- はじめに
- T章 上手に叱れば子どもはグーンと成長する!
- 1 「叱ること」は愛情
- 2 「叱る技術」の基礎基本
- 3 「上手な叱り方」「下手な叱り方」
- 4 「個への叱り方」「集団への叱り方」
- 5 集団が成長するための叱り方
- 6 叱らずに叱る
- U章 クラス集団に響く!「叱り方」の技術60
- 1 思わず叱りたくなる!学校生活での困った場面
- @ 時間にルーズなクラス
- A 教師の指示に従わないクラス
- B 整理整頓できず教室が雑然としているクラス
- C あいさつや返事ができないクラス
- D 乱暴な言葉が飛び交うクラス
- E ケンカがよく起こるクラス
- F 教師に反抗的な子がいるクラス
- G いじめがあるクラス
- H ウソや言い訳が多いクラス
- I きまりを守らない子が多いクラス
- J 忘れ物の多いクラス
- K 学校の物がよく壊れるクラス
- 2 思わず叱りたくなる!授業での困った場面
- @ 私語が多いクラス
- A 集中力に欠けるクラス
- B 決まった子ばかりが活躍するクラス
- C 学習意欲が低いクラス
- D 立ち歩く子がいるクラス
- E 間違いが言えないクラス
- F 理解度の差が大きいクラス
- G 姿勢が悪いクラス
- H 授業をかき回す子のいるクラス
- I やる気が感じられないクラス
- J やることが雑で丁寧さに欠けるクラス
- K 手悪さをして遊ぶ子が多いクラス
- 3 思わず叱りたくなる!学級活動での困った場面
- @ 何となく重苦しい雰囲気のクラス
- A 当番活動がうまく機能していないクラス
- B 係活動が休止状態になっているクラス
- C 掃除をさぼる子がたくさんいるクラス
- D 友達を気にして好きなことができないクラス
- E 集団意識に欠けたクラス
- F 一生懸命さが感じられないクラス
- G 校外学習で勝手な行動をする子が多いクラス
- H いつも特定の友達でグループをつくってしまうクラス
- I 学級イベントが盛り上がらないクラス
- J 「力の序列」ができてしまったクラス
- K 話し合い後にいつも不平や不満の出るクラス
- 4 思わず叱りたくなる!友達関係での困った場面
- @ 悪口や陰口があるクラス
- A 特定のグループの子としか交流しないクラス
- B 1人で行動する子が目立つクラス
- C 友達の物にイタズラをする子がいるクラス
- D 勉強や運動が苦手な子をバカにする雰囲気のクラス
- E 仲間外しがあるクラス
- F 力関係で優位の子が威圧的に振る舞うクラス
- G 交換日記やメールでトラブルが起きたクラス
- H 集団で特定の子に嫌がらせをするクラス
- I 異性に関するトラブルが起きたクラス
- J 暴力的な行いが目立つクラス
- K 「自分中心」の子どもが多いクラス
- 5 思わず悩んでしまう!保護者対応・職員室での困った場面
- @ 保護者の前に出ると緊張して話すことができない
- A 自分の思いが子どもや保護者に伝わらない
- B 子どもトラブルに対して保護者から苦情がきた
- C 保護者がクレームで学校に来た
- D いじめ問題を起こしてしまった
- E 保護者同士のもめごとに意見を求められる
- F 家庭でも生活習慣を身につけてほしい
- G 家庭でも学習習慣を身につけてほしい
- H トラブルが起きたので誰かに相談したい
- I 先輩教師に教えてほしいことがあるけど
- J 1人でトラブルを処理しきれない
- K 職員室で陰口をしているのを聞いてしまった
はじめに
昔であれば,たとえばいじめなどは,教師が間に入って厳しく指導すれば効果がありました。授業中,おしゃべりする子や立ち歩く子は,教師の一喝で行いを正したものです。あからさまに教師に反抗する小学生は皆無に等しく,対教師暴力などは小学校現場では,想像すらできないものでした。
