- はじめに
- 月別教材とポイント
- 実践 J−POPで道徳授業
- 4月
- @SMAP「世界に一つだけの花」 B−(9)相互理解,寛容
- 5月
- ASPYAIR「BEAUTIFUL DAYS」 A−(3)向上心,個性の伸長
- 6月
- BSEKAI NO OWARI「天使と悪魔」 C−(11)公正,公平,社会正義
- Cタダシンヤ「優しいヒーロー」 C−(14)家族愛,家庭生活の充実
- 7月
- Dコブクロ「今,咲き誇る花たちよ」 C−(15)集団生活の充実
- 9月
- E吉田山田「日々」 B−(9)相互理解,寛容
- FFANKY MONKY BABYS「大切」「それでも信じてる」 B−(6)思いやり,感謝
- 10月
- G川嶋あい「旅立ちの日に」 C−(15)よりよい学校生活
- H槇原敬之「僕が一番欲しかったもの」 C−(12)公共の精神
- 11月
- ISPYAIR「My Friend」 B−(8)友情,信頼
- JKiroro「生きてこそ」 松山千春「生命」 D−(19)生命の尊さ
- 12月
- Kmiwa「青空」 C−(18)国際理解
- 1月
- L関ジャニ∞「オモイダマ」 A−(1)自主,自律
- MFANKY MONKY BABYS「ちっぽけな勇気」 A−(4)希望と勇気
- 2月
- NRAM WIRE「歩み」 D−(22)よりよく生きる喜び
- O絢香「にじいろ」 A−(5)真理の探究,創造104
- 3月
- PAKB48(teamB)「タンポポの決心」 D−(21)感動,畏敬の念
- コラム・資料
- 「改正学習指導要領」と「J-POPで道徳」
- 中学生は何を「悪」と認知しているか?
- 映像を教材化 「海難1890」&「杉原千畝」
- MV「くるみ/Mr. Children」の授業構成・発問例
- J-POP1と中学校内容項目対応表
- J-POP2と中学校内容項目対応表
はじめに
1 どんな学級でも……
「中学校2年生のクラスで研究授業をするので,見に来てほしい」という依頼を受けました。教材は『J−POPで創る中学道徳授業』(以下J−POP1)に掲載した「アンパンマンのマーチ」でした。ところが,普段から教科の授業もなかなか成立しないクラスでの実践ということで,研究主任の先生は非常に恐縮されていました。「問題のある子どもたち数名は,授業を無視するか,妨害するか,どうなるかわかりません。申し訳ありません」他の先生たちにも,いろいろな授業で苦労されている様子を聞かされてから,教室に向かいました。
授業前の休み時間にその教室に入りましたが,ひと目でそれらしき生徒3〜4人がわかりました。しかし,授業が始まると,問題のある子どももどんどんアンパンマンの世界に入っていきます。先生の問いかけにも茶化すことなく前向きに考え,発言していました。
若い担任の先生は,「教室に正義を!」という気持ちでこの授業に取り組んだようですが,その気持ちは十分子どもたちに伝わったように思います。公開研究会でもなかなかみられないようなすばらしい授業となりました。やはり,道徳の授業は,「教材」と「教師の情熱」だなということを痛感した1日でした。
2 新学習指導要領「道徳科」に対応
さて,このたび『J−POPで創る中学道徳授業2』(以下J−POP2)を発刊させていただくことになりました。「J−POP1」では18事例を紹介しましたが,「J−POP2」では17事例を紹介します。平成27年3月27日の学習指導要領の一部改正を待って,その趣旨を生かしながらの紹介です。
改正学習指導要領では中学校の内容項目は24から22になり,小学校との連携が図りやすくなりました。「J−POP1」,「J−POP2」に使用している教材の新しい内容項目一覧表はコラム117ページと118ページをご覧ください。
また,改正学習指導要領「道徳科」には「問題解決的な学習,道徳的行為に関する体験的な学習等を適切に取り入れるなど,指導方法を工夫すること」「現代的な課題などを題材とし,生徒が問題意識をもって多面的・多角的に考えたり,感動を覚えたりするような充実した教材の開発や活用を行うこと」等の記述があります。「J−POP2」も読み物教材一辺倒にならないように様々なカウンセリング的手法を活用した道徳科の授業を提案しています。
今回の改正学習指導要領での「評価」については,これからさらに専門家会議が開かれ,27年度中には詳しい内容が出る予定です。今回の改正の重要ポイントである「指導法の改善」については,21ページのコラムをお読みいただきたいと思います。
3 『J−POPで創る中学道徳授業2』のコンセプト
@アーティストの説得力ある語り,メロディー
読み物教材の場合,授業者の範読の技能により,教材への入り込み方にかなり差が出ることがあります。音楽CDの場合は指1本ですばらしい語りを提示することができます。また,DVDで提示できれば,熱く訴えかけるアーティストのパワーを生かすことができます。自分で子どもに熱く語ることが苦手,子どもとの距離感がうまくつかめないと感じている教師でもアーティストの力を借りることができます。また,メロディーは琴線に触れやすく,いつまでも心に残ります。ふとした時,そのメロディーを聴くことにより,授業が思い出されます。
A読み物教材を用いた授業からカウンセリング的展開までの多様な手法
学習指導要領の改正でも取り上げられているように,読み物教材一辺倒ではなく,道徳科では様々な指導方法の工夫が望まれています。本書では,読み物教材から主人公の気持ちを追う従来型の展開もありますが,多くは様々なカウンセリング理論に基づいた体験的学習を取り入れ,それをJ−POPの曲と結びつけています。
B新しい「展開前段,展開後段」という考え方
従来の展開前段は教材に登場する人物の心の変化を追うことにより価値を追究していき,展開後段で自分の生活に当てはめて価値の一般化を行います。しかし,中学生くらいになると,この自分の生活に当てはめる作業が難しくなってきます。また,経験の浅い教師は,教材を深めていく発問のスキルに乏しく,30分くらいで授業が終了してしまうという悩みも聞きます。
本書では,従来のような展開前段,展開後段の場合もありますが,それにとらわれないで様々なパターンで授業を構成しています。展開を2つに分けるという考え方は,経験の浅い教師には授業に取り組みやすくなるのではないかと思っています。
CPV(MV)のストーリー使用
『J−POPで創る中学道徳授業2』ではPV(プロモーションビデオ)・MV(ミュージックビデオ)を教材とした授業例をいくつか紹介しています。最近のPV・MVは感動的なもの,あるいは考えさせられるようなストーリーのしっかりしたものが多く発表されています。台詞はなく映像だけで考えていく新しい形です。ぜひ,挑戦してみてください。
/柴田 克
-
- 明治図書
- 道徳と音楽をつなげる、画期的な書籍です。2016/6/2040代・中学校教員