- はじめに
- Chapter1 イラストでよくわかる!アクティブ・ラーニングの環境づくりアイデア
- 1 ペアにしてみる
- 2 活動を関連づける
- 3 可視化させる
- 4 少し上の目標を示す
- 5 教えすぎない
- 6 「教え合い」を「学び合い」に変える
- 7 なってもらいたい姿を自己評価の項目にする
- 8 よい行動をほめて,望む行動を取らせる
- 9 協働学習では,全員が書く
- 10 得点を与えてほめる
- 11 時間を示し,見通しを持たせる
- 12 生徒を動かす
- 13 指名なし発表にする
- 14 生徒に質問させる
- 15 「宿題」を「自学」にする
- 16 授業前に授業環境を整える
- 17 連絡係に明日の授業の内容を伝える
- Chapter2 イラストでよくわかる!4技能別アクティブ・ラーニングの指導アイデア
- [聞くことの指導]
- 1 聞いた内容を友達に伝える
- 2 聞いた内容を「英語で!」伝える
- 3 リスニングポイントを明示する
- [話すことの指導]
- 4 同じ質問を相手に投げかける
- 5 スモールステップであいづちを打たせる
- 6 答えたら1文付け足すQAAにする
- 7 先生がYes, I do.と答えそうな質問をしてみる
- [読むことの指導]
- 8 2度目は,友達の顔を見ながら言ってみる
- 9 場面設定やBGM音読で,臨場感のある雰囲気をつくる
- 10 音読はだんだん生徒だけで読ませる
- 11 黙読には読む目的を持たせる
- [書くことの指導]
- 12 書く必然性を持たせる場面を設定する
- 13 「最初は日本語,次に英語」の2段階で成功に導く
- 14 変化技を使う(嘘つき英作文)
- 15 協働的に書くライティングリレー
- コラム@ これからの英語授業
- Chapter3 アクティブ・ラーニングが成功する場面指導のアイデア
- 1 板書を写す場面
- 2 発表の場面
- 3 プリント学習の場面
- 4 文法指導の場面
- 5 音読指導の場面
- 6 内容理解の場面
- 7 単語指導の場面
- 8 テスト返却の場面
- コラムA 振り返りの仕方
- Chapter4 習得・活用・探究場面で使える!アクティブ・ラーニングの活動アイデア
- [習得の場面]
- 1 音読のできる生徒を育てる活動
- 2 単語が書ける生徒を育てる活動
- 3 英会話を習得する生徒を育てる活動
- 4 習得型を目指す「文法指導」のアクティブ・ラーニング
- [活用の場面]
- 5 すらすら英会話の活用形QAA
- 6 習った英語を使わせる活動
- 7 4人1組での英会話活動English Salon
- 8 4人1組でのクイズ合戦Quiz Salon
- 9 絵を説明するPicture Telling
- 10 感想やコメント・質問を書く活動
- 11 あるものを説明するマジカルクイズ
- 12 絵から間違いを探して伝える間違い探し
- 13 ロールプレイで英語を駆使する即興スキット
- 14 英英辞典の逆をするワードパズル
- 15 スピーチ後に質問するスピーチQA
- [探究の場面]
- 16 協働学習で行う教科書の読み取り
- 17 英語で書く「対話文」の読み取り
- 18 英語での質問づくり
- 19 英英辞典を読み合う活動
- 20 グループで作成する意見文
- コラムB 今までの授業は否定しない!
- コラムC 学習課題を考える
- Chapter5 英語授業でのアクティブ・ラーニングQ&A
- Q1 アクティブ・ラーニングの授業を通して,生徒にどんな力をつければいいでしょうか。
- Q2 アクティブ・ラーニング型の授業をしたいと思いますが,どのようにしたらいいのでしょうか。
- Q3 グループ活動を取り入れ,協働的な学習を行う場合,留意すべき点は何でしょうか。
- Q4 協働的なグループ学習で全員が活動するにはどのようにしたらいいでしょうか。
- Q5 教師主導の一斉授業とグループ学習とでは,どう違うのですか。また,どんな良い点があるのですか。
- Q6 生徒に協働的な「学び合い」をさせたいと思います。ポイントは何でしょうか。
- Q7 ペアや4人1組のグループの編成の仕方はどのようにすればいいでしょうか。
- Q8 学力の3要素とは何でしょうか。また,英語授業との関連は?
