- はじめに
- 第1章 授業をスタートする前に 学び合いの下ごしらえ
- 1 学び合いの心を育てる
- @子どもの姿を丹念に見とる
- A何のために話し合うの?
- B教えてばかりでは損?
- C競争と協同
- 2 教材研究にこだわる
- @おもしろい問題<本質をとらえた問題
- A子どもの実態に応じてちょっとアレンジしてみる
- 3 子どもの反応を予想し,授業展開を構想する
- @子どもの反応こそ最高の学習材料
- A子どもの反応を生かした授業展開の構想
- 4 板書計画をつくる
- @1時間の内容をコンパクトにまとめる
- A板書指導案で授業をシミュレートする
- 第2章 思わず考えてみたくなる! 問題提示の工夫
- 1 「素材提示」で子どもがいきいき動き出す
- @素材選びの観点
- A子どもが素材に対して自然に働きかける活動を仕組む
- B問題へのイメージを膨らませる素材提示
- C問題解決の必要感を高める素材提示
- 2 ちょっとしたしかけで子どもの知的好奇心をくすぐる
- @取り上げる形や提示の仕方を工夫する
- Aプリントでちょっとした意地悪!?
- 3 問題に対する気付きや思い,問いを引き出す
- @問いを引き出しながらめあてに迫る
- A□の中に入る数値を考えさせることで問いを引き出す
- 4 子どもを問題に引きつける5つの手法
- @ブラインド効果
- A比較提示法
- Bゲーム化
- C計算問題のしかけ
- DNo.1競争
- 5 「めあて」を子どものものにする
- @「めあて」はだれのもの?
- A子どもの問いが「めあて」に
- B「めあて」は変化する
- 第3章 どの子の思考も止まらない! 自力解決の導き方
- 1 問題と真剣に向き合う時間を確保する
- @解決や発見の喜びを数多く体験させる
- A自力解決の時間を充実させる手だて
- 2 自力解決とノート指導
- @ノートをダイナミックに使えるようにするために
- Aノートの機能
- B目標となるモデルノートを提示する
- 3 自力解決と机間指導
- @机間指導の経路を工夫する
- A子どもの反応をしっかり予想しておく
- B子どもの考え方を前向きに評価し,自信を与える
- 4 自力解決の時間をより有意義なものにするために
- @既習の考え方で使えるものがないかを考えさせる
- A具体的な声かけで多様な考えを引き出す
- 第4章 学級全員でつくり上げる! 話し合いの導き方
- 1 質の高い話し合いを実現するための手だて
- @子どもの考えの取り上げ方
- A子どもの考えのかかわらせ方
- B話し合いの収束,議論の整理の仕方
- 2 段階的な発問・指示で話し合いを組織する
- @発問・指示を段階的に構成する
- A発問・指示を段階的に構成した授業例
- 3 ペア学習・グループ学習を効果的に取り入れる
- @ペア学習・グループ学習で育つ力
- Aペア学習が生きる場面
- Bグループ学習が生きる場面
- Cペア学習・グループ学習で配慮すべきこと
- 4 話し合いでは物がモノを言う
- @言葉の空中戦に陥らないために
- A授業の準備をしっかり整えるために
- 5 話し合いの拡散をコントロールする
- @子どもの思考,話し合いの拡散
- A収束のシグナルとなる指示を出す
- 6 教師が子どもに,子どもが子どもに寄り添う
- @教師が子どもに寄り添う姿勢
- A友だちの考えに寄り添う意識の育て方
- 第5章 取り上げ・つなぎ・問い返す 授業を動かす教師のしかけ
- 1 取り上げ・つなぎ・問い返す
- @学び合いの授業の課題
- A「取り上げ・つなぎ・問い返す」教師の一連の活動
- B「取り上げ・つなぎ・問い返す」一連の活動の実際
- 2 子どもの考えの取り上げ方
- @子どもの反応のとらえ方
- A「素朴な考え」からのスタート
- B「つまずき」からのスタート
- C「数理に直結した考え」からのスタート
- D考えを取り上げる場面での教師の反応
- E子どもの言葉を聞き間違えたふりをする
- F他人事にしてしゃべらせる
- 3 子どもの考えのつなぎ方
- @聞く力を育てる
- A考えをつなぐための8つの力
