- はじめに
- 第1章 ここだけは外せない! “発問・指示”10の極意
- 極意1 指示は学級の規律を確立する
- 極意2 指示は一度に一つ
- 極意3 指示を出したら確認する
- 極意4 指示は定着する
- 極意5 主発問はその時間の目標に直結している
- 極意6 その時間の目標は具体的な子どもの姿で表す
- 極意7 補助発問で学習の仕方を身につける
- 極意8 話し合いで考えを高める
- 極意9 指示と発問で学級経営ができる
- 極意10 指示や発問の語尾を工夫する
- 第2章 徹底解説! 発問・指示の基礎・基本
- 1 発問と指示の基礎・基本はこれだ!
- 1 指示とは?
- 2 発問とは?
- 2 発問によってこんなに授業が変わる
- 1 授業が変わった! 発問成功例
- 2 授業が変わった! 発問失敗例
- 3 目指す発問 目指す授業
- 1 ねらいと発問の関係
- 2 発問はねらいを達成した具体的な子どもの姿を考えることから
- 3 目指す授業づくり
- 第3章 事例場面別 “主発問・補助発問”の極意
- 1 授業のモデル図から主発問を考える
- 2 算数の主発問を考える―ポイントはここだ!
- 1 事例1 5年生「いろいろな四角形の面積」 求め方を考える授業での主発問のポイント
- 2 事例2 3年生「三角形」 概念を考えるときの主発問のポイント
- 3 国語の主発問を考える―ポイントはここだ!
- 1 事例1 4年生「ごんぎつね」 「どこ?」と聞くのがよいか,「なぜ?」と聞くのがよいか
- 4 理科の主発問を考える―ポイントはここだ!
- 1 事例1 6年生「水溶液の性質」 予想させる場面で何度も発問する?
- 5 社会の主発問を考える―ポイントはここだ!
- 1 事例1 5年生「情報化した社会とわたしたちの生活」 今後の学習計画作成につなげる発問
- 第4章 事例場面別 “子どもの活動を引き出す発問”の極意
- 1 学習の仕方が身につくような補助発問
- 2 解決への見通しをもてるようにするための発問
- 3 自分の考えを表現するための発問
- 4 一人の発表を共有できるようにするための発問
- 5 話し合いを深める発問
- 6 自分をふり返る発問
- 第5章 「発問と指示を極める=学級経営を極める」だ
- 1 飛び込み授業の経験から
- 1 導入で子どもをひきつける
- 2 机間巡視で個別指導
- 3 子どもの思考が高まる話し合いとまとめ
- 2 学級経営がすべての基盤になる
- 1 安心の空気をつくり出す
- 2 深い教材研究が前提
- 3 学習規律をつくりあげよう
- 4 個性を引き出すのも学級経営
- 5 ノートをコミュニケーションのツールに
- おわりに
はじめに
いずみさんは,どんぐりを 9こ,ひろしさんは,4こ ひろいました。
あわせて なんこ ひろいましたか。
これが,本時の問題です。さあ,あなたは,この問題を子どもたちに提示した後,子どもたちにどんな発問や指示をするでしょう。
「いずみさんのひろったどんぐりはいくつですか」
「式を書きましょう」
「答えはいくつでしょう」
「ノートを開きましょう」
いくつもの発問や指示が考えられますが……。
「と,聞かれても,答えようがない」というのが正解です。
そもそも,くり上がりのあるたし算の計算の仕方を考える時間なのか,習熟の時間なのかによっても発問は変わってきます。
また,ブロックやおはじきなどの半具体物を使って考えさせたいのか,ノートに書かせたいのかによっても指示は変わってきます。
発問や指示は,本時のねらいや,どのように考えさせたいかという教師の意図によって変わってくるといえます。
本時のねらいは,指導計画によって決まります。どのように考えさせたいかについては,教師の指導観や子どもの発達段階,学級の実態によって決まります。
このように考えると,発問や指示は,教師の教材研究や指導観,児童理解の上に成り立つものであることがわかります。
さらに,研究授業のように念入りに指導案を立てて準備していても,授業本番で発問や指示を間違えてしまうこともあります。
私も,発問を間違えたばかりに,教師の意図していることと,子どもの活動が噛み合わず,結局教師が最後に強引にまとめてしまった経験が何度となくあります。授業の途中で気がついて,修正しようとするのですが,発問を連発することになり,何ともしまりのない授業になってしまいます。
ではなぜ,発問や指示は授業を大きく左右するのでしょうか。
まず第一に,子どもたちが素直で,先生の言うことをきちんと聞くからです。日頃からそのような学級経営をしているからあたり前だともいえますが,「式を書きましょう」と言えば子どもたちは式を書くし,「答えはいくつですか」と言えば子どもたちは答えを書きます。
第二に,授業のゴールは先生は知っていても,子どもにはわからないからです。ゴールまでを案内するのが発問や指示なので,誤った発問では授業が道に迷ってしまいます。
第三に,発問や指示は,授業のねらいに直結しているからです。計算の仕方を考える時間で「答えはいくつですか」と発問しても子どもたちは計算の仕方は考えません。答えがあっているか間違っているかだけの授業になってしまいます。
このように,発問と指示は授業の中の大きな柱であるといえます。私の苦い経験を生かし,授業における適切な発問や指示をどのようにつくっていくのかを実践をふまえて追究してきました。主に算数の授業を中心に研究してきたので,事例も算数が多くなってしまいましたことをお許しください。
本書を活用し,よい授業づくりの一役を担えれば光栄です。
/白井 一之
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- 明治図書