- はじめに
- Chapter1 教師力を磨く!基礎・基本の指導技術
- 1 声は,音読でつくる
- 2 聞き合える教室づくりこそすべての学びの土台
- 3 発言のルールを段階的に教えよう
- 4 ノートは思考のツールとなるように
- 5 音読・朗読で授業開きをしよう
- コラム クラスの雰囲気がいいのって学級経営がいいから?
- Chapter2 授業力を磨く!話すこと・聞くことの指導技術
- 6 スピーチは事前の個別指導で花開く
- 7 対話を言語活動の中心に位置づける
- 8 全体での話し合いで練り上げるコツ
- 9 プレゼンテーションで効果的な構成と見せ方を教える
- 10 ポスターセッションは聞き手重視で
- 11 ディベートはテーマが命
- コラム 言語活動って何?
- Chapter3 授業力を磨く!書くことの指導技術
- 12 日記(生活作文)で描写力を付ける
- 13 物語の創作は読みとの関連指導で
- 14 詩の創作は形式に合わせてつくらせる
- 15 行事作文は読み合う中で力を伸ばす
- 16 レポートは引用と要約の仕方を指導する
- 17 観察記録文は他教科と結びつけて指導する
- 18 意見文は主張・根拠・理由づけを意識して
- 19 感想文は読書単元と結びつけて教える
- コラム 子どもが書けないのは誰のせい?
- Chapter4 授業力を磨く!読むことの指導技術
- 物語文
- 20 「おおきなかぶ」で人物を教える
- 21 「スイミー」で人物像に迫る
- 22 「お手紙」で中心人物をつかませる
- 23 「モチモチの木」で人物の変容に迫る
- 24 「白いぼうし」でファンタジー構造発見
- 25 「一つの花」で場面の移り変わりをとらえる
- 26 「ごんぎつね」で人物と人物の関係をつかむ
- 27 「大造じいさんとガン」で情景描写の効果をとらえる
- 28 「わらぐつの中の神様」で伏線のおもしろさに気づかせる
- 29 「やまなし」で作品のテーマに迫る
- 30 「海の命」で人物のものの見方・考え方・感じ方をとらえる
- 説明文
- 31 「じどう車くらべ」で問いと答えの関係をつかむ
- 32 「たんぽぽのちえ」でまとまりの順序をとらえる
- 33 「すがたをかえる大豆」で事例の順序性をとらえる
- 34 「ありの行列」で三部構成をつかませる
- 35 「動いて,考えて,また動く」で双括型の効果をとらえる
- 36 「ウナギのなぞを追って」で要約の仕方をつかむ
- 37 「生き物は円柱形」で要旨をとらえる
- 38 「天気を予想する」で非連続型テキストの読みの方法を教える
- 39 「時計の時間と心の時間」で抽象と具体の関係をつかむ
- 詩
- 40 「おおきくなあれ」はリズムと反復に着目して内容に迫る
- 41 「わたしと小鳥とすずと」で語り手の思いをとらえる
- 42 「春のうた」は比べ読みで語り手の心情に迫る
- 43 「水平線」は類比と対比で象徴的表現をとらえる
- 44 「生きる」で作品のテーマをとらえる
- コラム 物語文で付けたい力って?
- コラム 説明文で付けたい力って?
- Chapter5 授業力を磨く!伝統的な言語文化・言語事項の指導技術
- 伝統的な言語文化
- 45 神話や昔話は語り口を中心に
- 46 短歌・俳句はリズムと心の動きで
- 47 古典は古からの言葉のつながりを意識する
- 言語事項
- 48 漢字(文字)は成り立ちと原則で覚える
- 49 語彙は行事や季節感を大切にしながら増やす
- 50 文法は読み・書き関連指導でつかませる
- コラム アクティブ・ラーニングをどう授業に生かせばいいの?