ところが,現在は違います。子どもを取り巻く社会の環境が変わり,価値観が多様化したことが原因でしょうか? いじめや学級崩壊,対教師暴力など,現在の小学校現場は深刻な課題をたくさん抱えています。いじめ防止対策推進法の施行や小中一貫教育の推進,5歳園児の教育義務化や道徳の教科化の議論など,学校教育に関する様々な改革が行われています。
しかし,私たちは教師という立場から,もっと根本の「教育のあり方」についての議論をするべき時なのではないでしょうか? 現在,小学校が抱える様々な問題は,教室で教師がこれまで行ってきた指導の結果として起こっているのだと,謙虚に反省しなくてはならないと思うのです。
近年,「優しい先生」「親しい先生」「もの分かりのいい先生」が,子どもを理解しているよい教師であるかのように思われる風潮があります。当然,子どもは「優しい先生」「親しい先生」が好きですから,そのような教師は,年度はじめは人気者です。しかし,その優しさが「本物の優しさ」であり,親しさが「本物の親しさ」であるかと問われれば,決してそのようなことはないというのが私の考えです。優しい教師・もの分かりのいい教師のクラスが,ふた月もすれば,騒乱状態になってしまう場合が多いことからも,その優しさは本物ではないと思われても仕方ないのではないでしょうか。考えてみてください,あなたの大切な人が自身を傷つけるような行いをした場合,あなたはその人を本気で叱るのではないでしょうか。大切だからこそ,好きだからこそ,真剣に感情をあらわにして自分の気持ちを伝えるのです。それが,「相手を思う叱りの根本」だということです。子どものことを真剣に考えていれば,いつも優しくてもの分かりのいい教師であり続けることなど不可能に近いと私は考えています。
本当に子どもの成長・未来を考えるのであれば,時には厳しく叱ることが必要になります。もしも,子どもを叱ることができない理由が,「子どもとの関係を上手にやりたいから」「子どもに嫌われるのがいやだから」というのであれば,それは,叱ることから逃げているということです。教師の仕事とは,子どもの成長を願う気持ちが根本にあって成り立っています。叱りから逃げることは,教師という仕事を放棄することと同じです。
長い期間,学校教育は「子どもにショックを与えない」「子どもの気持ちを第一に」といった考え方に傾倒してきました。その結果,子どものもつ柔軟で立ち直りの早い「しなやかな強さ」を鍛え育てることをしないで,打たれ弱く忍耐力のない,わがままな人間を育ててしまったのではないか。それが,現在の学校教育を取り巻く様々な問題として噴出しているのではないか。そう考えるのは,私だけではないはずです。
「優しいこと」「もの分かりのよいこと」は,子どもとの人間関係を確かなものとするために必要な要素ではあります。しかし,子どものためを思うのであれば,ダメなものはダメと叱り,威厳をもって子どもたちを教え導くことの大切さを忘れてはいけません。子どもは,叱られることによって大切なことを学び,自分を向上させていくと言っても過言ではありません。
私が教職について四半世紀以上になりますが,「子どもとの接し方が分からない」「子どもを厳しく叱ることができない」という教師が増えています。どのような場面で,どの程度の厳しさで,どのような方法で叱ればよいか分からないという声を聞きます。多くの教師が,子どもの叱り方について悩んでいることを肌で感じてきました。しかし,「叱ることは相手に対する愛情」という原点に立ち返れば,保護者を気にすることも,ましてや子どもに気を遣うことも,全く必要ありません。自信をもって堂々と叱りましょう。
「目の前の子どもが大好き」「子どものよりよい成長を願っている」
そんな思いで日々奮闘している先生方にとって,本書がお役に立つことができるなら,これほど光栄なことはありません。
2015年 盛夏 /中嶋 郁雄
いなと確認して、すぐに実践してみようと思える。また、書いてある事は基本的な
ことなので、プラス1して実践した方が良いかもしれないと感じた。