- はじめに
- より良い授業づくりのために
- 本書のねらいと活用法
- 国語
- 特別支援学校学習指導要領 小学部1段階
- 01 デジタル絵本で物語を読もう
- 02 思い出かるたをつくろう
- 03 インタビューしてみよう
- 04 絵のように文字を書こう
- 05 しりとりゲームでつながることば
- 06 学校の勉強(なまえ)を知ろう
- 07 ビンゴ!くだものの名前を当てよう
- 08 だれだろう?なんだろう?
- 09 仲間集め
- 特別支援学校学習指導要領 小学部2段階
- 10 ○○をたくさんあつめよう
- 11 みんなのからだ
- 12 クイズにチャレンジ めいたんてい
- 13 どうぶつごっこをしよう
- 14 えをならべよう
- 15 おべんとうばこのうた
- 16 かいてあそぼう
- 17 つくってあそぼう かるたとり
- 18 がっこうにあるマークをみつけよう
- 特別支援学校学習指導要領 小学部3段階
- 19 五十音表から単語をつくろう
- 20 文字つなぎしりとり
- 21 片仮名を使わないで片仮名単語を伝えよう
- 22 5W1Hで伝えよう
- 23 川柳・俳句で表現しよう
- 24 「音読帳」をつくって毎日音読しよう
- 特別支援学校学習指導要領 中学部1段階
- 25 助詞に気を付けて文をつくろう
- 26 五七五のことばのリズムに親しもう
- 27 宝箱を探そう!
- 28 電話で正しく伝えよう
- 29 どれを選ぶ?
- 30 作文を書こう
- 31 本を読んで「紹介カード」をつくろう
- 32 どんな意味があるのかな?
- 特別支援学校学習指導要領 中学部2段階
- 33 お礼状を書こう
- 34 四字熟語を読み取ろう
- 35 物語文を読み取ろう
- 36 角野栄子さんの本を読もう
- 37 説明文を読み解こう
- 38 辞書を使って調べよう
- 39 スリーヒントクイズをつくろう
- 40 文章に書き表そう
- 特別支援学校学習指導要領 高等部1段階
- 41 「パロディことわざ」で知恵を増やそう
- 42 世界の名画で間違い探し
- 43 見えない頭の中を読み取ろう
- 44 昔話の続きを物語ろう
- 45 電光掲示板を読み取ろう
- 特別支援学校学習指導要領 高等部2段階
- 46 内容を読み取ろう
- 47 立場を決めて話し合おう
- 48 物語文を読もう
- 49 提案するポスターを書こう
- 50 古文の魅力を見つけよう
- 算数・数学
- 特別支援学校学習指導要領 小学部1段階
- 51 「よく見て」入れてみよう!
- 52 「同じ色」を見つけて貼ろう!
- 53 「同じ色と矢印の向き」を見て貼ろう!
- 54 なんの動物?乗り物はどれだ?
- 55 「5」までの数を数えてみよう@
- 56 「5」までの数を数えてみようA
- 57 「同じ形」を探してみよう
- 58 「同じもの」を探してぶどうをつくってみよう
- 59 「棒をさすところ」をよく見てみよう
- 特別支援学校学習指導要領 小学部2段階
- 60 ものの個数を比べよう ものの集まりと対応させよう
- 61 数字を覚えよう 個数を正しく数えよう
- 62 10の構成を覚えよう
- 63 色や形で分類しよう
- 64 △や□をつくってみよう
- 65 量の大きさを比べよう
- 66 長さを比べよう
- 67 重さをはかろう
- 68 表で表現しよう
- 特別支援学校学習指導要領 小学部3段階
- 69 数字すごろくとジャンプで学ぼう
- 70 たしざん・ひきざんにちょうせんしよう
- 71 位置のゲームを楽しもう
- 72 長さを比べよう どっちが長いかな?
- 73 時計を読もう
- 74 天気調べ・気温調べ・ランニングの記録づくりをしよう
- 特別支援学校学習指導要領 中学部1段階
- 75 商品を10個のまとまりごとで袋詰めして数えよう
- 76 分担して袋詰めした商品の総数を,筆算で計算して求めよう
- 77 花壇の植栽計画を立てよう
- 78 3本(4本)の直線で三角形(四角形)をつくろう
- 79 ウォールボードのデザインを考えよう
- 80 秤を選んでいろいろなものの重さを計ろう
- 81 販売担当のスケジュールをつくろう
- 82 グラフを見て,パーツの作成数を考えて,作成しよう
- 特別支援学校学習指導要領 中学部2段階
- 83 PowerPoint教材で1000より大きい数比べ
- 84 タイルがアニメーションで動く筆算
- 85 デジタルのカード教材を使ってかけ算の理解を深める
- 86 エアー的当てゲームで「0のかけ算」の意味を知ろう
- 87 身の回りの広さのランキングをつくろう
- 88 分度器づくりを通して感じる角の大きさ
- 89 たし算パズルを表にして数のきまりを見つけよう
- 90 タブレットを使って表とグラフをつなぐ
- 特別支援学校学習指導要領 高等部1段階
- 91 ブロック数字パズル
- 92 大きな数字の計算をしてみよう
- 93 いろいろな図形をつくろう
- 94 降水確率から,天気予報をしてみよう
- 95 地域の人口を知り,グラフにしてみよう
- 特別支援学校学習指導要領 高等部2段階
- 96 整数の性質 偶数と奇数
- 97 整数の性質 約数,倍数
- 98 縮図や拡大図
- 99 二つの数量の関係
- 100 起こりうる場合
はじめに
