- 序 知識・技能を活用した言語活動の展開
- 第1章 相手や目的及び意図に応じて知識・技能を活用する
- 授業実践
- 1.1 [中学年] 読み手に分かりやすく説明しよう
- 1.2 [高学年] 賛成意見や反対意見を入れて自分の意見を伝えよう
- 1.3 [低学年] まとまりを考えて紹介しよう
- 1.4 [中学年] 自己中心的な文章を見直そう
- 1.5 [高学年] 目的に応じて,意見を述べた文章を利用しよう
- 1.6 [高学年] カテゴリーを意識して読んでみよう
- 1.7 [高学年] 読み手に合った本を選んで推薦しよう
- 1.8 [高学年] 新聞のインタビュー記事を調査報告文に書き換えよう
- 授業アイデア
- 101 [低学年] 1年生に給食当番の仕方を教えよう
- 102 [低学年] 説明の順序を明確にして伝えよう
- 103 [高学年] 相手の興味・関心に応じたプレゼンテーションをしよう
- 104 [高学年] 聞き手に応じて資料を使い分け,修学旅行の報告をしよう
- 105 [高学年] 友だちを推薦しよう
- 106 [低学年] 学校に招待する手紙を書こう
- 107 [高学年] 調査目的に応じたアンケートをつくろう
- 108 [高学年] 自然教室の思い出を伝えよう
- 109 [低学年] 学校のみんなに,お知らせするものを見つけよう
- 110 [低学年] 順序を考えながら読もう
- 111 [高学年] キーワードを使って要旨をまとめ,自分の意見に生かそう
- 112 [高学年] 書き言葉を話し言葉にチェンジしよう
- 第2章 表現様式に応じて知識・技能を活用する
- 授業実践
- 2.1 [低学年] 友だちを紹介しよう
- 2.2 [高学年] メディアの特性に応じた説明をしよう
- 2.3 [低学年] 成長の記録を書こう
- 2.4 [中学年] 紹介の言葉を集めて,町のガイドブックをつくろう
- 2.5 [高学年] 文章の種類を意識して書こう
- 2.6 [低学年] 写真や映像を説明しよう
- 2.7 [中学年] 絵本を読んで感想文を書こう
- 2.8 [中学年] 情報の切り貼りを脱却し,筋が通った報告をしよう
- 授業アイデア
- 201 [低学年] 地域のイベントを紹介しよう
- 202 [低学年] 大好きなテレビ番組を紹介しよう
- 203 [中学年] パンフレットを読んで,施設見学の依頼をしよう
- 204 [高学年] スポーツの解説をしよう
- 205 [低学年] 目的に応じてメモを取ろう
- 206 [高学年] 思い出の写真から自己発見をしよう
- 207 [高学年] 新聞に自分の意見を投稿しよう
- 208 [低学年] 「○○めがね」をつくって読もう
- 209 [中学年] お店見学特集の広告を貼り出そう
- 210 [高学年] 解説を読んで,詩が生まれたときを紹介しよう
- 第3章 言語活動のプロセスに応じて知識・技能を活用する
- 授業実践
- 3.1 [高学年] 引用しながら報告しよう
- 3.2 [高学年] 相手や目的に対応しながらナビゲートしよう
- 3.3 [高学年] ナビゲーターになって遊園地を案内しよう
- 3.4 [高学年] 帰納的な説明と演繹的な説明を書き換えよう
- 3.5 [中学年] 箇条書きを使って分かりやすく説明しよう
- 3.6 [高学年] 伝記を読んで自分の考えをまとめよう
- 授業アイデア
- 301 [低学年] 図書館利用すごろくをしよう
- 302 [低学年] かいじゅうのひみつをたずねよう
- 303 [中学年] ニュース番組をじょうずに見よう
- 304 [中学年] グラフで説明しよう
- 305 [高学年] 特定の相手のためのパンフレットをつくろう
- 306 [高学年] 絵画の魅力を伝えよう
- 307 [中学年] 図鑑の仕組みを知ろう
- 308 [中学年] 事典を読もう
- 309 [高学年] 報告文のナビゲーションをしよう
- 310 [高学年] 新聞記事の分かりやすさを比べよう
序知識・技能を活用した言語活動の展開
1 基礎的・基本的な知識・技能の活用と言語活動の充実
2008年3月28日に告示された学習指導要領「第1章総則」においては,教育課程全体にわたる考え方として次のような内容が示されている。
第1 教育課程編成の一般方針
