- はじめに
- 第1章 4〜7月「学級開き・学級づくり」期
- ユニバーサルデザインで変える実践ポイント
- 1 写真を使って安心できる入学式を演出する
- 2 朝の時間で子どもの心と体をつかむ
- 3 不安に寄り添って,子どもの安全基地になる
- 4 「あいうえお」で反応上手を育てる
- 5 人とつながる挨拶習慣を積み重ねよう
- 6 読み聞かせで「じっくり聞く」時間をつくる
- 7 「演じる」という思考の技を身につける
- 8 パペットで,問題から学べるクラスにする
- 9 4月の表現活動で,子どもをまるごと受け入れる
- 10 子どもの変化の兆しを褒める
- 11 教室環境は子どもの立場から考える
- 12 「やり方掲示物」で安心感を生む
- 13 その子のよさをみんなで共有する
- 14 学級通信で保護者からの応援を増やす
- 15 ルールづくりで,自ら安心,安全を手に入れる
- 16 当番の手順を見える化する
- 17 スモールステップで給食を楽しめるようにする
- 18 教室の役割は子どもたち自身が決める
- 19 入学前の経験を聞き,当番の仕事をつくる
- 20 書くことを限定し,ノートの使い方に慣れる
- 21 学習ゲームでいつのまにか学んでいるようにする
- 22 一緒に遊び,ルールとマナーを教える
- 23 遊びの中で,人や物事とのつながりを持つ
- 24 配付物はしまうまで見届ける
- 25 忘れない工夫を一緒に考えて自信をつける
- 26 絵本コーナーで,読書のタネまきをする
- 27 作文で「感動」をキャッチする目を育てる
- 28 長期休みには,見通しが持てるシートを提供する
- 29 仕事術:「子ども自慢」でよい情報を集める
- 30 仕事術:提出物には出席番号を書く
- 31 仕事術:休み時間は,カメラを持ち歩こう
- 32 仕事術:提出物は目印と思いやりですっきり集める
- 33 仕事術:1学期の所見作成のポイント
- 子どものための「学びやすさ・生活のしやすさ」チェックリスト@
- 第2章 8〜11月「学級活性化」期
- ユニバーサルデザインで変える実践ポイント
- 1 関わり方を教えて,あたたかい雰囲気をつくる
- 2 協働学習で仲間と学ぶよさを実感する
- 3 教師の出番を見極め,見守る
- 4 保護者参加型通信で双方向のやりとりをする
- 5 「なぜだろう?」を大切に,好奇心を伸ばす
- 6 行事で自信と絆を育む
- 7 話し合いで調整する力をつけよう
- 8 行事期間こそ,「日常」を大切にする
- 9 「キーワード」と「決めぜりふ」で活動を価値づける
- 10 ポジティブな言葉選びができる子にしよう
- 11 トラブルは「事実確認」→「思い」で解決する
- 12 仕事術:効果的な「選択」で時間とエネルギーを生み出す
- 13 仕事術:指導記録から,「次の一手」を考える
- 14 仕事術:「働きやすさ」と「教育効果」の二軸で考える
- 15 仕事術:2学期の所見作成のポイント
- 子どものための「学びやすさ・生活のしやすさ」チェックリストA
- 第3章 12〜3月「学級じまい」期
- ユニバーサルデザインで変える実践ポイント
- 1 自己開示ができる環境を整える
- 2 子ども同士で問題を解決できる力を育む
- 3 エポックメイキングを紹介する
- 4 後輩のお世話で自分の成長を感じる
- 5 上学年の活動に注目して,長期の見通しを持つ
- 6 子どもの声で,年度末パーティーを主体的につくろう
- 7 リハーサルで年度末パーティーを成功させる
- 8 「強み」を生かし合えるプロジェクトで「自信」を持たせる
- 9 次につなげる「手離す」指導をはじめる
- 10 仕事術:次につながる「引き継ぎ」をしよう
- 11 仕事術:「明日はこれをやってみよう」で仕事を終える
- 12 仕事術:3学期の所見作成のポイント
- 子どものための「学びやすさ・生活のしやすさ」チェックリストB
- おわりに
はじめに
「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)」によれば,「学習の個性化」において,次のことが必要であると提起されています。「子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで,子供自身が学習が最適となるよう調整する」。これは,教師が提供する「多様な支援」を単に享受するだけではなく,「子供自身」がそれらを選択し,調整できるようにしていくことが求められているということです。私たちは,これまで子どもたちを未熟な存在として捉え,特に子どもの苦手な分野においては支援の対象としてのみ捉えることが多かったのではないでしょうか。ですから,「いい支援をして『わかること・できること』を保障する」ことに重点をおいてきました。もちろん教師のサポートによって学力をつけることはこれからも重要なことです。しかし,それだけではなく,教師が一人ひとりの学習者に応じた適切な学習課題や機会を提供することで,やがて自分の学習を自分自身で最適に調整できるような優れた学習者になれるようにも,子どもたちを指導していきましょうということでしょう。
もちろん,そうした子どもたちを結果的に育ててきた教室はこれまでもあったはずです。しかし,はじめから「子供自身が学習が最適となるよう調整する」力をつけることもゴールとした教育は,多くはなかったのではないでしょうか。それだけに,私たちはその具体を想像することができません。
そこで,私たちが参考にしたのがUDL(学びのユニバーサルデザイン)の考え方です。UDLは米国のCASTという教育研究機関が開発した教育の概念的な枠組みです。バーンズ亀山静子氏は,UDLは「学びの主体を学習者本人に置き,障害の有無にかかわらず,すべての子どもが自己調整しながら学習で伸びを示し,学びのエキスパートになることを目的としている」と言います。
また,UDL研究会によれば,UDLの特長は,次のように「オプション」「代替手段」「段階的支援」「調節可能」という4つのキーワードで説明できると言います。
・「オプション」……学ぶための教材や環境の選択肢が用意されている。
・「代替手段」……授業の目的を達成するために用意した他の選択肢が用意されている。
・「段階的支援」(scaffolding)……提供した支援を必要に応じて減らしていくことであり,それは「調節可能」である。
先の答申の理念と一致するのは明らかでしょう。
ところで,UDLの考え方はこれまで学習指導で多く活用されてきました。国内的に見ても,UDLの考え方で実践されてきたものは学習指導に限られています。UDLの考え方が学級経営にも活用できることを指摘したのは,拙著『子どもの笑顔を取り戻す!「むずかしい学級」ビルドアップガイド』(明治図書)くらいです。しかし,これまで指摘されてきた通り,教科指導は充実した学級経営を前提に成立するものです。もしも,UDLの考え方が「個別最適な学び」と符合する面が大きいのなら,UDLの考え方を学級経営において具現することによって,「個別最適な学び」もまた具現できるはずです。
本書では,UDLの考え方で学級経営を行う際の方略と効果,範囲,使うタイミングなどをできるだけ具体的に紹介しました。本書が,多くの教師の手に届き,子どもたちが学びにアクセスする一助になれば幸いです。
/山田 洋一
【出典】
・「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)」【概要】2021
・バーンズ亀山静子「『個別最適化な学び』とUDL(学びのユニバーサルデザイン)」『授業づくりネットワーク 個別最適な学び』No.40,学事出版,2021
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- 明治図書
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