- はじめに
- 第1章 生徒の探求心をくすぐる!単元を貫く「発問」のポイント
- 1 発問に関する研究
- 1 理論研究としての視点
- 2 実践研究としての視点
- 3 単元を貫く「発問」の考え方
- 2 発問を機能させる授業規律
- 3 発問を機能させる評価
- 1 ノートによる評価
- 2 ワークシートによる評価
- 4 発問づくりの今後の取り組み
- 1 アクティブ・ラーニングの実践に向けて
- 2 授業研究のあり方
- 5 本書の読み方
- 第2章 単元を貫く「発問」でつくる授業モデル30
- 地理的分野
- 1 世界地図は何のためにあるのか?
- 世界の地域構成
- 2 住居を高床にする理由の違いに迫ろう
- 世界各地の人々の生活と環境
- 3 アフリカ州のイメージとは?
- アフリカ州
- 4 日本が南米を苦しめる?
- 南アメリカ州
- 5 日本は世界からどのような国に思われているのか?
- 世界と比べた日本の地域的特色
- 6 交通網の発達の影響にはどのようなものがあるのか?
- 中国・四国地方
- 7 果物を生産している土地の共通点を探ろう
- 中部地方
- 歴史的分野
- 8 中学生はなぜ歴史を学ぶ(ことになっている)のか?
- 初回授業
- 9 なぜ昔のことがわかるのか?
- 古代文明
- 10 古代の人々はどのように人々をまとめたのか?
- 古代までの日本
- 11 武士が恐れていた勢力とは?
- 中世の日本
- 12 なぜ鉄砲とキリスト教が伝わったのか?
- 近世の日本
- 13 江戸時代のイメージとは?
- 江戸幕府の成立と鎖国
- 14 なぜ江戸時代は停滞の時代なのか?
- 産業の発達,江戸幕府の改革
- 15 なぜアメリカからペリーがやって来たのか?
- 近代の日本と世界
- 16 江戸時代のおかしなところを考えよう
- 明治時代
- 17 日本人が知らない日本の歴史はあるのか?
- 日清・日露戦争と近代産業
- 18 話し合いによる政治を実現するためには?
- 第一次世界大戦と日本
- 19 なぜ民主的な国家から独裁者が生まれるのか?
- 世界恐慌と日本の中国侵略
- 20 なぜアメリカで原爆正当論が唱えられるのか?
- 第二次世界大戦と日本
- 21 「戦後」という言い方はふさわしいのか?
- 現代の日本と世界
- 22 大人に,最も印象的な出来事をインタビューしてみよう
- まとめ
- 公民的分野
- 23 少子高齢化は民主主義社会の課題か?
- 現代日本の特色
- 24 白と青,柔道の国際化を考えよう
- 私たちと現代社会
- 25 生まれながらとはいつからか?
- 日本国憲法
- 26 選挙が違憲だと何が問題なのか?
- 政治
- 27 なぜ個人商店が少なくなったのか?
- 市場の働きと経済
- 28 なぜお金をつくってはいけないのか?
- 金融,財政
- 29 フリーターという生き方を考えよう
- 労働
- 30 日本は国連安保理の常任理事国になるべきか?
- 私たちと国際社会の諸課題
- 参考文献
はじめに
授業づくりを行う際,発問づくりは何よりも大切です。生徒が考えたくなるような発問によって,学習課題が導かれ,生徒が主体性をもって探求していく…,こんな授業をしてみたい,と多くの中学校教師が思っているはずです。しかし,授業時数との関係などで,教師による説明中心の授業が繰り返されてしまうことに悩んでいる方もいるはずです。
「子どもとつくる学習計画」という言葉がありますが,これは,子どもだけを中心に考えるというのではありません。生徒が「なぜ?」「どのように?」と思うことを教材化し,毎時間の授業で事実認識や価値認識を積み上げ,問いの答えに辿り着くように授業を計画,構成していくことです。言い換えれば,生徒の発言や疑問を生かし,生徒から単元を貫く問いを導く主体的な学習が「子どもとつくる学習計画」であると考えます。
私が「発問」の大切さに気付かされたのは,大学・大学院時代の先生方のご指導によるものでした。「社会科の指導案は子どもの思考過程や認識の変容を踏まえていなければならない」「授業展開では,学問の研究成果を生かした科学的な探究が重要である」など,本当に多くの先生から厳しくも様々なご指導を受けました。
とりわけ,荒井正剛先生(当時,東京学芸大学附属竹早中学校副校長),平田博嗣先生(当時,東京学芸大学附属小金井中学校副校長)の授業を参観し,後に講師として平田先生とともに授業を担当し,授業づくりや評価計画の作成に携わった日々が,とても大きな経験となっています。今でも,平田先生の言葉が忘れられません。
「生徒たちは,内藤先生の授業がわかりやすいと言っていたようだけれど,それができたら,次はわかりにくい授業ができるようにならないと!」
最初は,先生のおっしゃることの意味がわかりませんでした。しかし,平田先生が言いたかったことは,わかりやすい授業は,展開もわかりやすい,ということに陥ってしまうということだとわかりました。授業を参観している人だけでなく,生徒も「先生は,次はこういうことを言うんだろうな…」ということがわかってしまう授業になってしまうと,つまらないのです。「先生に問われて考えたけれど,今日の授業だけでは,よく考えないとわからない。よし! 家で調べてみよう」というような思考に生徒を追い込んでいくということなのです。
つまり,考える余地を残している授業こそが,「わかりにくい授業」ということなのです。その後の教師生活において,試行錯誤する中で,単元全体で追究する課題の設定が,生徒たちの探求心をくすぐっていくということを実感し,ようやく自分の授業スタイルとなり始めたように感じていました。このような折に,本書をまとめる機会をいただいたのです。
本書では,単元を貫く「発問」をテーマとして,単元を通して生徒たちが探求し続けたいと思う授業展開の事例を提示しました。また,本書では,その発問に基づいて行っていく学習課題を,どのように評価するかという点も強調しています。生徒の探求心をくすぐるためには,発問が大切なことは言うまでもありませんが,それ以上にどのような観点から評価されているか,ということが生徒の関心事でもあるからです。
本書は,私のこれまでの拙い実践に基づいておりますが,毎時間,一生懸命に取り組んでくれた勤務校の生徒たちとの授業記録でもあります。「考える,学び合う社会科」という授業理念,「生徒,保護者こそが先生」という私の信念を理解し,暖かくも厳しく接してくれた生徒,保護者の皆様にとても感謝しております。また,勤務校をはじめ,これまで出会った先生方のご指導・ご支援なしには,本書が誕生することはありませんでした。この場をお借りして,感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
最後になりますが,日ごろの生活を常に支えてくれている妻の歩美,小学校教諭として,示唆を与えてくれた両親,家族,そして,本書を企画してくださった明治図書出版の赤木恭平さんに,厚く御礼申し上げます。
2015年5月 /内藤 圭太
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