- 第1章 授業ですぐに使える指導技術をたくさん身につけよう
- 第2章 算数授業 すぐに使える指導技術100
- 1 問題提示
- 001 図形を隠して想像させる
- (5年「四角形と三角形の面積」)
- 002 図形を隠して焦点化する
- (6年「拡大図と縮図」)
- 003 前時の復習問題の中に未習の問題を混ぜる
- (4年「わり算の筆算(1)」)
- 004 教師が着目させたいことを得点化する
- (2年「長方形と正方形」)
- 005 予想外を仕組む
- (3年「時こくと時間のもとめ方」)
- 006 基準とする量を曖昧にする
- (5年「分数と小数,整数の関係」)
- 007 身の回りの事象を扱い,「よさ」を見つけさせる
- (4年「がい数の使い方と表し方」)
- 008 解くことができない状態にする
- (5年「偶数と奇数,倍数と約数」)
- 009 □を使って,子どもに問題を設定させる
- (5年「分数のたし算とひき算」)
- 010 子どもに気づかせたいことを教材に仕込む
- (1年「わかりやすくせいりしよう」)
- 011 「間違い作図」を修正させる
- (4年「垂直,平行と四角形」)
- 2 自力解決
- 012 机間指導中の言葉かけで多様な考えを引き出す
- (2年「かけ算(2)」)
- 013 子どもの「○○だったらできる」を認める
- (6年「対称な図形」)
- 014 「計算の仕方を考えよう」をやめる
- (3年「かけ算の筆算(1)」)
- 015 1人で乗り越えてほしいことを焦点化する
- (3年「かけ算の筆算(2)」)
- 016 問題解決に使えそうな既習の知識や考え方を探す
- (6年「分数のわり算」)
- 017 自分で問題を選択できる環境を用意する
- (5年「正多角形と円周の長さ」)
- 3 話し合い
- 018 誤答やつまずきを取り上げる
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 019 自分のおすすめの解法紹介を行う
- (5年「四角形と三角形の面積」)
- 020 サイレント発表で問題と図と式をつなげる
- (5年「四角形と三角形の面積」)
- 021 リレー発表で説明をつなぐ
- (6年「分数のわり算」)
- 022 教師が間を取ることで,子どもが考える時間を生み出す
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 023 目的とゴールを明確にしてペアトークを行う
- (4年「小数のしくみ」)
- 024 教師の視線で子ども同士の話し合いをつなぐ
- (2年「たし算とひき算」)
- 025 教師の説明後,ペアで確認を行う
- (1年「かたちづくり」)
- 4 振り返り・まとめ
- 026 キーワードで短くまとめてから深める
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 027 一人ひとりとの対話で振り返る
- (6年「円の面積」)
- 028 板書で振り返る
- (4年「計算のきまり」)
- 029 授業の最後に発展させて,次の時間につなぐ
- (4年「大きい数のしくみ」)
- 030 授業の最後に発展させて,家庭学習につなぐ
- (5年「正多角形と円周の長さ」)
- 031 毎回同じ視点で振り返り,「学び方」を学ばせる
- (6年「角柱と円柱の体積」)
- 032 単元全体の振り返りをする
- (3年「小数」)
- 033 振り返りの観点をつくる
- (6年「分数のわり算」)
- 034 ビフォー&アフターでよさに気づかせる
- (1年「たしざん」)
- 035 大切だと感じた場面を共有してから振り返る
- (4年「角の大きさ」)
- 5 発問
- 036 発想の源を問う
- (3年「小数」)
- 037 困った気持ちを引き出す
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 038 子どもが難しいと感じることを全体に問う
- (5年「割合」)
- 039 友だちの発言の意味を問う
- (2年「かけ算(2)」)
- 040 感覚的に捉えていることを言語化させる
- (5年「正多角形と円周の長さ」)
- 041 練習問題に取り組むとき,学びが生きる言葉をかける
- (1年「ひきざん」)
- 042 何がわからないのかに焦点化する
- (6年「分数のわり算」)
- 043 ハンドサインで自分の立場を表現させる
- (6年「対称な図形」)
- 6 板書・ノート指導