- Q9 黙りこんでしまうペアがいる場合は,どのように指導すればいいでしょうか。
- Q10 協働学習ではどのような課題を設定すればいいでしょうか。
- Q11 アクティブ・ラーニングで大切な「主体性」。「自主的」とは,どう違うのですか。
- Q12 主体的な学習で大切な「目標」と「振り返り」はどのように指導したらいいのでしょうか。
- おわりに
はじめに
「アクティブ・ラーニング」を,流行で終わらせてはいけない。
私は強く,そう感じます。
よく英語の先生から次のような発言が聞かれます。
「アクティブ・ラーニングって言うけど,英語授業自体がアクティブだから」
「今までもアクティブにやってきているのに,今更…」
「アクティブでない英語の授業って,ありえない!」
果たして,本当にそうでしょうか。
私は,このような発言にハテナ(?)を感じるのです。
アクティブ・ラーニングの本質って何でしょうか。
単にアクティブに学んでいればそれでいいのでしょうか。
今までと同じで本当にいいのでしょうか。
なぜ? アクティブ・ラーニングなのでしょうか。
そういった背景や本質を知らずにして,アクティブ・ラーニングは語れません。
教育には不易と流行があります。
そして,流行の中でも,「追いかけてよい流行」と「追いかける価値のない流行」の2つがあります。
アクティブ・ラーニングは,当然,私は「追いかけてよい流行」と考えます。
いや,追いかけなくてはいけないテーマだと考えています。
流行は,日常になった時点で,流行ではなくなります。
きっと数年後には,この流行は,流行ではなくなっているでしょう。
つまり,今こそ意図的にアクティブ・ラーニング型の授業を行うのです。
そうすれば,それが自然な授業の型となり,敢えてアクティブ・ラーニングと言わずとも,アクティブ・ラーニングの授業が自然とできる状態になっていることでしょう。
だからこそ,この早い時期に,今こそ,アクティブ・ラーニング型の授業を研究し,実践していくことは“必須”だと考えるのです。
流行である,今しかないのです。
そして数年後には,また目に見えない,新しい課題が,必ずやってきます。
とりあえず,最先端の授業を身につけておくのです。
さて,私は何事もシンプルに考えるようにしています。アクティブ・ラーニングのポイントは,次の2つだと私は考えます。
1つ目は
「主体的・能動的・創造的なアクティブ・ラーナーを育てること」
です。
これが第1点目です。
キーワードは,「主体的」です。
生徒が「主体的に」学習しているかが,とても重要になります。
だからこそ,「単にアクティブに学習していればよいというのではない」というのは,そういう意味なのです。
生徒が「主体的に」学習しているかどうかを見届けることが,大事なポイントなのです。
授業中,観察してみると,もしかしたら生徒の中には,“やらされ感”の状態で,仕方なく英語を勉強している生徒もいるのではないでしょうか。
それらは表情を見ればわかります。
1人でも多くの主体的な学習ラーナーを育てていくことが,アクティブ・ラーニングの本質の1つです。
2つ目は
「仲間とともに課題を解決する協働的な態度の育成」
です。
これが2点目です。
仲間とともに課題を解決する態度と方法を学ばせます。
「教育課程企画特別部会 論点整理」(平成27年8月)では,次期学習指導要領をにらみ,次のように言っています。
将来の変化を予測することが困難な時代を前に,子供たちには,現在を未来に向けて,自らの人生をどのように拓いていくことが求められているのか。また,自らの生涯を生き抜く力を培っていくことが問われる中,新しい時代を生きる子供たちに,学校教育は何を準備しなければならないのか。(「教育課程企画特別部会 論点整理」p.1より)
将来の変化を予測することが困難な時代に,学校教育は何を準備(=指導)してかなくてはいけないのか…。これが,アクティブ・ラーニングの考え方の基になります。
また,その新しい時代については,次のように補足説明しています。
また,グローバル化や情報化が進展する社会の中では,多様な主体が速いスピードで相互に影響し合い,一つの出来事が広範囲かつ複雑に伝播し,先を見通すことがますます難しくなってきている。子供たちが将来就くことになる職業の在り方についても,技術革新等の影響により大きく変化することになると予測されている。
(「教育課程企画特別部会 論点整理」p.1より)
ここでは,「新しい時代を生きる子供たちに,学校教育は何を準備しなければならないのか」「先を見通すことがますます難しくなってきている時代へ,子供たちにどんな力,どんな能力を備えさせなくてはいけないのか」という2つの“課題”が見え隠れしています。
つまり,「物事を主体的に考え,個人プレーではなく,仲間とともに協力して課題を解決しようとする人物」を新しい時代は求めているのです。
よって,学校教育においても,意図的に仲間ととも課題を解決する場面を授業内に設け,協働的な課題解決,チームとして動ける人材を育てていく必要性があるのです。
だからこその「学び合い」でもありますし,「協働学習」でもあるのです。
それが,アクティブ・ラーニングなのです。
このようなアクティブ・ラーニングの考え方の背景が理解できれば,今までの英語授業のどこを変えればいいのか,また,変えなくてもよいのはどこか…が見えてきます。
本書では,「アクティブ・ラーニングのアイデア集」として,今までの授業を振り返りつつ,アクティブ・ラーニングの視点に立った授業づくりを提案し,生徒が少しでも自発的になるようなヒントを伝えられたらと思います。
2016年10月 /瀧沢 広人
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