- まえがき
- 第1章 聞くことでつながる! 聞くことで学ぶ!
- 〜教室ファシリテーションへのステップ・聞き方編〜
- 1 全校集会・学年集会の悪弊が気になる
- 2 「聞くこと」指導は態度指導だけではない
- 3 「聞き方スキル」には四段階がある
- 4 「傾聴態度」に4つのスキルがある
- 5 「要約聴取」に4つのスキルがある
- 6 「情報聴取」に4つのスキルがある
- 7 「批判聴取」に4つのスキルがある
- 8 「聞き取りメモ」に4つのスキルがある
- 【コラム・1】聞き方を高めるコツ〜繰り返し・反復の効用〜
- 第2章 傾聴態度で話し手の意図をつかむ
- 〈1〉「拍手!」で盛りあげよう
- 〈2〉「聞き上手」の3原則
- 〈3〉「今日のお題は?」
- 〈4〉プレッシャーstudy「意身伝漢」
- 〈5〉「MVPは君だ!」
- 〈6〉笑顔でにらめっこ
- 〈7〉アイコンタクト・スピーチ
- 〈8〉シチュエーション
- 〈9〉背中あわせと向かいあわせ
- 〈10〉聞き方役割カード
- 【コラム・2】聞き方を高めるコツ〜「質問力」の具体的観点〜
- 第3章 要約聴取で発話内容をまるごと聞き取る
- 〈1〉ウェッビングメモで他者紹介
- 〈2〉単語要約メモで言葉の定義
- 〈3〉樹形図メモでラベリングスピーチ
- 〈4〉ランキングスピーチでメモの工夫
- 〈5〉再話メモで昔話を要約しよう!
- 〈6〉料理のレシピをわかりやすく表現しよう!
- 〈7〉起承転結から省略を埋め合わせよう!
- 〈8〉序本結から問いの文を想定しよう!
- 〈9〉ペアの会話から問題点を探ろう!
- 〈10〉集団討論を聞き分けよう!
- 【コラム・3】聞き方を高めるコツ〜「聞こえている」から「聞いている」へ〜
- 第4章 情報聴取で自分の表現を磨く
- 〈1〉電車の乗り換え
- 〈2〉敬語ダウト
- 〈3〉日本語ダウト
- 〈4〉星占い
- 〈5〉合唱コンクールの連絡
- 〈6〉プレゼント 何を贈る?
- 〈7〉部屋割り
- 〈8〉係分担
- 〈9〉リーダーからの伝達
- 〈10〉他ジャンルからの聴取
- 【コラム・4】聞き方を高めるコツ〜「話し方」との結びつき〜
- 第5章 批判聴取で自分の表現を見直す
- 〈1〉選挙演説への質問と反論
- 〈2〉小中学生に携帯電話は必要か?
- 〈3〉図書室に漫画を置くべきか?
- 〈4〉グループスピーチへの指摘
- 〈5〉家庭教師の勧誘に引っかかるな!
- 〈6〉これ買って!
- 〈7〉トマトは体によい?
- 〈8〉胡散臭い表現に気をつけろ!1
- 〈9〉校長先生のお話を分析せよ!
- 〈10〉胡散臭い表現に気をつけろ!2
- 【コラム・5】インタビューを機能させるコツ〜インタビューの目的とスキル〜
- 第6章 インタビューで総合力を高める
- 〈1〉ペア・インタビュー
- 〈2〉ライフヒストリー・インタビュー
- 〈3〉マジック・フレーズ
- 〈4〉YES/NO・インタビュー
- 〈5〉オープン・クエスチョン・インタビュー
- 〈6〉質問力UP・インタビュー
- 〈7〉つっこみ・インタビュー
- 〈8〉グループ・インタビュー
- 〈9〉ロールプレイ・インタビュー
- 〈10〉面接・ロールプレイ
- あとがき
まえがき
拙著『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(学事出版)をお読みいただいた何人もの方から同じ質問を受けました。
「教室ファシリテーションの理念はよくわかりました。手法もよくわかりました。でも,いきなり導入してうまくいくのでしょうか……。」
なるほど,その不安はよくわかります。
「本当にうまくいくのか不安で,最初の一歩が踏み出せません。」とか,或いは「実際にやってみたけれど,なんとなくしっくり来ないんです。他に何かコツがあるんじゃないでしょうか。」とかいった声もありました。
こうした声に触れて,私は気がつきました。そういや,子どもたちをつなげるこの手の活動は,ダイナミックな教室ファシリテーションの手法に取り組む以前に,日常的に小さな活動をたくさんしているな……と。教室ファシリテーションで提案したダイナミックな手法は,そうした日常的な取り組みを前提としていたのだな……と。
今回,「教室ファシリテーションへのステップ」と題して,国語科の授業の在り方について,音読・スピーチ・聞き方・作文・話し合いの五つについて,ネタを含めてシリーズで上梓させていただくことになりました。本書はその3冊目「聞き方編」です。
「聞くこと」の指導は学校教育の永遠の課題です。なぜ子どもたちが聞いてくれないのか,なぜ子どもたちが理解してくれないのか,なぜあんなに一所懸命に話したのに子どもたちに伝わらないのか,教師はそんなことばかり考えています。
かつては教師の話し方が洗練されれば,子どもたちは必然的に理解してくれるはずだという論理で,教師のプレゼン能力や授業技術,教育技術ばかりがテーマにされ研究されました。もちろん,そうした努力は一定の成果を上げましたが,子どもたちの聞き方そのものを上達させるには至りませんでした。教師のプレゼン能力や授業力ばかりが高まって,子どもたちを成長させることはなかったのです。
実は,構成意識をしっかりもち叙述に潤いをもたせたわかりやすい話やうまい話ばかり聞いている子どもたちは,だらだらした話,下手な話に拒否反応を示すようになります。一見,それでいいじゃないかと思われるかもしれませんが,世の中では重要な内容,大切な内容を話す人が必ずしも話がうまい人とは限りません。そうした話に耳を傾けることのない子どもたちは人生において大きな損をするのではないか,私はそう考えています。
下手な話でもよく理解できる,そういう人こそが実は「聞く力」が高いのです。教師が教育技術を高める,プレゼン能力を高める,これは基本的に良いことですが,良いことにも必ず裏の面というのがあるものです。私たちは自分の力を高めることだけを目指して教師をしているわけではありません。あくまで育てなければならないのは子どもたちであり,力をつけてあげなければならないのは子どもたちなのです。日常的にそういう意識をもちたいものです。
本書では,「聞き方スキル」を4段階で提案しています。「傾聴態度」「要約聴取」「情報聴取」「批判聴取」の四つです。実践編もこの4段階に沿って構成しました。この4段階のスキルは「研究集団ことのは」が10年以上をかけて実践研究を重ねてきた,かなり効果の高い実践的な捉え方であると自負しています。
しかも,「教室ファシリテーションへのステップ」という本シリーズの思想を反映して,すべての実践が小集団による交流を意識して提案されています。本書が子どもたちの「聞き方スキル」の上達にとって,また,現場の国語科授業の活性化にとって,少しでもお役に立てるなら,それは望外の幸甚です。
/堀 裕嗣
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- 明治図書