日本を自分の言葉で表そう)
- 17 ヨーロッパ人の来航(キリスト教はなぜ広まったか)
- 18 豊臣秀吉による全国統一(秀吉はどのような政策を行ったか)
- 19 江戸幕府の成立(平和な時代をどう実現したのか考察してみよう)
- 20 鎖国下の対外関係(近世の日本と世界との関係)
- 21 身分制度の確立と農村の様子(武士と百姓について考察してみよう)
- 22 町人文化の形成(近世の文化の特色について考察してみよう)
- 23 社会の変動と幕府の政治改革(幕府の政治改革はなぜ行われたのだろう)
- 24 外国船の出現と天保の改革
- 25 近世の特色(江戸時代の特色を考えよう)
- 26 産業革命(イギリスの工業化はどのような変化をもたらしたか)
- 27 欧米諸国のアジア進出(市場開放を求めた戦争)
- 28 開国とその影響(立場を変えて考えてみよう)
- 29 幕府の滅亡と明治維新(自分で判断して考えてみよう)
- 30 近代文化の幕開け(文明開化のもたらしたもの)
- 31 大日本帝国憲法の制定(明治に生きる人々が目指した国のかたち)
- 32 日清戦争と日露戦争(二つの戦争のもたらしたもの)
- 33 条約改正(列強への仲間入り)
- 34 日本の産業革命と社会の変化(近代産業を発達させるためには何が必要か)
- 35 第一次世界大戦とロシア革命(第一次世界大戦は世界に何をもたらしたのだろう)
- 36 大正デモクラシーと文化の大衆化(民衆の力が社会を動かす)
- 37 世界恐慌とブロック経済(各国の恐慌対策)
- 38 満州事変と日中戦争(満州国の建国)
- 39 第二次世界大戦と日本(戦時下の文化統制)
- 40 近代の特色(国家財政に占める軍事費の割合の推移)
- 41 占領と民主化
- 42 国際社会への復帰
- 43 高度経済成長(国民の生活はどう変化したか)
- 44 冷戦の終結(その後の世界はどう変わったか)
- おわりに
はじめに
適正な学習評価の実施は,必ずや学習指導の改善と子どもの学力の向上とに結び付きます。なぜならば,子どもの学習の状況を捉えようとする評価の営みは,本来それ自体,次の指導と育ちのために行うものにほかならないからです。
必要なのは,以前のような集団に準拠した数量本位の評価ではなく,目標に準拠した観点別の学習評価です。そして今回,その最も有効な手立ての一つとして,ワークシートの工夫と活用が注目されたのです。
学力を知識の数量だけで測れないことは,もはや自明でしょう。歴史学習であれば,個別知識の集積でなく全体理解の深化が重視され,また事象間の関連や歴史の大きな展開を自ら考察し表現する力や,そのために様々な資料を活用する力の育成が求められています。
以前の評価は,定期考査の結果をベースに,集団内の相対的な位置によって“算出”されたものでした。これだと,上記のような意味の学力が,子どもそれぞれに本当に育っているのかどうかを的確に見ることはできません。いわば,学習の実際を見極めないままで進められていた学習評価なのです。目標に準拠した観点別の学習評価が求められる所以が,ここにあります。
一方,思考する力や表現する力を見るのはなかなか難しい,という悩みも耳にします。かつて,それを正確に捉えようとするあまり,評価情報を際限なく収集するような動きもみられました。しかし,もとより子どもたちの学習活動のすべてを評価できるものではありません。求められるのは,どういう学力を育てようとしてその学習指導を行うのか,そしてその育ちをどの場面でどのような手立てで見ようとするのかを,焦点化しつつ明確にし,指導者と子どもが共有することです。学習評価の「客観性」ではなく「妥当性」「信頼性」であり,「効果的・効率的な学習評価」の実現です。
これまでのワークシートは,その紙面の多くを用語の穴埋めが占めていました。いわば,学習内容を効率よく消化して学習指導を進めるための道具でした。しかし,おそらくワークシートの本領は,子どもの思考の過程やその表現の言葉が明確に記述され記録される点にあります。難しそうに思えた思考や表現の力を,それほどの苦労なく評価することができる道具なのです。学習指導のためだけのワークシートから学習評価に生きるワークシートへ,すなわち指導と評価が一体となったワークシートへ,この機にワークシート像の転換が図られてもよいのではないでしょうか。
ワークシートが学習評価の上でもつ効用は,何点かあげられるでしょう。
@ 評価材料の確保
授業中の子どもの発言や行動は,その場限りで消えてしまうものです。ワークシートを活用することで,その内容を指導者の手元に確保することができます。
A 評価時間の確保
評価材料の確保によって,授業外の時間を使って子どもの姿をじっくりつかむことができます。また,授業でワークシートの作業中に,その場で子どもの状況を評価して必要な助言を与えることもできます。
B 評価機会の均等化
授業中に目立つ子どもだけが評価の対象となるのではいけません。同じ規格のワークシートの活用で,評価機会の均等化を図ることができます。
本書には,中学校や高等学校の歴史学習に携わる気鋭の指導者が開発した,新学習指導要領に基づくワークシートとその有効な活用の手引きが,合計44項目収められています。学習評価に苦心しつつご尽力をいただいている皆様におかれて,本書を有意義な指針として大いに役立てていただけることを願ってやみません。
/中尾 敏朗
-
- 明治図書
- 具体例が多くて分かりやすかった。2018/2/2150代・中学校勤務
- 評価規準を明確にして下さり助かりました。2017/5/1930代・中学校教員
- 具体的な内容なのがよかった。2015/8/2620代・高校教員
- 思考判断表現の評価に悩んでいたが、これを参考にワークシートを作成していこうと思った。2015/8/2620代社会科教諭