個別最適をつくる教室環境
多様な学びを創り出す「空間」リノベーション

個別最適をつくる教室環境多様な学びを創り出す「空間」リノベーション

好評2刷

新時代の「学ぶ場」をつくろう

一斉授業中心の学びを脱し、個別最適な学びの実現が求められる今、それを支える「教室」の在り方とは―。先進校の環境整備事例から、企業、教育委員会や国の取り組み、既存施設を生かし、工事を伴わずに“今”実現できるリノベーションのアイデアまでを網羅した1冊。


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PDF
ISBN:
978-4-18-247729-4
ジャンル:
教育学一般
刊行:
2刷
対象:
小・中・高
仕様:
A5判 144頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年6月3日

もくじ

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まえがき
Chapter1 「個別最適な学び」と日本の教室環境
150年間変わらなかった教室
オープンスペースがもたらしたもの
ICTによる教室環境の変化
教室環境と学習観
教室を『教える場』から『学ぶ場』に
個別最適な授業デザインに合わせた学びの環境の再構築
Column 中国の教室
Chapter2 先進事例に学ぶ「個別最適な学び」をつくる教室環境
01 「関係性」を育む教室
─学校法人茂来学園大日向小学校
02 子どもの主体的・創造的な学びを創る学習環境デザイン
─瀬戸SOLAN小学校
03 ICTをフル活用する学びに対応した教室環境
─立命館小学校
04 学びや交流が生まれる「仕掛け」のある校舎
─ドルトン東京学園中等部・高等部
05 探究的で多様な学びに対応した学び舎
─広島県立広島叡智学園中学校・高等学校
06 教育委員会や国の取り組みの動向
─野中陽一
07 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を実現する「SUGOI部屋」
─東京学芸大学附属竹早小学校/株式会社内田洋行
08 新しい時代の学びを実現する空間づくり
─コクヨ株式会社
Chapter3 現場からはじめる教室環境・学習環境リノベーション
01 安心と利便性を向上する「児童生徒用デスク拡張」
02 安価でできる教室内の「個別学習ブース」
03 「一斉学習用スペース」と「ワークスペース」の組み合わせ
04 特別支援教室における自分の机以外の「学習スペース」
05 GIGAスクール構想に対応した「掲示物」による学習環境
06 廊下に机を置くだけの「個別学習スペース」
07 スキマ時間を有効活用できる「コンピュータ教室のパソコン再利用・分散配置」
08 プリントアウト&スキャンもできる「印刷スペース」
09 壁前スペースを有効活用した「プレゼンブース」
10 グループ学習や個別学習に対応した「空き教室改装」
11 グループ学習や個別学習に対応した「コンピュータ教室改装」
12 コンピュータ教室が生まれ変わる「デジタルラボ・ファブ」
13 グループ学習や個別学習に対応した「学校図書館内スペース」
14 他教科等のグループ学習・個別学習での特別教室活用
15 リモート授業に対応した教室
16 空きスペースでつくる「簡易収録スタジオ」「映像収録用スペース」
17 簡易防音の機能を持たせた「録音ブース」
18 児童生徒と一緒に考え・つくる教室環境
Column 学習環境構成について学ぶ教員養成・研修
あとがき
執筆者一覧

まえがき

 学校は,教室と廊下それ以外の諸室で構成されているものという固定観念から脱し,「学校施設全体を学びの場」として捉え直す。


 学校施設も,画一的・固定的な姿から脱し,時代の変化,社会的な課題に対応していく視点(可変性)をもつ。


 これらは,文部科学省が令和4年3月30日に公表した「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」最終報告に盛り込まれた文章です。2021年2月15日〜2022年3月4日の間に10回開催された「新しい時代の学校施設検討部会」に委員として参加して,報告書作成にも関わりましたが,正直なところ,これらの文章が最後まで残ったことに驚いています。

 私自身,院生時代に,緒川小学校,池田小学校などのオープンスクールの研究発表会に参加し,1990年頃には,オープンスペースを有する小学校に勤務した経験があります。

 一斉授業,一斉学習に批判的だった加藤幸次氏(加藤幸次(1982)『個別化教育入門』教育開発研究所)の個別化個性化教育にも強い影響を受けました。令和の日本型学校教育で加藤幸次氏の主張が個別最適な学びとして蘇ったこと,氏が主張していたオープンスペースによる学習空間の拡張に限界があることの両方がこの文部科学省の検討部会で議論されたことも感慨深いことです。

 また,パソコン通信の時代に,ネットワークに対応していないコンピュータでしたが,子どもたちがいつでもどこでも使えるように校内のオープンスペースに分散配置し,情報活用能力の育成を試みたこともありました。情報技術の進歩とGIGAスクール構想によって,当時は想像もできなかった情報環境が整備され,子どもたち自身が学びを拡張することが可能になったことに時代の変化を感じています。

 しかしながら,多くの学校では校舎や教室はそのままであり,子どもたちの学びを拡張し,学びを促す空間に変容しているかどうかは疑問です。

 令和の日本型学校教育では,「誰一人取り残さない」ことが強調され,GIGAスクール構想においても「Global and Innovation Gateway for All」のAll「すべての児童・生徒に」にその重要性が込められ,個別最適な学びを実現する場としての学校,教室の実現が求められています。

 本書では,学校施設,教室環境を固定的に捉えるのではなく,カリキュラムや授業の変化に合わせて,学習環境として捉え直し,再構成していくことを模索するためのアイデアやその実現のための事例を示すことを意図しています。

 Chapter1では,これまでの日本の学校,教室の在り方を振り返りながら,個別最適な学びを実現する環境の在り方を整理しました。

 Chapter2では,新築等により,個別最適な学びに対応し,学校全体を学びの場とする,教室の在り方を根本的に見直す,といった先進的な学校環境を整備した事例や学校施設に関わる企業のビジョン,教育委員会や国の取り組み等を紹介しています。

 Chapter3では,Chapter2の先進事例の考え方を参考にしながら,報告書のB:構造には手を加えず既存施設を生かして空間を再構成するパターンやC:既存施設をそのまま生かすパターンの事例やアイデアを取り上げています。現状の学校施設,教室環境を工夫して,個別最適な学びと協働的な学びの場(空間)を主体的に選択して活用できる現実的な(工事を伴わない)教室環境,学習環境に変える,今できるリノベーションのアイデアです。そして,これまであまり行われてこなかった学習環境,教室環境づくりに関する教員養成,教員研修の在り方についても提言しています。


 ますます困難になるであろうと言われている未来を生きる子どもたちのために,新しい時代の学びを実現する教室環境の在り方を考える材料になれば幸いです。


   /野中 陽一

著者紹介

野中 陽一(のなか よういち)著書を検索»

横浜市立小学校教諭,和歌山大学助教授等を経て,横浜国立大学大学院教育学研究科教授。文部科学省「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」委員,「新しい時代の学校施設検討部会」委員,CO-SHAアドバイザー等を歴任。専門は教育工学。教室のICT環境,教育の情報化の普及プロセス,国際比較(英国,中国)等の研究に携わる。

豊田 充崇(とよだ みちたか)著書を検索»

元中学校教諭。和歌山大学講師・准教授を経て,現在は,和歌山大学教職大学院教授(ICT・プログラミング教育支援室長・次世代教育推進室長を兼任)。和歌山県教育DXアドバイザー,和歌山市教育委員会客員指導主事等を務め常に教育現場に足を運んでいる。専門分野は,情報教育(情報活用能力・情報モラル・依存症対応・プログラミング教育等を含む)。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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