- B話す力を育てる
- C子どものつなぐ意識を育てるために
- 4 子どもへの問い返し方
- @問い返しの有効性
- A問い返しで学び合いの質を高める
- 第6章 学力向上に直結! 授業のまとめ・評価の工夫
- 1 子どもの考えや言葉を大事にした授業のまとめ
- @「めあて」に対応したまとめ
- A板書を生かしたまとめ
- B学習内容の定着につながるまとめ
- 2 授業の振り返りができる板書づくり
- @1枚の黒板から45分の授業展開が見えるか
- A子どもの考えや言葉が主役の板書づくり
- B板書の動的な活用
- C活用性のあるノートづくり
- 3 学習過程を評価する
- @子どものつぶやきを評価する
- A板書とノートから振り返る自己評価
- 主な参考文献
はじめに
「子どもたち同士が学び合う場面のある算数の授業をやってみたい」。でも,「子どもの考えをうまく引き出せない」「子どもの考えをうまくつなげない」。そんな声がよく聞こえてきます。もとより,算数に限らず,今,子どもたち同士が学び合う授業は注目を浴びており,多くの学校の研究主題にも“学び合い”や“伝え合い”といった言葉が見られます。
学校での学びのよさの1つに,いろいろな考えをもつ子どもたちが,ああでもない,こうでもないと言いながら,一緒に1つのことを追究できるということがあります。もちろん,場合によっては,1人黙々と納得するまで問題を追究することは大切です。しかし,自分なりの考えをもったうえで,それらを出し合い,みんなで共有し,目標に向かって学び合う活動が,子どもをより大きな成長へと導いてくれることは間違いありません。
本書は,「子どもたち同士が学び合う場面のある算数の授業をぜひやってみたい」と願う先生方の想いに応えたいという気持ちでまとめたものです。とはいえ,難しいことが書いてあるわけではなく,経験の浅い若手の先生にも場面をイメージしていただきやすいように具体的な授業例に基づいてまとめられた,算数の学び合い授業の「スタートブック」です。
授業の中で学び合うのは子どもたちです。しかし,放っておいて子どもたちが勝手に学び合いを始めるわけではなく,そこには教師による様々なしかけが求められることは言うまでもありません。また,技術的な面だけでなく,例えば,授業の中で何のために話し合いをするのかなど,学び合いに対する根本的な理解も重要になってきます。教師の理解が指導する子どもにも影響を与えます。第1章では,以上のようなことを踏まえて,まず子どもたちが学び合うことの意味や意義にかかわることを確認することから始めました。
第2章は問題提示の工夫,第3章は自力解決の導き方についてまとめました。これらはいずれも,授業づくりを考えるうえで必要不可欠な部分です。様々な手法を具体的な授業例の中で紹介しています。
第4章は,話し合いの導き方についてまとめました。子どもたち全員に活躍の場を保障し,学級全員で話し合いの質を高めていくための方途を「発問・指示」や「ペア学習・グループ学習」などの視点から整理しました。
そして,第5章はこの本のキーポイントとも言える章で,授業を動かす教師のしかけの中でも特に重要になることを,「取り上げ・つなぎ・問い返す」という3つのキーワードで,実際の授業場面に基づいてまとめています。
最後の第6章は,授業のまとめ方・評価の仕方についてまとめています。板書構成やノート指導,そして評価などを,学力向上に直結させるという視点から整理しています。
本書は,授業の進め方に沿って章が構成されているので,第1章から順にお読みいただければと思いますが,それぞれの章が独立した形にもなっているため,読者の先生方の関心が高い章からお読みいただいてもよいかと思います。最後になりましたが,本書の刊行にあたり明治図書の矢口郁雄氏には数多くの助言,励ましをいただき,大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。
2015年1月 /宮本 博規
イメージが湧いてくる。中学校数学の授業改善にも役立つ。
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