- はじめに
- 1章 授業で一番大切なことを考えよう
- なぜ、学校で学ぶかを考える
- 自分の授業イメージを知っておく
- 授業では、楽しく・自分から・できるを大切に
- 楽しい授業には3つの「楽しさ」がある
- 「楽しむ」をキーワードに成長する
- 関係性を大切にする
- 授業の方法に固執しない
- 具体的なスキルを身につける
- 授業がうまくいかないことはチャンス
- ライフワークバランスを大切にする
- 常に学習者の研究を
- ○学びを深めるために
- 2章 授業づくりの力をつけよう
- 授業のイメージを多様にする
- 授業づくりの師匠を見つける
- 温故知新の姿勢を大切にする
- 自分をプラットフォームにする
- 子どものよさを見つける力をつける
- 追試、省察、実践、発信を繰り返す
- 新たな学び方を見つける
- 実践の足跡を残し、未来の自分へ宿題を
- ○学びを深めるために
- 3章 授業デザインを考えよう
- どんな授業でも願いを大切にする
- 具体的な学びの場をイメージする
- いかに学習者の心をつかむかを考える
- いかに集団をつくるかを考え、実行する
- 人間関係を豊かにする方法を考える
- 日常の授業を大切にする
- 子ども達をヒーローにする
- ひねりや遊びを効かせる
- 時間管理を常に大切にする
- 書くこととノートづくりを大切にする
- ○学びを深めるために
- 4章 一斉型授業で大切にすること
- 聞く力を高める
- 聞き合う関係をつくる
- 細かい時間設定を大切にする
- 一斉型授業こそ子ども達が動けるようにする
- 自分の声の使い方を意識する
- ネタと課題づくりを大切にする
- 分かりやすさを常に意識する
- 発問と発言の仕方にバリエーションをもたせる
- 板書を工夫する
- 振り返りを工夫する
- ○学びを深めるために
- 5章 協同・ワークショップ型授業で大切にすること
- ワークショップ型授業とは何か
- 実際に見ることでイメージする
- 活動の流れが見えるようにする
- ねらいを常に確認する
- 協同・ワークショップ型の授業ほど「語り」が大事
- 環境設定を大切にする
- 教師の出場を考える
- 一人ひとりのよさを見つける
- 競争と協力を取り入れる
- ○学びを深めるために
- 6章 先生方から学んだとっておきの「学び方」
- 音読・朗読の一工夫
- 教科書の音読を国語にこだわらない
- 漢字の指導に面白さを
- 学習クイズ・ゲームを取り入れる
- フラッシュカードの作り方
- ICTの活用で考えたいこと
- 写真・絵図の読み取りにひねりの問いを
- ミニネタの発掘はアンテナを張って
- 演じる活動を取り入れよう
- ゲストを呼んで新しい学びを
- イラスト作成を効果的に用いる
- ランキングで資料から考えを深める
- ビンゴで学ぶ楽しさを味わう
- ディベートやインタビューを取り入れよう
- ○○づくりに取り組もう
- ワードマップやファシグラに挑戦を
- ○学びを深めるために
- おわりに
- 引用および参考文献
はじめに
ゼロから授業づくりを学ぶことには、3つの意義があります。
まず1つ目は、
もう一度、ゼロから授業を見つめ直してみよう
ということです。日本では、ほぼすべての人が少なからず学校教育を経験します。「学級経営」という言葉は知らなくても、「授業」という言葉は知っています。よい思い出の人もいれば、よくない思い出の人もいるでしょう。
つまり、
教師になる前から「授業」に対して、何らかのイメージをすでにもっている
ということです。
このことを教えてくれたのは学習院大学の佐藤学先生でした。佐藤先生が『教育の方法』(左右社)の中で学生に授業の思い出を出させる話を載せています。また、私の恩師である西之園晴夫先生は、学生時代、授業で「授業のイメージ」を描いてごらんと問われました(『学習ガイドブック 教育の技術と方法―チームによる問題解決のために』〈ミネルヴァ書房〉)。私もよく研修会で、「『授業(をしている様子)』と聞いてイメージしたものを絵に表してみてください」と参加者の皆さんに絵を描いてもらいます。