1 学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,児童に生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で,基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養い,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。その際,児童の発達の段階を考慮して,児童の言語活動を充実するとともに,家庭との連携を図りながら,児童の学習習慣が確立するよう配慮しなければならない。
すなわち,教育活動を展開する中で,次のような能力を育成することが求められたのである。
@ 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させること
A これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむこと
B 主体的に学習に取り組む態度を養うこと
実際の各教科等での指導では,次のように学習活動を充実する必要がある。
2 以上のほか,次の事項に配慮するものとする。
(1) 各教科等の指導に当たっては,児童の思考力,判断力,表現力等をはぐくむ観点から,基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重視するとともに,言語に対する関心や理解を深め,言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え,児童の言語活動を充実すること。
具体的には,次のことに配慮する必要がある。
◯体験的な学習や基礎的・基本的な知識及び技能を活用した問題解決的な学習を行う
◯自主的,自発的な学習を行う
◯学習課題や活動を選択し,学習の見通しを立てたり,振り返ったりする活動を行う
◯個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,学習内容の習熟の程度に応じた指導,児童の興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れた指導,教師間の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善する
◯個に応じた指導の充実を図る
◯学校図書館の活用を図り,児童の主体的,意欲的な学習活動や読書活動を充実する
2 活用すべき知識・技能と言語活動
各教科等において言語活動を行うとすれば,国語科では,どのような単元構想を行えばよいのだろうか。改訂された小学校国語科は,次のような3領域1事項で構成されている。
A 話すこと・聞くこと
(1) (指導事項) (2) (言語活動例)
B 書くこと
(1) (指導事項) (2) (言語活動例)
C 読むこと
(1) (指導事項) (2) (言語活動例)
〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕
(1) ア 伝統的な言語文化に関する事項
イ 言葉の特徴やきまりに関する事項
ウ 文字に関する事項
(2) 書写に関する事項
各領域は,内容において,(1)の指導事項と,(2)の言語活動例で構成している。これは,各学年の内容の指導に当たって,(1)に示す指導事項を(2)に示した言語活動例を通して指導することを一層重視したためである。改訂の要点は,各領域の学習過程を明確化し,記録,説明,報告,紹介,感想,討論などの表現様式を中核に言語活動を具体的に例示する,系統性を重視するなどであった。
このような方向を受けて考えると,以下のようなことが単元を展開するために必要となってくることが分かる。
(1) 指導内容として示された知識・技能の基礎・基本の内容は,いかに定めるか。
(2) 指導事項と言語活動は,どのように結合して単元構想するのか。
(3) 言語活動の全体と,3領域の内容及び学年の発達に応じた系統とは,どう統合するか。
(4) 多様な言語活動を具体化したアイデアの一覧表を基に,児童の実態に応じて適宜取り上げるようにするには,どうすればよいか。
(5) 総則で示されたような配慮に基づく指導法や指導体制の工夫は,どうすればよいか。
(6) 知識・技能を活用する教材及びワークシートの開発は,どうすればよいか。
3 実践単元と言語活動のアイデア
以上のような課題に応じるために,本書では,全体構成と実際の言語活動の展開例を次のように構想した。
第1章 相手や目的及び意図に応じて知識・技能を活用する
第2章 表現様式に応じて知識・技能を活用する
