- はじめに
- 1章 絵心がなくても大丈夫!図工授業の基礎基本
- 1 「図工」への誤解…あなたも思い違いしている?
- 2 図工の基本的な考え方を知ろう
- 3 図工の評価について知ろう
- 4 図工授業の準備をしよう
- 5 図工の授業を始めよう
- Column 魚の頭はなぜ左向き
- 2章 これで怖くない!不安解消 用具指導のポイント
- 1 絵の具
- 2 カッターナイフ
- 3 彫刻刀
- 4 電動糸のこぎり
- 5 はさみ のり ボンド
- Column 教師だって上手に描きたい
- 3章 不器用でも大丈夫!楽しい図工授業のつくり方
- 造形遊びの授業
- 1 造形遊びの授業のポイント
- 2 光のカーテン
- 3 角棒とビニタイで
- 絵や立体に表す授業
- 1 絵や立体に表す授業のポイント
- 2 はらぺこ青虫(絵)
- 3 カクカクの木・クネクネの木(絵)
- 4 三角の城(絵)
- 5 墨と模様のアート(絵)
- 6 切って削ってくっつけて(立体)
- 工作に表す授業
- 1 工作に表す授業のポイント
- 2 おしゃれな魚(工作)
- 3 夢のお城へようこそ(工作)
- 4 鉄仮面伝説(工作)
- 5 形を変えて(工作)
- 鑑賞の授業
- 1 鑑賞の授業のポイント
- 2 視点を変えて
- 3 題名マッチング
- Column 芸術的とはどういうことか
- 4章 子どもを笑顔にする!図工授業レベルアップ10の秘訣
- 1 苦手な子を笑顔にする指導
- 2 絵心がない先生も安心の手本の示し方
- 3 試しながら作品を作ってみよう
- 4 教師を悩ます「できた! できた!」
- 5 色の指導はピザの一片で教える
- 6 輪郭ではなくパーツから描く
- 7 工作は基本の形から発展
- 8 構図はちょっとのコツで大丈夫
- 9 作品は見せ方で輝きだす
- 10 財産を増やそう
- Column 先生にとっての図工の魅力
- 5章 今日から使える!ワークシート
- 1 今日から使えるワークシート
- おわりに
はじめに
●図工に消極的なんてもったいない
数ある図工教育に関する本の中から,本書を手にしていただきありがとうございます。私は,絵心がない先生にも図工の素晴らしさを感じていただき,図工の授業に自信をもって取り組んでいただくお手伝いができればと願い,この本を書かせていただきました。
図工は,題材や指導に教師の工夫をたくさん入れることができます。加えて,子どもに幅広い能力を身につけさせることができる教科です。自分の創意工夫で子どもの能力が伸びていくというのは,教師冥利に尽きることではないでしょうか。
このような魅力的な教科に,絵心がないという理由で,積極的に取り組んでいないのだとしたら,何とももったいないことだと思います。
●コンプレックスは力になる
私は,現在公立小学校で,図工の専科教員として勤務しています。また,「図工人」(URL:http://zukoujin.com/)というサイトを運営し,図工に関する情報発信を行っています。そしてこのたびご縁があって,図工に苦手意識をもたれている先生のために本書を出版することになりましたが,実は私自身も図工にコンプレックスをもっている者の一人です。
採用されてから長らく通常の学級担任をしていたのですが,絵が好きだったこともあって,自ら希望して専科教員になりました。しかし,学生の頃は,美術を専攻するどころか,美術部にさえ属したことがありません。図工専科といえば芸術に一家言ある専門家ばかりの中,自分が場違いな道を選んだ気がして,美術を学んでこなかったことへのコンプレックスを強く感じました。
それは今でも消えた訳ではありませんが,自分なりに頑張って学んだり,調べたり,試したりしてきたその原動力は,このコンプレックスにあったと思っています。
幸い,私は,素晴らしい実践をされている諸先輩からたくさんのことを教えていただき,心優しい職場の方達に支えられて,今日まで図工専科を続けてくることができました。
絵心がないからと図工の授業に自信をもてないでいらっしゃる先生も,コンプレックスは力に変えることができると思いますし,進み始めれば,手助けや応援していただける人も現れて,道はきっと開けていくと思います。
●誰も教えてくれないこと
材料や用具の扱い方は,インターネットなどで調べれば手に入る情報も多いと思います。しかし,実際に子どもに教えることを想定したものは限られています。
接着に関して例を挙げてみましょう。木工用ボンドを使わせると,子どもは必要以上に出しがちです。木工用ボンドは薄く塗るべきなのですが,なぜ子どもは薄く塗れないのかを考えないと指導法は見えてきません。
この問題の解決策を知るには,インターネットでは限界がありますし,かといって身近に知っている人を見つけることも難しいので誰も教えてくれないという状態になってしまいます。そもそも,子どもが木工用ボンドを必要以上に出していることに気づかない場合は,問題として認識すらされません。
このように誰も教えてくれないようなことや,自分が問題だと思っていなかったことの中に意外と重要なことが隠れています。この本の中では,子ども達の様子を見ていて,私が気づいた指導上大切なことをできるだけ多く紹介するようにしました。ちなみに,木工用ボンドの指導については,2章で詳しく解説しています。
●図工の力がつく本を目指して
この本には,コピーするだけで使えるワークシートのようにすぐに役立つ内容も含まれていますが,全体を通して心がけたのは,「力がつく」本にするということです。「力がつく」というのは,先生の指導力がつくということですが,それは,子どもに能力がつくということにつながっていきます。図工の基本的な考え方に始まり,準備の仕方,作品の見方,授業の進め方を丁寧に解説し,決して小手先のテクニックではなく,本物の力がつく本であることを目指して1ページずつ書き進めました。
タイトルは「絵心がない先生のための」となっていますが,決して入門的な浅い内容ではなく,専科の先生が読まれても参考にしていただける充実した内容を心がけたつもりです。
●わかりやすく読みやすい本に
この本を書くにあたっては,絵も任せていただきましたので,読みやすくしたり,内容を説明したりするために,イラストや図をたくさん描いて文中に入れさせていただきました。特に,用具の説明や制作過程は,かなりわかりやすくできたのではないかと自負しております。
では,どうぞ図工の授業に役立つ情報がぎっしり詰まった本編にお進み下さい。この本が,手に取っていただいた方のお役に立てることを心より願っています。
また、特別支援教育担当の先生方に紹介しています。図工の指導で悩んでいる人に届いて欲しい一冊です。