- まえがき
- 第1章 スピーチでつながる! スピーチで学ぶ!
- 〜教室ファシリテーションへのステップ・スピーチ編〜
- T 教室プレゼンテーションの基本的指導過程
- 1 教室で指導されるのはプレゼンテーション能力である
- 2 〈教室プレゼンテーション〉をこそ目指さなければならない
- 3 〈教室プレゼンテーション〉を定義する
- 4 〈教室プレゼンテーション〉の目的を定める
- 5 〈教室プレゼンテーション〉をプランニングする
- U 教室プレゼンテーションと教室ファシリテーション
- 1 ファシリテーションが強力な武器となる
- 2 聴衆を分析しないと始まらない
- 3 聴衆には4つの類型がある
- 4 聴衆分析チェックリストで聴衆の傾向を把握する
- 5 互いの聴衆分析を交流する
- V 教室プレゼンテーションの基本スキル
- 1 プレゼンテーション・スキルを5系列で捉える
- 2 プレゼンテーションには5系列20のスキルがある
- 3 教室プレゼンテーションで対話が成立する
- 第2章 スピーチの基礎と抑揚をつかむ
- 〈1〉聞き手を意識する(スピーチ・プレ活動)
- 〈2〉声量を意識する(スピーチ・プレ活動)
- 〈3〉口形を意識する(スピーチ・プレ活動)
- 〈4〉速度を意識する(スピーチ・プレ活動)
- 〈5〉フレージング
- 〈6〉イントネーション
- 〈7〉プロミネンス
- 〈8〉五七調・七五調
- 【コラム・1】ペアやグループを機能させるコツ〜発表の順番〜
- 第3章 スピーチの構成と叙述を考える
- 〈1〉他己紹介
- 〈2〉もの当てクイズ
- 〈3〉担任紹介
- 〈4〉みんなで反論
- 〈5〉グループスピーチ
- 〈6〉原稿の再構成(薬のセールスマン)
- 〈7〉説得力を高める表現(グレープフルーツを選ぶコツ)
- 〈8〉効果的に伝える工夫(ゆで卵の作り方)
- 【コラム・2】ペアやグループを機能させるコツ〜フォーメーションの変更〜
- 第4章 スピーチの聴衆を分析する
- 〈1〉選挙演説
- 〈2〉ニュースの再構成
- 〈3〉聴衆タイプ分け
- 〈4〉スピーチに一工夫
- 〈5〉ウェビング聴衆分析
- 〈6〉マトリクス聴衆分析〜札幌ドームに行こう!
- 〈7〉TVショッピングDE聴衆分析
- 〈8〉CM聴衆分析
- 【コラム・3】ペアやグループを機能させるコツ〜時間の指示〜
- 第5章 スピーチのユーモアを磨く
- 〈1〉オノマトペスピーチバトル
- 〈2〉怖い話スピーチ
- 〈3〉大げさスピーチ
- 〈4〉「甲子園学校紹介」風スピーチ
- 〈5〉「スウェーデンリレー」風スピーチ
- 〈6〉「あいうえお」スピーチ
- 【コラム・4】ペアやグループを機能させるコツ〜CST〜
- 第6章 スピーチで総合力を高める
- 〈1〉思い出の誕生日スピーチ
- 〈2〉なにがでるかなスピーチ
- 〈3〉都道府県スピーチ
- 〈4〉Aくんを当選させよう
- 〈5〉リレースピーチ
- 〈6〉先生になってみようT
- 〈7〉先生になってみようU
- 〈8〉結婚式友人代表スピーチ
- 〈9〉卒業スピーチ
- 〈10〉選手宣誓
- 〈11〉なりきりスピーチ
- 〈12〉「今まで生きてきて一番痛かったこと」スピーチ
- 〈13〉アイコンタクト・スピーチ
- 〈14〉イエス・ノー・スピーチ
- 〈15〉ほめほめスピーチ
- 〈16〉マイベスト・スピーチ
- 〈17〉喜怒哀楽スピーチ
- 〈18〉学校自慢スピーチ
- 〈19〉名言・格言スピーチ
- 〈20〉怒り爆発スピーチ
- あとがき
まえがき
拙著『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(学事出版)をお読みいただいた方の何人もから同じ質問を受けました。
「教室ファシリテーションの理念はよくわかりました。手法もよくわかりました。でも,いきなり導入してうまくいくのでしょうか……。」
なるほど,その不安はよくわかります。
「本当にうまくいくのか不安で,最初の一歩が踏み出せません。」とか,あるいは「実際にやってみたけれど,なんとなくしっくり来ないんです。他に何かコツがあるんじゃないでしょうか。」とかいった声もありました。
こうした声に触れて,私は気がつきました。そういえば,子どもたちをつなげるこの手の活動は,ダイナミックな教室ファシリテーションの手法に取り組む以前に,日常的に小さな活動をたくさんしているな,と……。教室ファシリテーションで提案したダイナミックな手法は,そうした日常的な取り組みを前提としていたのだな,と……。