第3章 言語活動のプロセスに応じて知識・技能を活用する
このような構想で編集を行ったのは,学年目標などに集約的に示されているように,国語科の学習指導要領が,次のような言語能力観に基づいているからである。例えば,「話すこと・聞くこと」では,次のような学年目標で構成されている。
【第1学年及び第2学年】
(1) 相手に応じ,身近なことなどについて,事柄の順序を考えながら話す能力,大事なことを落さないように聞く能力,話題に沿って話し合う能力を身に付けさせるとともに,進んで話したり聞いたりしようとする態度を育てる。
これらは,次のような要素で構成されている。
(1) 相手や目的,意図などの「場」に応じる能力の育成
(2) 話題を設定したり取材をしたりする能力の育成
(3) 内容をまとめ,言葉遣いや音声,場や状況に応じて話す能力の育成
(4) 話の内容を相手の意図や自分の考えと結び付けて聞く能力の育成
(5) 相手や目的,意図などに応じて計画的に話し合う能力の育成
(6) 話したり,聞いたり,話し合ったりすることについての態度の育成
つまり,これらを見ると,次のような能力を基礎・基本の知識・技能として取り上げる必要があることが分かるのである。
◆ 相手や目的,意図などの表現場面の基本要素に配慮すること
◆ 実生活で必要な説明,報告,討論,質問,意見,助言,提案,説得,プレゼンテーション,あいさつ,連絡,紹介,推薦などの表現様式を重視していること
◆ 課題設定から学習計画,調べ学習や解決学習を通して作成した資料などに基づいて交流する言語活動のプロセスに応じて能力化されていること
本書は,このような考え方に立って3章構成とした。また,実際の知識・技能として何を参照すればよいのかという点から,既刊の『読む力の基礎・基本』(明治図書,2003年),『「読解力」を伸ばす読書活動』(明治図書,2005年),『誰もがつけたい説明力』(明治図書,2005年),『書く力の基本を定着させる授業』(明治図書,2007年),『話す力・聞く力の基礎・基本』(明治図書,2008年)等の知識・技能との関連を図り,どのようにそれぞれの基礎・基本を定めればよいのかという考え方を示した。ただ,授業の実際に即して知識・技能を詳細に知りたいときに,これらの著書をすべてを参照することは難しいことに配慮し,体系や系統を総合的にかつ簡潔に示している『誰もがつけたい説明力』の知識・技能との関連を記述した。『誰もがつけたい説明力』においては,今改訂の学習指導要領に関連する表現様式の体系や,実際に児童・生徒に与える具体的な知識・技能を解説しているからである。
各章においては,授業実践22例と,アイデア32例を領域及び学年に配慮して具体的に展開している。言語活動について,年間指導計画に入れるべき言語表現様式についても,次のようなものを取り上げている。
・分かりやすい説明 ・自分の意見を伝える
・まとまりを考えた紹介 ・本を選んでの推薦
・新聞記事の調査報告文への書き換え ・成長の記録
・ガイドブックをつくる ・写真や映像など非連続型テキストの説明
・絵本の感想文 ・筋が通った報告
・引用を生かした報告 ・相手や目的に応じたナビゲーション
・遊園地の案内 ・帰納的な説明と演繹的な説明
・箇条書きを使った説明 ・伝記を読んで自分の考えをまとめる
指導内容を確実に見定めたり,新学習指導要領の学習方法に配慮しての単元構想の具体的な展開を図っているのである。
文部科学省教科調査官として学習指導要領の作成に従事していたときから,告示後には,示した内容に適合した知識・技能を基礎・基本とする授業の展開の工夫について,また,学習指導要領は大綱であるので,実態に応じた言語活動の具体化の方法などについて,編集する必要を感じていた。本書は,このような思いから生まれた。
実践研究に当たっては,主宰する「国語教育カンファランス」の九州北部や鹿児島の会員が中心となって進めた。研究会員には,多忙な日々を克服しながらの取組であった。知識・技能を明確に位置づけ,児童の学習過程に応じた思考を促すワークシートの開発は,本書の趣旨に沿って徹底して工夫するようにした。開発の苦労は,研究会員の情熱なしには実現しなかったことである。また,本書刊行に当たっては,明治図書の石塚嘉典氏,大野彩氏にお世話になった。研究会員及び編集者の方に対して,ここに謝意を表したい。
2009年5月 京都女子大学教授 /井上 一郎
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- 明治図書