- はじめに
- 第1章 「道徳の教科化」を生かす授業づくりのバックボーン
- 1節 日本道徳性発達実践学会第14回立命館大会と『私たちの道徳』
- 1 基調講演 松下良平(金沢大学教授)氏/2 シンポジウム
- 2節 『私たちの道徳』,活用に関わる執筆に関連して
- 3節 中学校編で取り上げられた補助資料,山中伸弥さんの自由研究について
- 4節 本書の特徴と活用について
- 第2章 道徳教材―授業展開とワークシート
- 1 希望と勇気をもってくじけずに 夢に向かって確かな一歩を
- 1 ねらい/2 展開(1時間目)/3 展開(2時間目)/4 ワークシート(2時間目)/5 解説
- 2 目標に向かって努力を重ねた人たち 豊田佐吉
- 1 資料について/2 指導案について/3 参考資料
- 3 人物コラム「向井千秋」
- 1 ねらい/2 展開/3 ワークシート
- 4 ヘレンと共に ―アニー・サリバン―
- 1 資料について/2 指導案について/3 授業について/4 ワークシート
- 5 うばわれた自由
- 1 ねらい/2 指導にあたって/3 展開/4 ワークシート
- 6 行為の意味
- 1 夏の日のこと/2 ワークシート
- 7 知らない間の出来事
- 1 ねらい/2 展開/3 ワークシート
- 8 銀のしょく台…
- 1 ねらい/2 指導にあたって/3 展開/4 ワークシート
- 9 ブランコ乗りとピエロ
- 1 ねらい/2 展開/3 ワークシート/4 解説
- 10 キケロの格言…
- 1 感謝はだれのために/2 ワークシート
- 11 人類愛の金メダル
- 1 資料について/2 指導案について/3 授業について/4 ワークシート
- 12 その思いを受けついで
- 1 その思いを受けついで/2 ワークシート
- 13 かけがえのない命 命てんでんこ
- 1 ねらい/2 指導にあたって/3 展開/4 ワークシート
- 14 自然をこよなく愛した人
- 1 ねらい/2 展開/3 ワークシート
- 15 きまりは何のために
- 1 ねらい/2 指導にあたって/3 展開/4 ワークシート
- 16 法やきまりを守って 江戸のしぐさ…
- 1 シンガポールの想い出・江戸しぐさ/2 ワークシート
- 17 愛の日記
- 1 愛の日記/2 ジグソーメソッドについて/3 ワークシート
- 18 小川笙船
- 1 ねらい/2 展開例1/3 展開例2/4 ワークシート/5 指導にあたって
- 19 人間をつくる道―剣道―
- 1 ねらい/2 指導にあたって/3 展開/4 ワークシート
- 20 世界の人々とつながって(坂本龍馬)
- 1 資料について/2 指導案について/3 授業について/4 参考資料/5 ワークシート
- 21 ペルーは泣いている
- 1 資料について/2 指導案について/3 授業について/4 ワークシート
- 22 情報社会に生きる私たち
- 1 あっという間に広がるうわさ話/2 ワークシート
- 23 自分を見つめ豊かに生きる(尾本惠市,三枝成彰)
- 1 自分を見つめ豊かに生きる/2 ワークシート
- 第3章 道徳性の発達と教育への示唆
- 1 道徳性の発達
- (1)道徳性とは(学習指導要領による)
- (2)道徳性の発達を考える切り口
- (3)コールバーグの認知発達理論にみる道徳性の発達
- (4)『解説書』にみる道徳性の発達
- 2 道徳性の測定・評価
- (1)フェアネスマインド検査
- (2)道徳性の評価における留意点
- (3)道徳性の測定・評価を指導に生かす
- 3 道徳性発達段階の特徴(小学5・6年生)と教育への示唆
- (1)水平的な発達と垂直的な発達
- (2)段階2(道具的,互恵主義的志向)の道徳性発達の特徴と教育への示唆
- (3)段階3(良い子志向,対人規範の道徳性)の道徳性発達の特徴と教育への示唆
- (4)自尊感情の低い子どもの指導
- (5)段階4の道徳性発達の特徴
- (6)道徳上の問題行動の事例
- (7)道徳性の発達段階と教育のまとめ
- 〔付録〕小学校学習指導要領(平成27年3月一部改正)より
- 索引
はじめに