はじめに
「算数や理科は,何とかなるんですけど,国語がダメなんです」「子どももつまらないだろうなぁと思ってるのが顔を見ていればわかるんです。わたしもやってておもしろくないんです」最近,若い先生方が職場にたくさん入ってきます。どの先生もやる気に満ちています。でも,国語の授業となると,上に挙げたような声が思わずもれてくるのです。
若い先生たちが,教材研究をさぼっているわけではありません。指導書を隅から隅まで熟読して臨んでいます。それでもうまくいかないのです。なぜ国語の授業が,うまくいかないのでしょうか。
それは,教える内容が曖昧なのと,答えが一つにはなりにくく広がりがあるからです。2年生の算数で「かけ算」を教えます。2の段だったら「2×3=6」を「1あたり2が三つ分」というふうに理解させます。
国語ではどうでしょうか。例えば「お手紙」に出てくる「がまくんの心情」をとらえることがねらいだとしましょう。どの場面のどんな心情を扱えばよいのかがよくわかりません。最後の場面の「かえるくんからお手紙をもらったときのがまくんの気もち」と限定したとしても,「うれしい気もち」「しあわせな気もち」あと他に何を言わせればいいの? 何を言えれば正解なの?ということが,はっきりしないのです。当然何をどこまで理解させればいいのかが,明らかにされないまま授業に臨むということになります。
「きみの言っていることはすばらしいね」「あなたの意見もいいね」ほとんどの発言を受容しながら進んでいく授業が展開され,いったい今日の授業で子どもは何がわかったんだろう? どんな力を身に付けることができたのだろう?と不安になり手応えを感じられないまま授業を終えてしまうというのが,大方の現状なのだと思います。
今回わたしは,この本を手にしてくださった先生方が,子どもにどんな力をどのような方法でアプローチしていけば,どの子にも確かな「言葉の力」を育むことができるのか。教師の技や迫り方を,なるべく実際の授業をイメージできるように具体的に示しました。
とりわけ,いま話題になっている「アクティブ・ラーニング」も視野に入れながら,どう教師が働きかければ,子どもが主体的に動くのか,協働の学び合いが生み出せるのかを,「アクティブ・ラーニングのポイント」というコーナーを設けて,すぐに教室で試せるようにコンパクトにまとめてみました。
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「伝統的な言語文化」「国語の特質にかかわる事項」とすべての領域や事項を網羅しました。とくに,「読むこと」に至っては,1年から6年までの主要な教材を扱い,「言葉の力」の系統を踏まえた指導ができるように,ねらいを絞った指導計画や指導のポイントをわかりやすく解説しました。
本来一つの教材で,三つのことを教えたいところですが,今回は敢えて一つに焦点化しました。この教材で身に付ける力は,これだ!! そのためにこれをやるんだ!!ということが明確になるようにしたかったのです。
どれもわたしがいままでに試行錯誤しながら試し,手応えのあった実践ばかりです。最初からではなく,どの項目から取り組まれても大丈夫な構成になっています。まずは,やってみてください。教材の見方や子どもの見方が変わってくると思います。何より子どもの笑顔や真剣に考えるまなざしがいまよりももっと増えてくることでしょう。そうなったら,あなた自身も,国語の授業が楽しくなってくるはずです。
英語や道徳といった新しい施策が矢継ぎ早に現場に降りてきますが,なんと言っても国語の授業で身に付ける「言葉の力」は,あらゆる教科・領域の土台となるものです。言葉で考え,言葉で認識力をアップし,言葉で人間関係を豊かにしていく,そんな国語教室づくりをともにしていきましょう。
「言葉の力」を確実に身に付け,未来を自分の手で切り開いていける子が,ひとりでも多く巣立つこと,そして,国語の授業を愛する先生がひとりでも多く増えることを願ってやみません。
出版にあたり最後まで温かく見守ってくださった木山麻衣子氏に感謝申し上げます。
2017年1月 /藤田 伸一
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- 明治図書
- 教材研究や指導技術について詳しく知ることができました。2022/6/1930代・小学校教員