- はじめに
- 第1章 言語活動を充実させるためのポイント
- 1 なぜ数学の授業で言語活動を充実させるのか―考えるポイント
- 1 「言語活動の充実」の意図と経緯
- @数学の授業における「言語活動の充実」の意図
- A「言語活動の充実」が取り上げられるようになった経緯
- 2 「表現」の2つの意味とその変化
- 2 どのように言語活動を充実させるのか―指導のための10のポイント
- 1 教師が明確な意図並びに学習指導計画をもつ
- 2 生徒に言語活動の必要性,必然性を感じさせる
- 3 言語活動を「事実・手続き」「根拠」「着想」の3つの柱をもとに考える
- 4 言語活動を支えるものとしての「て・め・あたま」を意識する
- 5 書くことと話すこと,そして表現することを訓練する
- 6 3つの観点から授業のまとめを準備する
- 7 授業と評価の一体化を図る―評価問題の作成とその解答類型
- 8 レポート作成を利用する
- 9 言語活動を支える学習集団をつくる
- 10 教師が自分の授業を振り返る―ビデオの活用
- 引用・参考文献
- 第2章 言語活動プラン&評価問題
- 1年
- 負の数でもたし算ができるの?
- 正の数・負の数
- 文字の式でも計算ができるの?
- 文字の式
- 数量関係をどうやって調べたらいい?
- 比例・反比例
- 作図の手順を言語表現してみると?
- 平面図形
- 母への言い訳を考えよう
- 資料の散らばりと代表値
- 長期休暇での自由研究課題
- レポート作成を利用した言語活動
- 2年
- 多様な方法は連立方程式に結び付いている?
- 連立方程式
- なぜ一次関数のグラフは直線といえるの?
- 一次関数
- その補助線は何?
- 図形の性質と証明
- 「同様に確からしい」を意識しよう
- 確率
- 任意の追究課題レポート
- レポート作成を利用した言語活動
- 3年
- 平方根表の秘密を発見しよう
- 平方根
- 学習Mapを作成しよう
- 二次方程式
- 既習の確認から学習の目標,見通しをもとう
- 関数y=ax2
- 円を等分した点を結ぶ対角線でできる角を追究しよう
- 円の性質
- ピタゴラスの発見を追体験しよう
- 三平方の定理
- 三平方の定理の証明を調べ,分析しよう
- レポート作成を利用した言語活動
はじめに
「不易と流行」という言葉がある。平成8年の中央教育審議会答申において用いられ,まさしく流行した。一方,「言語活動の充実」という言葉は,平成20年の中央教育審議会答申から用いられた言葉である。「言語活動の充実」は,一時の流行ではなく,不易となるべきであると願っている。
次の学習指導要領に向けての会議報告の中では,「言語活動の充実」は「一定の成果は得られつつある」「一層の浸透や具体化を図る必要がある」とされている。このことは,新しい学習指導要領でも「言語活動の充実」が継続して流行していくのではなく,不易なものとして中学校数学の指導に明確に位置付け,実践されていくべきものと解釈したい。
学校現場では,数学的活動を重視した,生徒主体の授業に取り組む実践が多くなっている。しかし,自分の授業の「言語活動の充実」について,
・小集団(ペアやグループ)で生徒が話し合う場面を設定したが,生徒に任せたままでよいのか,教師は手立てとして何をすべきなのか
・「友達の説明を聞いてよくわかった」と遅れがちな生徒が感想を書いてくれたが,単に早くできた生徒が教え込んでいるだけではないのか
・授業では,生徒が盛り上がり,活発に議論していたが,授業の目的を達成しただろうか,生徒はこの活動から学んだだろうか
・生徒の言語活動を充実させ,よりよい数学の授業を提供するために,授業前,授業中,授業後,教師は何をすべきなのか
などと自問自答している数学教師は多いのではないだろうか。
そのような先生方と一緒に,よりよい「言語活動の充実」をめざした数学の授業を考えようというのが,本書の意図するところである。
そこで,本書は,第1章「言語活動を充実させるためのポイント」,第2章「言語活動プラン&評価問題」の2章構成とした。
第1章では,「言語活動の充実」を考えるポイントして,まず,その経緯を簡単に振り返る。ここでは,もっと詳しく知りたい,深めるために原典を読みたいという先生方に役立つよう,できるだけ引用文献がわかるように心がけた。次に,指導のためのポイントとして,10項目を提案する。10項目は,授業の計画の段階から,授業中,授業後の生徒への評価問題,教師の自己評価・研鑚までを取り上げる。
第2章では,1〜3年まで学年ごとに授業例を示す。「言語活動の充実」といっても,特別な教材を準備するものではなく,日々の授業で実践すべきものという考えから,授業例としていくつかは,教科書通りともいえる問題も取り上げる。授業例では,
授業の目標 :学習指導案などにおいて示される授業の目標
教材について:授業の主問題について,授業で意図する数学的活動,授業展開例で示し切れない部分の説明など
言語活動充実のポイント:第1章の10項目との関連,授業を行うときの「言語活動の充実」からの留意点など
授業展開例 :T−S形式で,授業場面の切り取り
評価問題 :このような評価問題を出題したいという例 内容は,評価問題,出題の意図,解答類型・評価基準
を示す。評価問題では,授業を受けての評価問題という立場から,記述式ばかりでなく,短答や記号選択の問題も示す。
これらは,「言語活動の充実」による数学の授業を展開するための1つの提案である。だから,ぜひ,批判的に読み,自分ならこうすると考え,目の前の生徒たちに実践していただきたい。そして,先生方の授業実践の一助となれば幸いである。
末筆ながら,この本に至るまでご指導いただいた先生方,先輩,仲間,そして,生徒たちに感謝申し上げます。また,出版に際し,ご尽力いただいた明治図書出版の赤木恭平氏にお礼申し上げます。
/鈴木 明裕
-
- 明治図書
- 言語活動の具体例がわかりやすかった。2017/8/3050代・中学校数学教師
- 「どうしてこう考えたの?」と授業で考えさせていることを、どう評価するか、参考になりました。2016/12/2450代・中学校教員
- 評価の在り方についての考える良い機会となりました。2016/11/2640代・中学校教員