- 044 数学的な見方・考え方を黒板に残す
- (3年「分数」)
- 045 子どもの感覚的な言葉を板書する
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 046 画用紙に書いて,自然に整理を促す
- (4年「わり算の筆算(1)」)
- 047 考えのつながりを矢印で可視化する
- (4年「わり算の筆算(1)」)
- 048 授業の活動や流れに応じて板書の構成を変える
- (5年「分数と小数,整数の関係」など)
- 049 子どもが板書する過程を見せる
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 050 子どもが板書する過程を見せない
- (2年「かけ算(2)」)
- 051 子どもの気づきや困りを吹き出しで可視化する
- (4年「角の大きさ」)
- 052 気づきや内言を書けるようにする
- (3年「円と球」)
- 053 友だちの考えを写すのではなく,生かして考えるノートにする
- (3年「わり算」)
- 7 テスト
- 054 採点基準や評定のルールの共通理解を図る
- (全学年)
- 055 レポートのルーブリックを子どもとつくる
- (4年「わり算の筆算(1)」)
- 056 テストの解き直しにタブレットを活用する
- (5年「直方体や立方体の体積」)
- 057 テストに向けての学び方を振り返らせる
- (6年「文字と式」)
- 058 オリジナル展開図づくりで空間感覚を見取る
- (5年「角柱と円柱」)
- 059 算数アートづくりと展覧会を行う
- (6年「対称な図形」)
- 8 教材・教具
- 060 図形の素地を養う―9マスパズル
- (1年「かたちあそび」)
- 061 学校生活を教材化する@―給食室の調理スピード
- (5年「単位量あたりの大きさ」)
- 062 学校生活を教材化するA―保健室の来室記録
- (4年「折れ線グラフと表」)
- 063 教室外で算数を活用する―伊能忠敬コンテスト
- (5年「平均」)
- 064 数の不思議さ美しさを探究する―九九表
- (5年「偶数と奇数,倍数と約数」)
- 065 数直線図をつくる過程をカードで示す―カード
- (5年「小数のかけ算」)
- 066 習熟を通して数の見方を広げる@―計算ピラミッド
- (6年「分数のかけ算」)
- 067 習熟を通して数の見方を広げるA―正方形の1辺の長さ
- (5年「小数のかけ算」)
- 9 1人1台端末
- 068 カメラ機能を使って,校内図形探し選手権を行う
- (4年「垂直,平行と四角形」)
- 069 ストップウォッチで時間という量の幅をつかませる
- (3年「時こくと時間のもとめ方」)
- 070 情報を限定して提出させる
- (5年「四角形と三角形の面積」)
- 071 ノートの見本を共有する
- (3年「たし算とひき算の筆算」)
- 072 振り返りを共有し,学び合う時間にする
- (6年)
- 073 算数アルバムをつくる@―授業編
- (1年「わかりやすくせいりしよう」)
- 074 算数アルバムをつくるA―日常編
- (2年「かけ算(1)」)
- 10 個別学習
- 075 授業の導入で本時のねらいを共有する
- (5年「小数のわり算」)
- 076 問題解決のための着眼点を言語化させる
- (3年「かけ算の筆算(1)」)
- 077 言語化された着眼点をICTで共有する
- (3年「かけ算の筆算(1)」)
- 078 問題を発展させる視点を示す
- (3年「かけ算の筆算(1)」)
- 079 子どもと子どもをつなげる
- (3年「小数」)
- 080 問題が解けない場合は,教師と一緒に考えさせる
- (3年「重さのたんいとはかり方」)
- 081 クラスの学び方MAPをつくる
- (全単元)
- 11 評価方法
- 082 発言とセットで子どもの名前も板書する
- (6年「分数のわり算」)
- 083 自力解決の場面を授業の後半にもつくる
- (3年「三角形と角」)
- 084 すきま時間を使ってスプレッドシートに所見メモを書く
- (5年「図形の角」)
- 085 授業で記憶に残った子どもを名簿でチェックする
- (5年「小数のかけ算」)
- 086 評価基準を子どもに示す,子どもとつくる
- (5年「分数のたし算とひき算」)
- 087 主体的に学習に取り組む態度を授業後の対話を通して評価する
- (5年「帯グラフと円グラフ」)
- 12 授業準備
- 088 教師のNGワードを決める
- (4年「面積のはかり方と表し方」)