そうすると、黒板があり、机があり、挙手をして……といった授業のイメージを挙げる人が結構います。最近では、話し合いやグループでの学び合いのイメージを描く人もいます。
実は、授業をつくる、また授業をするときには、こうした「授業のイメージ」に大きく影響されることがあります。
つまり、イメージに引きずられ、目の前の子ども達の実態に即していない授業に陥る危険性をはらんでいるということです。
そのため、
本当に子ども達のための授業になっているか
という観点を忘れてはいけません。
子ども達のためによい授業をと言いつつ、実は「自分のよい授業のイメージ」の実現のために授業をしているのではないか―と私自身自問した時期がありました。自分のイメージに合った授業ではなく、子ども達にとってプラスであれば、どのような授業スタイルでもよいのではないか―そう考えると、ふっとすてきな実践をすることができました。
初任者や教育実習生など、あまり授業をしたことがない人が、授業を行うと、自分のイメージと現実がまったく合わず、さらに合わせるための技術や考え方を持ち合わせていないので、苦しむことがあります。
授業は、学習者として経験してきたことだけではうまくいきません。にもかかわらず、授業者として経験したことが少ないと、逆に意外とうまくいくのではないかと思ってしまうことさえあります。
しかし、それは、大きな間違いです。
授業づくりは言うは易し、行うは難し
なのです。
そのため、ゼロから学ぶということは、
なぜ、学ぶのか
どうしたら学ぶ力が上がるのか
といった本質的なところに意識を向け、ゼロからつくり直しをする作業だと言えます。
つまり、自分がもっている授業のイメージを再確認して、目の前の子ども達のことを考えながら、そのイメージと理想を合わせていくのか、新しいイメージをつくっていくのかを検討していくことで、子ども達に合った自分らしい授業がつくれると私は考えています。
2つ目は、
新しい学び方を取り入れる
ということです。
子ども達も保護者の方も多様になっています。そのため、従来の授業の仕方だけでは対応できない場合が多く生まれてきています。
そこで、まったく新しい異質のものや、学校教育にはなかったような学び方を導入していくことは、とても意義あることだと思います。なぜなら、そうした様々な場から学びを取り入れていくことは、子ども達の学びの力を高めることにつながるからです。
つまり、
ゼロからの視点で授業に活かせる学びを見つけること
が本書を通して一番伝えたいことです。
私自身、授業について悩みます。苦しむことがあります。それは、結果も含めて自分の理想と現実が大きく異なっているからです。そのため、省察をして、どんなイメージをもっていたか問い直しをします。そうしないと、追試し続けたり、新しいものを常に教室に入れ続けたりしても成長にはつながりません。そのため、授業をつくるということは、大変な時間と労力がかかります。だからこそ、授業づくりは意味深く、価値あることだと思います。
そこで本書では、
授業をつくるための学び方
についても書かせていただきました。これからの先生にとって、ゼロからどのように授業づくりを学べばよいかについて知ることは意義あることだと考えています。
3つ目は、
先行実践を大切にしよう
ということです。
教育書では、その実践について、先行事例や先行実践、その実践を行った先人について語られないものが多くあります。私はそのことにずっと疑問を感じ続けていました。いつか本を出す時は、そうした先行事例や実践の元となった人をできるだけ紹介しようと思っていました。それがさらに学んでいきたいと願う若い人への橋渡しになるからです。今回は、各章ごとに「学びを深めるために」というタイトルで引用・参考文献をあげていきます。若い先生には、本書にとどまることなく、さらに学びを深め、進めてほしいと思っています。
ぜひ、一緒に授業づくりをゼロから考えてみましょう。
二〇一四年三月二十三日 /長瀬 拓也
特に経験の浅い教師にとっては必読の一冊である。