- まえがき
- 第1章 協同学習で創る授業への挑戦
- 〜壁は常に自分の心!
- 1 社会科は社「解」,そして社「快」科だ!
- 2 内容への挑戦
- 3 方法への挑戦
- 4 協同学習の基本的構成要素
- 第2章 生徒の「モード」を変える授業「導入」の技
- 〜楽しくウォーミングアップを!〜
- 1 個人・小集団対抗クイズ
- (1) 視聴覚教材とクイズをリンク!@
- (2) 視聴覚教材とクイズをリンク!A
- 〜音楽教材で歴史感覚を磨こう!〜
- (3) クイズのネタは歴史小説!
- 2 リズムメモリー
- 〜おぼえる!合わせる!ひとつになる!〜
- 3 「歴史カラオケ」
- 4 社会科マック
- 5 歴史川柳
- 第3章 わかる!できる!笑いがある!授業「展開」の技
- 〜実況中継!日蓮が吼える!鎌倉新仏教がわかる!
- 1 宗教に関する授業開発のねらいと視点
- 2 教材化の視点
- 3 単元(全3時間)のねらい
- 4 授業過程(1時間目)
- 5 授業過程(2時間目)
- 6 歴史検証の陥穽
- 7 授業過程(3時間目)
- 8 実践をふり返って
- 第4章 わくわくドキドキ「研究授業」づくりの舞台裏
- 〜PDCAで進化する!〜
- 1 Plan(授業計画と準備)
- (1) 手を挙げた人も当たってしまった人も「研究授業」はチャンスだ!
- (2) 研究テーマを決めよう!
- (3) 情報を集めよう!
- (4) 学習内容の構成を考えよう!
- (5) 学習指導案をつくろう!
- (6) いよいよ授業!授業準備がすべて!
- 2 Do(授業実践)
- 3 Check(授業のふり返り)
- (1) 研究協議も協同を用いた参加型で!
- (2) 教師もドキドキ「協同」を用いた研究協議の流れ
- (3) 研究協議の議論を通して授業ヒントをもらう!
- 4 Action(授業改善)
- (1) 「血のケガレ」の教材化の視点
- (2) 授業改善案(「鎌倉庶民の悩み事(本時)」)の過程
- 第5章 マンネリ打破!1時間ポッキリのスペシャル授業
- 〜生徒イキイキ!黄金の1時間〜
- 1 邪馬台国の謎
- 2 源義経の謎
- 3 長篠の戦い「織田信長の戦略」
- 4 江戸城無血開城「勝海舟の戦略」
- 5 ヒトラーの野望とアンネの夢
まえがき
「わかる!できる!笑いがある!」授業を目指してきました。「わかる」とおもしろい。そして発表やテストなどの場面で学んだことが実践「できる」とうれしくなります。そしてそこから自然に「笑い(笑顔)」が生まれます。
それでは,そのような授業を創るにはどうすればよいのでしょうか? 会ったこともない歴史上の人物やその行動の意味するものを,興味や関心をもって「学びたい!」と生徒が思える有効な学習として「協同学習」があります。この世の中,他者と協力なしでは生きていくことはできません。集団の一員として「同」じ目標に向かって「協」力していくことが求められています。そのためには,個人の自立を基盤としてメンバー間の違いを認め合いながら相互のコミュニケーションを円滑に図っていくことが必要です。その世の中の動きを学校という社会でトレーニングしていきます。「一人で学ぶ,みんなと学ぶ,その過程を通して人間を学ぶ」のです。協同学習とはつまり,「個人の自立と共生の精神」を学び体得していくことに他なりません。
その一方で,社会科は内容教科と言われます。社会科は,社「解」であり,社「快」でありたい。社会の仕組みがわかり(社会認識),そこで発生する課題の解決に向けて多様な視点から判断し,社会参画していく能力(市民的資質)が求められています。そのための歴史授業の内容はどうあるべきか?その一つの方策として,私は「現代社会との共通性と相違性を探究していく事象」(法制度や宗教政策など)と,生徒の生活経験から価値判断しやすい「身近な事象」(悪口や差別など)の教材化が,重要であると考えています。
本書は上述したことを実践し,具体的な「かたち」として提案したものです。第1章では,多忙化と複雑化する学校現場の様々な「壁」とそれを乗り越えていくエネルギーの大切さに触れています。第2章では,生徒の意欲的な授業態度は,ライブのような「導入」授業で生まれる!ということで,これまで実践してきた小集団活動のツールを紹介しています。第3章では,第2章の導入に続いて,生徒を探究の世界に導く授業「展開」の流れを述べています。なお本章は,2012年『社会科教育』4月号から9月号で提案した連載内容に加筆修正したものです。
第4章では,第3章のような研究授業は,そもそもどのような流れで創られたものなのか? 私もそうですが,しばしば「テーマの絞り方や教材化の視点設定,そして授業構成の方法」などに悩みがちです。特に若い先生方のヒントになればと願って述べています。第5章は授業時間のゆとりがないときなどに,1時間だけの投げ込み教材を使って生徒が楽しく学べるスペシャル授業を紹介しています。以上のように,本書を手にとってくださる方々にとって,少しでも刺激になり,実践のヒントになれば,著者としてこの上ない喜びです。
ところで,私事になりますが,本書執筆中に思いもかけない「大病」に見舞われ,教師生活初の病気休職を余儀なくされました。これまで手術も入院も経験したことのない身にとっては,まさに青天の霹靂でした。「いのち」について考えさせられた治療生活の中で,自分のこれまでの人生や教師生活をふり返り,未来に希望をもって取り組める大いなる「救い」の一つが,本書の執筆でした。その意味で,執筆の機会と的確なご助言を与えてくださった明治図書の樋口雅子氏に深甚の感謝を申し上げます。大病は大変なできごとでしたが,「大変」とは大きく変わるチャンスでもあると,聞いたことがあります。自分が大きく変わるチャンス!とプラス思考で受け止め,これからの「人生」に活かしていきたいと願っています。
最後に,病気療養中のみならず,いつも私の心の支えとなり応援してくれている妻の聰子,娘の瑞希と晴和,そして父母をはじめ多くの方々に心からの感謝の気持ちとともに,本書を捧げます。
2013年10月 /乾 正学
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- 明治図書
- とても良い本です2020/10/2350代・中学校教員