新しい道徳教育の到来を告げる「道徳の教科化」を具体化した道徳教育用教材『私たちの道徳』が2014年3月に文部科学省から出版され,小学校と中学校の子どもたち全員に配られた。この教材を使った授業が全国で始められている。物語り資料については,その大部分は文部科学省から読み物資料として既に提供済みのものである。指導案なども示されている。これらについてはこれまでに多くの先生方によって実践されてきたところでもあり,様々なノウハウの蓄積もあるだろう。しかし,これ以外の,「コラム」,「小説」,「ワーク」,「格言」,「短歌」,「詩」,「ことわざ」など道徳教材,道徳資料について,その多くが,今回の教科化のために新しく用意されたり,開発されたものである。そこで,これらの教材を用いて,道徳性をいかに豊かに高めていくか,他律の道徳から道徳的自律につなげていくか,道徳的自覚をどう進めるか,道徳的実践力をつけて道徳実践を引き出すか,主体性を保ちながら自尊感情を育てるためにはどのような方法があるか,どのように教え育てることが子どもたちにとって優れた方法かなど,これらはいずれも大きな問題であり,課題である。
本書では,様々な新しい視点から,子どもたちを他律の道徳から自律の道徳に育てるために,多様な授業方法を提案する考えである。ただビデオや映像といったメディアの使用についても大きな可能性を期待できるのであるが,本書では,著作権の問題もあって,補助資料を用意したとしても写真や絵を含めた文字媒体に限っている。
それとともに,授業づくりの背景として,道徳性の発達における個人差に注目したことである。コールバーグ博士が構築した道徳性の発達段階理論,3水準6段階の発達の考え方は現代の金字塔である。この考えを拠り所に,子どもたちの道徳性の個人差に合わせた道徳の授業提案を行うものである。またこれに留まらず,日常のクラス運営や学級経営に,また生徒指導や学習指導においても,ここで示した指導原理が有効だという点についても言及する。
本書の執筆については,出版趣旨に同意をされた多くの先生方の参加があってここに完成をみました。道徳性の発達に関心を持つ学校現場の小学校,中学校の先生方,教育行政に携わっている先生方,道徳教育指導員の先生方,大学で「道徳教育の指導法」や「道徳教育の研究」等の担当の先生,研究者の皆さまには十分なコンセンサスのない中,ある意味で未踏の分野にくさびを打つという難しい仕事を短時間でやっていただきました。何度かの往復メールの末に方向が定まったケースも多々あります。皆さまにはそれぞれにご苦労を掛けました。お礼申し上げます。新しく出された『私たちの道徳』にワークシートを追加し,子どもたちの道徳性を発達させるべく「うまい活用」を提案するという極めて難しいこの課題への挑戦を支えた「道徳性発達研究会」の仲間,編集の労を引き受けた,堀田泰永,松尾廣文,楜澤実,荊木聡,松本朗の皆さまに感謝の意を表します。有難うございました。
この新しい挑戦が道徳好きの子どもを増やし,子どもたちの道徳的自律を促し,自尊感情の育成につながり,子どもたちの幸せに役立つことを強く願っております。
本書のシリーズ第1作目の『考える道徳を創る「わたしたちの道徳」教材別ワークシート集 1・2年編』の完成原稿を明治図書にお送りしてから数週間後に,樋口雅子編集長から突然の退職の知らせを受けました。樋口編集長には永年にわたって私たちが取り組んでいるコールバーグ理論に基づくモラルジレンマ授業を支援していただきました。2012年には,樋口さんの企画で『モラルジレンマ教材でする白熱討論の道徳授業』小学校編と中学校・高等学校編を次々に出版でき,学校現場の先生方より大きな反響を得るとともに好評を博し,短い期間に重版となりました。今回はこれに続く新しい企画で,私たちも大きな可能性と期待を持って取りかかってきました。この場をお借りしてこれまでの樋口雅子様のご厚情に厚くお礼と感謝を申し上げます。
最後になりましたが,本書は雑誌『道徳教育』の編集に長年関わってこられたベテラン茅野現氏が引き継がれ,今回の出版となりました。改めて明治図書編集部茅野氏に感謝申し上げます。
2015年3月 編集を代表して /荒木 紀幸
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