- まえがき
- 第1章 「いじめのない学級づくり」から「いじめに強い学級づくり」へ
- 〜「いじめに強い教師」への挑戦〜
- 1.よくあるいじめ指導の落とし穴
- 2.いじめは「ある」
- 3.いじめに強い学級づくり
- 4.いじめに強い学級とは
- 5.いじめが起きにくい学級の原則
- 6.共同体感覚
- 7.共同体感覚といじめ
- 8.いじめ対応の戦術
- 9.自尊感情を高めるシステム
- 10.いじめの早期発見・早期解決のシステム「クラス会議」
- 第2章 学級づくりは授業づくりから
- 1.本当に「よい学級経営の上に,よい授業」でいいですか?
- 2.「学級経営」の定義を変える
- 3.「群れ」を「学級」にする
- 4.「切る」「つながらないようにする」手立ての限界
- 5.千草先生のこと
- 6.たくや先生のこと
- 7.まとめ
- 第3章 教科としての道徳に向き合う授業づくり
- 〜「道徳的実践」につながる効果的な道徳授業の創造〜
- 1.「やらされる」のではなく,やりましょう!
- 2.役割演技は効果が無い?
- 3.効果的な役割演技って?
- 4.授業の実際から考える,役割演技のポイント
- 5.「実感的理解」が,「道徳的実践」を生み出します
- 第4章 自己の能力を呼び覚まし,人間関係形成能力を育てる学級活動の創造
- 〜ロール・プレイングによる「夢学活」の実践を中心に〜
- 1.はじめに〜子どもの「よく変わりたい」思い〜
- 2.「変わりたい」のに自分でかけてしまうブレーキ
- 3.「夢学活」の授業づくり〜授業の実際から〜
- 4.「学校支援プロジェクト」での「夢学活」
- 5.「夢学活」の効果について
- 第5章 教師ものびる総合的な学習の時間
- 〜教師の力量形成とその要因〜
- 1.ある新採用指導担当の教師の話
- 2.総合的な学習の時間が指導しにくいわけ
- 3.総合的な学習の時間の指導と教師の力量形成
- 4.総合的な学習の時間を指導することによって身に付けた力量
- 5.力量形成の要因
- 6.総合的学習の時間の指導で高まる力量
- 第6章 子ども一人一人の教育的ニーズに対応した教育とは?
- 〜「特別支援教育」から「インクルーシブ教育システム」へ〜
- 1.障害のある子どもの教育制度の変遷
- 2.障害者権利条約とは
- 3.障害者権利条約の批准と教育
- 4.インクルーシブ教育システムを支えるために
- 第7章 楽しくやろうよ!授業研究
- 〜授業研究は研修の一部になっているか〜
- 1.はじめに
- 2.授業研究は研究,それとも研修?
- 3.授業研究の実際
- 4.授業検討会の困難点
- 5.授業検討会における話題の内容
- 6.授業研究を修養を意識した研修として位置づけよう
- 第8章 安全で安心できる学校づくり
- 〜子どもを守るためのの危機管理の視点から〜
- 1.はじめに〜安全で信頼される学校づくりのために〜
- 2.危機管理の基本
- 3.学校管理下における教育活動に伴う危機管理T
- 4.学校管理下における教育活動に伴う危機管理U
- 5.まとめ〜安全で安心できる学校づくりのための研修と方策〜
- 第9章 不祥事を起こさないツボ
- 〜法令を踏まえた教育・指導〜
- 1.教職員不祥事の激増?
- 2.わいせつ行為等
- 3.体罰
- 4.交通事故
- 5.人格の完成を目指す
- あとがき
まえがき
私が「専門職大学院」という言葉を耳にした日時と場所をはっきりと覚えています。それは平成16年8月4日の午前8時で場所は筑波のホテルの朝食会場です。ホテルで懇意の他大学管理職の方と一緒に朝食を食べた時,「西川君,専門職大学院って知ってる?」と切り出されました。そこから聞いた話は驚天動地の内容でした。大学に戻って,設置案を考えさせて欲しいと学長に直訴し認めてもらいました。
しかし,本学が教職大学院を設置する場合,他大学にない不利な点が少なくありませんでした。第一は,上越市が県庁所在地ではなく,かつ,近隣に大都市がないという点です。第二は,上越教育大学が大学院を中心とした大学院であるため,定員は他大学に比べて多いことが求められることです。そして,今後,教職大学院は全国に広がることが予想されます。
つまり,近くだからという理由で入学希望する学生は期待出来ないのに,多くの学生が希望する大学院であらねばなりません。それも,単に「教職大学院」ということで入学希望する学生はどんどん減るのです。
そこで本学の教職大学院を計画する際に,常に最優先にしたのは本学だからこそ出来る,特色ある教職大学院を創ろうということです。そこで目をつけたのは本学が地元の学校と良好な関係を維持している点です。多くの教員養成系学部の学生は附属学校で教育実習をします。ところが,本学の教育実習の過半数は地元の学校で行います。これは本学が地元の教員の運動によって生まれた大学という特異性によるものです。
これを生かそうと思いました。ただし今までの教育実習とは違って,学生の指導教員(アドバイザー)が直接学校と交渉し,学生の希望と実習校の希望をマッチングさせ,各指導教員の専門を生かした教育実習を実現しようと考えました。
しかし,これはとても大変なことです。大学教員は基本的に研究者であり実践者ではありません。研究のことは指導出来ますが,実習校と直接交渉することは一般的に出来ません。そのため多くの大学の場合,実習校との調整は実習担当教員が担当することになります。しかし,そのように行えば各指導教員の専門を生かした実習は出来ません。従って,全ての専任教員が研究を担当しつつ,かつ,現場学校と話せる実習担当でなければならないのです。
しかし,幸い,本学はそれが出来ました。本学は全国から多数の現職教諭が院生として学ぶ大学院大学という特殊性があります。さらに,全国的にも珍しい,博士課程も持つ大学なのです。
現在,教職大学院の専任教員は17名ですが,実務家教員が10人で研究者教員が7人です。ところが,本学の場合は実務家教員と研究者教員の境が曖昧なのです。実務家教員の殆どは修士号を持っており,3人は博士号を持っています。殆どの人は学術論文の業績を持っているのです。逆に研究者教員の中には教職経験がある人も少なくありません。私も研究者教員ですが,暴走族相手に物理を教えた教師でもあります。
実践と学術の往還は教員養成系大学の永遠のテーマです。しかし,実践のエキスパートと学術のエキスパートがそれぞれの専門を学生に語り,学生が実践と学術の往還をすることを期待しています。
しかし,上越教育大学の教職大学院では,実践と学術の往還をしている教員から実践と学術の往還を学生に伝えます。
さて,前置きはこれぐらいにしましょう。本学教職大学院の誇る,我が同僚の語りをお読み下さい。
-
- 明治図書