今回,「教室ファシリテーションへのステップ」と題して,国語科の授業の在り方について,音読・スピーチ・聞き方・作文・話し合いの五つについて,ネタを含めてシリーズで上梓させていただくことになりました。本書はその2冊目「スピーチ編」です。
もとより,音声言語活動には三つの活動形態があります。
一つ目に「独話」。これは1対多の一方的なコミュニケーションです。
私たちはよく,大学の先生の講演を聴いたり,現場の先生の研究発表を聴いたりという機会をもちますが,こうした場合,その場の話し手は一人,その他の大勢は聞き手ということになります。つまり,「1対多」でコミュニケーションが行われているわけです。
また,聞き手は原則として,話し手が話している途中に口をはさむということが許されません。一般に,独話の最中に聞き手が口をはさむことは失礼とされます。これが「一方的コミュニケーション」という意味です。
「独話」の例としては,「講演」「講話」「演説」「スピーチ」「プレゼンテーション」などがありますが,国語教室で展開される具体的な学習活動としては,一般的に「スピーチ」になります。
二つ目に「対話」。これは1対1の相互的コミュニケーションです。
日常生活において,1対1でのかけあいは意外と多いものです。例えば,「挨拶」「質疑応答」「問答」「面接」などは,原則として1対1で行われます。これらをまったく経験せずに生きていくことは難しいでしょう。また,「総合的な学習の時間」の導入以来,その必須の活動とされてきた「インタビュー」なども,一般的には1対1の対話形態で行われるものです。更に,電話のように,コミュニケーションツール自体が「対話」の成立を求めているというようなものさえあるほどです。これらは,言うまでもなく,双方のかけあいによって進むコミュニケーションです。「対話」が「相互的コミュニケーション」とされる所以です。
三つ目に「会話」。これは1対少数の相互的コミュニケーションです。
いわゆる「日常会話」をはじめとして,「話し合い」「座談会」「討議」「討論」「会議」「ディベート」「シンポジウム」「パネルディスカッション」などなど,その種類が実に様々にあります。特に,「話し合い」や「討論」,「ディベート」「シンポジウム」「パネルディスカッション」などは,21世紀になってから随分と流行してきました。おそらく,「総合的な学習の時間」を機能させるための必須のアイテムとされてきたからでしょう。
私は「独話」は音声言語の技術の習得に,「対話」は意欲の喚起に,「会話」は思考の促進に向いていると考えています。1対多の一方的コミュニケーションでは話し手がその場のすべての責任をもつことになりますから,その責任を全うするために技術意識が高まります。また,1対1で和気藹々に相互コミュニケーションを図ることは,話すことの抵抗感を和らげます。更に,1対少数で当事者意識をもって交流や議論に参加することは,だれもが傍観者とならずに思考が促されます。
私はこれを原則として,長く「話すこと・聞くこと」領域の授業づくりに取り組んできました。
スピーチは「独話」の代表的な言語活動といえます。その意味では,1対多の一方的なコミュニケーションにあたります。しかし,なんとかこの「独話」の学習においても,「対話」や「会話」の良さを導入できないか,いつの頃からか,そう考えるようになりました。
そして到達したのが,結果としての活動形態が「独話」だったとしても,そのプランニングの段階で「対話」や「会話」を導入することでした。プランニングの段階には様々な思考活動があります。一人で取り組むのは難しいと思われるような,多様な視点で検討しなければならないこともたくさんあります。そこに協同的な活動を導入することを常としてはどうだろうか。
私はかつて,『教室プレゼンテーションの20の技術』(明治図書)を上梓しました。また,最近,『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(学事出版)も上梓しました。本書は前者の言語技術的な発想と,後者の協同学習的な発想とを融合したものです。
本書が現場の国語授業の活性化に少しでもお役に立てるなら,それは望外の幸甚です。
「研究集団ことのは」代表 /堀 裕嗣
堀先生の主張を以前から知っていたので、より具体的な実践群で、@➂のシリーズも購入したくなった。