- はじめに
- 本書の使い方
- 第1章 あなたの授業を改善するためのヒント
- 1 自分の授業は見えにくい
- 2 自分の授業をどのようにして見るか
- 3 子どもたちに見える自分の姿を意識する
- 4 子どもとの関係をつくれなければどんなに教材研究をしてもダメ
- 5 課題を見つけた後,どのようにして改善していくのか
- 第2章 今日からできる,授業の「改善」ポイント
- 1 授業の始まりで,学級が見える
- 2 導入場面はムダを省いて素早く進める
- 3 前時の復習の場面は全員参加のチャンス
- 4 子どもとの受け答えはテンポをよくする
- 5 指示を徹底させる
- 6 個人追究をスムーズに進める
- 7 机間指導を上手に活用する
- 8 ○つけで子どものやる気を引き出す
- 9 子どもたちが他の子どもの発言を「聞く姿」をつくる
- 10 全体追究で子どもの考えをつなげ,深める
- 11 困っている子どもを他の子どもが助ける
- 12 ほめることで子どもの行動を変える
- 13 全員参加を目指す指名をする
- 14 板書を有効に活用する
- 15 資料をもとに考えさせる
- 16 発問を工夫して考えさせる・活発に活動させる
- 17 調べることで考えさせる
- 18 わかるようになる場面,できるようになる場面をつくる
- 19 子どもの言葉で授業をつくる
- 20 ペア活動で子どもの活動量を増やす
- 21 グループ活動で子どもたちが学び合う
- 22 教師のかかわりでグループ活動を活性化する
- 23 子どもの姿から,子どもの状況を把握する
- 24 ICTを活用して効率的に時間を使う
- 25 ICTを効果的に使う
- 大切にしたい言葉
- おわりに
はじめに
自分の授業をもっとよくしたいと思わない教師はいません。しかし,具体的にどこをどうすればよくなるのかがわからないまま時が過ぎていくことが多いようです。
私が授業アドバイザーとして,先生方の授業改善のお手伝いをするようになって15年が経ちました。その間,多くの学校で先生方の授業のアドバイスをさせていただきました。ほとんどの学校が何年にもわたって依頼してくださいます。私は厳しい指摘をする方なのですが,それでもまた見てほしいと言ってくださる方がたくさんいるのです。うれしいことに,私のアドバイスが,先生方の授業がよい方向に変わるきっかけになっているようです。
私が意識していることは,できるだけ具体的にアドバイスすることです。「子どもをよく見ましょう」といったアドバイスでは授業はなかなか変わりません。どの先生も子どもを見ようとしていますから,そう言われてもピンとこないのです。ですから,どのような場面で何を見ていないのかを具体的にし,その結果何が起こっているのか,どう解決すればよいのかを示す必要があります。
例えば,子どもたちが教師の話を集中して聞いていなかったとしましょう。教師は,自分が説明することに気を取られて子どもたちの様子に気づいていません。
であれば,「説明の時には子どもたちをよく見ましょう」というアドバイスをすればよいのでしょうか?確かにこのことを意識すれば子どもたちが説明中に集中力を失くしていることに気づけます。しかし,気づけば子どもたちが集中するわけではありません。
では,「子どもたちを集中させましょう」とアドバイスすればよいのでしょうか?それとも「『話を聞ききなさい』と言いましょう」というアドバイスでしょうか?
そうではありません。説明を始めてから集中力がなくなっていることに気づいては遅いのです。ですから,この場合は「説明を始める前は,子どもたち全員を見て,こちらに視線が集中してから話し始めましょう」といったアドバイスをする必要があります。話し始める前に視線を集めれば,話を集中して聞くからです。
このように授業の状況に即したアドバイスをすると,何をすればよいかがわかるので,授業を変えたいと思う方はとりあえずすぐに実行に移せるのです。
しかし,このようなアドバイスは,ピンポイントですから,ある一場面でしか通用しないものです。またこの通りにしても,視線が集中するのに時間がかかるので待っていられないという方もいるでしょう。
であれば,今度は集中するまでの時間を短くするためのアドバイスをすることになります。具体的なアドバイスは,先生方の授業を変えるきっかけとはなりますが,よりよい授業にしていくためには,継続的なアドバイスが必要となります。しかし,多くの方にとっては,継続的に外部からのアドバイスを受けることは現実的ではありません。
そこで本書では,皆さんが自分自身で改善点に気づき,どのように改善すればよいかをできるだけ具体的にお伝えすることを目指しています。
第1章では,授業改善をするためにどんなことを意識すればよいのか,授業改善には何が大切なのかを,私の授業アドバイザーとしての経験からまとめました。
第2章では,場面ごとに授業改善のポイントをまとめました。授業をしている時には自分の姿は見えません。教師の姿をもとに改善点を書いても,自分ではそのことに気づけません。そこで,授業中に教師が見ることのできるもの,つまり「子どもの姿」から改善点がわかるようにしました。これは,私が授業を見る時の視点でもあります。子どもの姿からどんな改善点が見えるのか,その原因は何か,どうすれば改善されるのかを私の経験をもとにできるだけ具体的に示しました。これを読めば,私が授業中に何を見てどのような授業アドバイスをしているのかもわかるはずです。
本書は,自分の授業を改善しようとしている方だけでなく,授業について指導すべき立場の方にも読んでいただけることを願って書きました。指導者の方には,指導を受ける方が明日から実行できるようなアドバイスをしていただきたいと思っています。本書にはそのためのヒントがたくさんあるはずです。本書が一人でも多くの方の授業を改善するきっかけになってくれることを願っています。
2014年9月 /大西 貞憲
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