- まえがき
- 第1章 アクティブ・ラーニングの混乱
- 1 アクティブ・ラーニングに取り組んでいる学校が75%?!
- 2 アクティブ・ラーニングの定義
- 3 不思議な行政の対応
- COLUMN 何でもいいけど,何でもよくない
- 第2章 何のためのアクティブ・ラーニング?
- 1 少子高齢化社会
- 2 終身雇用が崩れると
- 3 人工知能・ロボット
- 4 アクティブ・ラーニングは大学教育発か?
- 5 社会人基礎力
- 6 当たり前の能力
- 7 学校は人材養成機関か?
- 8 責任放棄
- COLUMN 大人にする
- 第3章 「大人にするための教育」とは?
- 1 「頻度・期間」はどれぐらいが良いのか
- 2 アクティブ・ラーニングの「定義」の変化
- 3 「任せる」ことが成長を生む
- 4 「協働」のポイント
- 5 アクティブ・ラーニングの判別法
- COLUMN 2タイプの教師
- 第4章 様々なアクティブ・ラーニング
- 1 サンデル教授の白熱授業
- 2 子どもという子どもは一人もいません
- 3 根拠は?
- 4 自分で考えて,それから相談する
- 5 ジグソー法の課題は「手間・頻度」
- 6 大人にするのは「特定の」教科?
- 7 レールの上の「主体的」ではいけない
- 8 「な〜んちゃってアクティブ・ラーニング」の見分け方
- 9 アクティブ・ラーニングで必要な「教師の手立て」
- COLUMN 子どもと大人は違う?
- 第5章 「答えを創造する能力」を育てるアクティブ・ラーニング
- 1 ヴィジョン
- 2 「ヴィジョン」を育てるアクティブ・ラーニング
- 3 天才
- 4 「天才」を育てるアクティブ・ラーニング
- 5 諦めない
- 6 「諦めない子ども」を育てるアクティブ・ラーニング
- 7 「一人一人のレベル」の創造
- COLUMN 何人ぐらい必要ですか
- 第6章 倫理と認知の融合
- 1 残る仕事
- 2 人付き合いは仕事から
- 3 将来を保証する学習
- 4 頭のいい人
- 5 能力の高くない子の倫理と認知の融合
- 6 ソーシャルスキルの低い子
- COLUMN 知徳体の融合
- 第7章 汎用的能力をつける! アクティブ・ラーニング教科指導の実践事例
- 1 アクティブ・ラーニングの始め方
- 2 課題づくり
- 3 初期の変化
- 4 普通の子ども
- 5 出来る子どもの成長
- 6 人間関係の広げ方
- 7 異学年のアクティブ・ラーニング
- 8 その人なりの対応を理解する
- 9 無理な子
- 10 ICTとアクティブ・ラーニング
- 11 評価の仕方
- 12 難しい議論
- 13 たった一つの仕掛け
- 14 選んで下さい
- COLUMN パラダイス
- あとがき
まえがき
ある人はアクティブ・ラーニングに関わる現状を「祭り」と表現しました。一昨年までは全くなかった「アクティブ・ラーニング」という言葉を銘打った書籍や研修が雨後の竹の子のように生まれています。その様子は総合的な学習の時間が導入される前の状態に似ています。
祭りは活気づきますが,やがて終わります。総合的な学習の時間の導入時も,最初はそれを銘打った書籍や研修が雨後の竹の子のように生まれました。みんな不安だったのです。書籍や研修では先進的な実践が紹介されました。そして,実際に総合的な学習の時間が始まりました。
始まりましたが,先進的な実践を続けるのは大変です。研究会のために年に1回実践するのならば可能でも,毎週実践するのは無理です。多くの教師は恐る恐る今まで通りの授業をし始めました。しかし,それを非難する人はいません。なぜなら周りの人も同じような人なのです。市町村の教育行政もそれを是認します。なぜなら,多くの教師はそれが限界であることを知っているからです。やがて教師は気づきます。「な〜んだ,今のままでいいんだ」と。
やがて,書店から総合的な学習の時間の書籍は少なくなります。最後には安直に使えるノウハウ本が残りましたが,それすらもなくなります。そして,研究会もなくなります。必要ないからです。
アクティブ・ラーニングも同じような過程を経ると思います。今までより多少話し合い活動を取り入れたり,ペア学習・班学習を取り入れたりすれば,アクティブ・ラーニングだと市町村レベルではなるでしょう。多くの教師,市町村レベルの行政では,何もやりたくないのですから。
私はそれを何とかしたいと願っています。なぜならば,それでは子どもたちの未来が危ういのです。
最近の学習指導要領,そして,その背景にある中央教育審議会の答申は,一貫して子どもを社会で生きられる大人にしようとしています。総合的な学習の時間も同じです。ところが,先に述べたように形骸化しました。形骸化しましたが,何とかなりました。大人にすることを小学校は中学校に丸投げし,中学校は高校に丸投げし,高校は大学や企業に丸投げし,大学は企業に丸投げしても,企業が生徒・学生を大人にしてくれました。
しかし今は,企業は生徒・学生を大人にしてくれません。大人になっていない生徒・学生は雇わないか,使い捨ての非正規として雇います。正規採用となった生徒・学生も,学校と同じように甘えられない企業を数年で辞め,非正規雇用になります。企業は生徒・学生を大人にする義務はありません。昔は人手不足でした。だから,企業は義務はなくても,大人にする必要性があったのです。しかし,今は違います。
企業が「大人にするのは我々の義務ではない」と至極当然の主張をし始めたのです。もう学校は丸投げできないのです。小学校も含めて,中学校,高校,大学が大人にする義務があるのです。本書では,大人にするにはどうしたらいいかという視点で一貫して書きました。
/西川 純
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- 明治図書
- 『学び合い』を校内で広めるのに役立った。2021/6/2650代・小学校教員
- 汎用的能力のことが改めてよく分かりました。2016/12/2350代・中学校管理職
- 特別支援についてのことが印象に残りました。2016/12/950代・中学校管理職
- 今なぜアクティブ・ラーニングが必要とされているのか、その切迫した理由が一読でわかる名作である。2016/10/1640代教員
- 以前から「アクティブ・ラーニング」の書物を読んでいて、今回の本を読むと、内容が集約されていることが分かった。2016/10/1650代・中学校数学