- 089 □の場所を決める
- (5年「分数のたし算とひき算」)
- 090 教科書を見比べる
- (5年「四角形と三角形の面積」)
- 091 最初に問題を解いてみる
- (1年「たしざん」)
- 092 既習の内容や方法を整理する
- (6年「分数のわり算」)
- 093 先行研究や授業記録をデジタルでストックする
- (3年「わり算」)
- 094 単元の関連図を自分でつくる
- (3年「かけ算の筆算(1)」)
- 13 習熟
- 095 子どもに習熟の目的を問う
- (3年「かけ算」)
- 096 虫食い算で,楽しく計算技能を高める
- (2年「たし算のひっ算」)
- 097 筆算リレーで,みんなで習熟を図る
- (4年「わり算の筆算(2)」)
- 098 コンパスアートづくりで,楽しく技能を高める
- (3年「円と球」)
- 099 どの問題と「同じ」なのか考える
- (6年「並べ方と組み合わせ方」)
- 100 活用可能な知識を補い,高める
- (6年「分数のかけ算」)
はじめに
今から17年前の春,私はある小学校の教室で,新学年への期待にあふれる子どもたちを前に立っていました。そして,とても緊張しながら授業を始めました。
生まれてはじめて担任したクラスで行った授業は国語でした。自分で授業をした経験は教育実習しかなく,前日は寝る間を惜しんで準備をしました。しかし,何を準備してよいかもわからず,とにかく授業を流すことばかりを考えていました。
実際に始まると,教科書を音読させ,私が話し,少しだけ子どもに意見を求めるという,超講義型の授業になりました。それしか授業の仕方が思い浮かばなかったのです。
その中で唯一の工夫は,グループで話し合う時間を取ったことです。しかし,子どもたちがまったく話し合わなかったことを記憶しています。そのときはどうしてよいかわからず,ただ自分が決めたグループ学習の時間が過ぎるのを静かに待っていました。
グループでの話し合いの後,「話し合ったことを発表してください」と指示しましたが,まったく発言が出ませんでした。今でもはっきりと覚えていますが,そんな私を見かねた子どもが,私が求めていそうな答えを発表してくれました。私は,その発言を黒板に書き,あとは一方的に話し続けました。
その日の放課後,「先生続けるのは無理そうだな」と思いながら,なんとか次の日の授業を準備しました。
みなさんも,少なからず私と似た経験をしたことがあるのではないでしょうか。現在進行形でこういう思いをされている方もいるかもしれません。
でも,みんなが通る道ですから安心してください。
大切なことは,そのまま放っておかないことです。授業がうまくなる特効薬はありません。何年やっても失敗の方が多いのが授業です。大事なことは,失敗したと思ったら,自分なりに考えて,次の授業に向けて改善する努力をすることです。その気持ちは,少しずつ,子どもや保護者,まわりの先生方にも伝わっていくはずです。
先ほど述べたように,授業がうまくなる特効薬はありません。日々の努力の積み重ねや,失敗から学び続ける根気や真摯さが必要です。でも,毎日失敗続きでは,こちらの気持ちがもちません。
そんなとき,この『算数授業 指導技術大全 すぐに使えるアイデア100』が少しでも気持ちを和らげる材料になってくれたらうれしいです。
本書は,算数の授業ですぐに使える指導技術をとにかくたくさん集めました。算数の授業に悩んでいる方には,きっと役立つのではないかと思います。もしかすると,算数以外の授業に活用できるものもあるかもしれません。経験豊富な方にも,「こんな方法があったのか!」と新しい気づきをしていただけるものもあるのではないかと自負しています。
ぜひ,この本の中から,目の前の子どもに応じた指導技術を選んで使ってみてください。きっと,不安だった気持ちが少し晴れるはずです!
中には,目の前の子どもにフィットしない指導技術もあると思います。でも,そこがスタートです。フィットしないところを自分なりにアレンジしてみてください。アレンジした方法が,あなた独自の指導技術となり,自信につながると思います。
本書に掲載されている指導技術が自分のものになったら,今度は「なぜ,この指導技術を使うと,授業がうまくいくのか?」と考えてみてください。そこには,算数の教材研究に裏づけられた根拠が見つかるはずです。
本書を,算数を楽しむきっかけにしていただけたら幸いです。ぜひ,掲載された指導技術をたくさん使って,算数を楽しんでください!
2024年1月 /加固 希支男
特に「発問」の章が、普段の授業にも使いやすく言語化されていて、勉強になりました!