近年,「障害者の権利に関する条約」の批准(2014年2月)を契機に,障害のある子もない子も共に学ぶ「共生社会の実現」に向けたインクルーシブ教育システムの構築が急速に広まりつつある。先般の特別支援学校学習指導要領の改訂では,こうしたインクルーシブ教育の進展状況などを鑑みて,特別支援学校と幼稚園・小中高等学校等とのつながりや「学びの連続性」を重視し,小中学校の学習指導要領の示し方に準じて,目標や内容が示される形となった。この背景には小中学校の教育を経験した後,特別支援学校に入学したり年度途中で転校したり,反対に特別支援学校や特別支援学級から通常の学級に転校・転籍したりする児童生徒が増加傾向にあることなどが挙げられる。今回の学習指導要領の改訂では,小中高等学校と同様に「育成を目指す三つの柱」に基づいて各教科等の目標や内容が整理された。障害のあるなしにかかわらず,通常の教育と特別支援教育の両方に共通する教科である「国語」や「算数・数学」の指導を通して,社会生活に必要な力を育んでいくことが大切となる。
特別支援学校や特別支援学級では,発達段階が幅広い児童生徒が在籍しているため,教科指導においては,細分化されたグループ指導を展開できたとしても,小中学校の通常の学級のように教科書の内容を一斉に順を追って指導していくことは難しい。そのため,一人一人の発達段階や障害の状況等を的確に把握した上で,児童生徒個々のニーズに応じた学習課題を設定していく必要がある。また,個別的な課題を重点的に学ぶ段階の児童生徒も在籍しているため,指導内容が一部の内容に偏ってしまっている状況も見受けられる。
「国語」では,言語理解を含め,ことばやジェスチャーなどを通して他者とより深く関わるためのコミュニケーション力の基礎を育てていくことが大切で,日常生活場面で実際にことばを使用しながら体験的に学んでいくことや,ことばの使い方のルールを積み上げながら,確実にその使用法を覚えていくことに留意すべきである。「算数・数学」では,国語の指導と同様に,学校での授業と合わせて日常生活場面の中で1対1の対応を理解したり,大小・長短の比較や数量や図形に関する基礎的な概念を理解したりしながら,数や量を扱う能力や態度を育てていくことが大切である。
また,知的障害のある児童生徒の指導においては,「日常生活の指導」「生活単元学習」「作業学習」などの「各教科等を合わせた指導」との関係が取り上げられることが多いが,個々の児童生徒の実態に合わせた継続的な指導を展開し,確かな学力を身に付けていくための「教科指導」の重要性が,今,見直され始めている。児童生徒の現在の状況を明らかにした上で,発達段階や障害の特性に応じて,指導の順序性や各教科の系統性を大切にした教育を積み上げていくことに留意すべきである。今回の学習指導要領の改訂では,「学びの連続性」を重視し,特別支援学校の各学部や各段階間の円滑な接続を図るために,中学部の各教科が新たに二つの段階(これまでは1段階)として示された。さらに,小中学部の各段階に目標を設定し,段階ごとの内容を充実させることが規定された。
知的障害のある児童生徒の各教科の指導に関しては,旧来から指導内容が曖昧な部分が多く,「毎年同じような内容を行っている」「活動の内容がパターン化している」などの批判があった。このことは「国語」や「算数・数学」の各教科の指導に限られたことではないが,今後は教科としての連続性・系統性を踏まえながら,担当する児童生徒がそれぞれ習得した内容を次の授業で発展・応用させられるように,きめ細かな指導を展開することが求められていくだろう。これまでの知的障害教育で培われてきた指導方法や指導内容などを吟味しながら,個々の児童生徒の実態に応じて,「どのような内容を」「どのような順番で」「どのように指導していくか」という指導内容の順序性を常に意識し,日々の授業を進めていくことが大切である。
本書は,特別支援教育現場の「国語」「算数・数学」の指導に活用・応用できる内容の提供を意図して企画されたものである。はじめに,子どもの発達段階に合わせたより良い授業づくりに向けて概説するとともに,本書のねらいや活用法について解説した。次に,教育現場の指導経験の豊富な特別支援学校・特別支援学級の先生方に,改訂された学習指導要領の趣旨を踏まえた「国語」及び「算数・数学」の学習課題について,それぞれ50課題ずつ合わせて100課題を紹介してもらった。
また,各学習課題では主な対象となる児童生徒の指導内容が,それぞれの教科の段階(小学部3段階,中学部2段階,高等部2段階)のどこに位置付いているかを示してもらった。同様に,今回の改訂で新たに示された「資質・能力の観点からの三つの柱」(「知識及び技能」の習得,「思考力,判断力,表現力等」の育成,「学びに向かう力,人間性等」の涵養))について整理してもらった。さらに,全体的な内容の統一を図るために,学習指導要領の段階(小学部1段階など)や学習指導要領との関連(国語:〔知識及び技能〕ア(ア)(エ),〔思考力,判断力,表現力等〕A聞くこと・話すことア,C読むことア・エ,算数・数学:図形イ(ア)(ア)(イ)など)を課題ごとに示してもらい,本文は,指導のねらい,指導の流れ,手立てという順番でまとめてもらった。どの課題も現場の先生方が実際に授業等で扱われた課題であり,学習指導要領の内容に準じた課題が検討されている。
知的障害特別支援学校に限らず,特別支援学級等で知的障害のある児童生徒の指導に携われている先生方にとって,大いに役立つ内容だと考える。担当されている児童生徒の発達段階に応じた指導・支援の参考にしていただければ幸いである。
特別支援教育の実践研究会 /是枝 喜代治・村山 孝
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